過去10回の試験に出題された教育原理の人物問題を分析します。

平成30年前期試験問題

平成30年前期試験は、人物問題が3問出題されました。
日本の人物1問、諸外国の人物2問という最も多い組み合わせです。

では、順番に見ていきます。




問3

問3は著書の一部から著者を選ぶ問題です。

A 人間は生後1歳になって、真の哺乳類が生まれた時に実現している発育状態に、やっとたどりつく。そうだとすると、この人間がほかのほんとうの哺乳類なみに発達するには、われわれ人間の妊娠期間が現在よりもおよそ1ヵ年のばされて、約 21ヵ月になる はずだろう。
 
B どの教科でも、知的性格をそのままにたもって、発達のどの段階のどの子どもにも効果的に教えることができるという仮説からはじめることにしよう。これは、教育課程というものを考えるうえで、大胆で、しかも本質的な仮説である。

ア ヘルバルト(Herbart, J.F.)
イ ブルーナー(Bruner, J.S.)
ウ ポルトマン(Portmann, A.)
 
(組み合わせ)
    A  B
1 ア イ
2 ア ウ
3 イ ウ
4 ウ ア
5 ウ イ
 


Aは、人間が生理的早産であることが読み取れるので、ポルトマンということが分かります。
ポルトマンは「保育の心理学」と「教育原理」の2科目に出題される人物です。
ポルトマンについては「生理的早産」「子宮外胎児」「二次的就巣性」というキーワードをおさえます。

この問題は、著書『人間はどこまで動物か』からの出題となりました。





Bは「発達のどの段階のどの子どもでも効果的に教えることができる」「教育課程」「仮説」という言葉から、ブルーナーの発見学習であることが分かります。
ブルーナーの理論を簡単に説明すると、一方的に知識を与える方法ではなく、子どもが自分で発見していくような指導をすると、幼児でも高校生で学ぶレベルの内容を習得することができる、ということです。

つまり、学問の構造(本質)を教育者が教え込むのではなく、子どもが自分で考えて発見するということを重視しているということです。

学問の構造を反映させた教育課程の編成が学問中心カリキュラムです。
昭和43年の学習指導要領はブルーナーの理論をもとにしており、学問中心の教育課程に編成されています。

問題文は、著書『教育の過程』の一部となります。
問題にある文章はとても有名なので、ブルーナーを学習する際はこの文章を覚えるのが良さそうです。
ブルーナーは選択肢によく並ぶ人物ですが、ブルーナーが答えとして出題される場合は、やはり『教育の過程』にあるこの文章から出やすいと思います。





問4

問4も問3と同様に、著書の一部から著者を選ぶ問題です。

旧教育は、これを要約すれば、重力の中心が子どもたち以外にあるという一言につきる。重力の中心が、教師・教科書、その他どこであろうとよいが、とにかく子ども自身の直接の本能と活動以外のところにある。(中略)いまやわれわれの教育に到来しつつある変革は、重力の中心の移動である。それはコペルニクスによって天体の中心が地球から太陽に移されたときと同様の変革であり革命である。このたびは子どもが太陽となり、その周囲を教育の諸々のいとなみが回転する。子どもが中心であり、この中心のまわりに諸々のいとなみが組織される。

 
1 コメニウス(Comenius, J.A.)
2 ルソー(Rousseau, J.-J.)
3 デューイ(Dewey, J.)
4 キルパトリック(Kilpatrick, W.H.)
5 フレーベル(Fröbel, F.W.)
 

「子どもが中心であり」という言葉から、学校が子どもを中心とした社会であるべきとしたデューイが答えとなります。
これはデューイの著書「学校と社会」の一部です。
学校と社会 (岩波文庫)
デューイ
岩波書店
1957-07


問題に出ている最初の一文「旧教育は、これを要約すれば、重力の中心が子どもたち以外にあるという一言につきる。が有名なので、是非ここをおさえておきたいところです。
それまでの学校教育は、教育の中心が子どもではなく教師や教科書であり、教え込むことが教育だったということです。

平成17年の「教育原理」 問3も『学校と社会』のほぼ同じ部分が出題されていますので、今後も繰り返し出題される可能性があります。


問5

問5はI群の記述とII群の人物を組み合わせる問題でした。
日本の人物問題で出題されやすい問題形式ですね。

【I群】
A 玉川学園の創始者。『全人教育論』を著し、労作教育をとり入れた。
B 石門心学の創始者。『都鄙問答』を著し、町人への実践哲学を説いた。
C 能役者、謡曲作家。『風姿花伝』において年齢段階の特質に応じた心や稽古のあり方を説いた。

【II群】
ア 小原國芳
イ 羽仁もと子
ウ 世阿弥
エ 石田梅岩

(組み合わせ)
   A   B  C
1 ア ウ エ
2 ア エ ウ
3 イ ア ウ
4 イ ウ ア
5 エ ア ウ
 

II群の4人はあまり出題されないことや教科書にも載っていないことがあるので、少し難しいですね。

分かりやすいのはCで、「能役者」「風姿花伝」という言葉から世阿弥が結びつきます。
他の著書としては「花鏡」「至花道」などがあります。

世阿弥は平成24年以来の出題です。
なぜ世阿弥が教育原理に出題されたのかを考えると、世阿弥がさまざまな教えや教訓を残しているからです。
「初心忘るべからず」も世阿弥の言葉となります。

そして、Aは小原國芳(おばらくによし)です。
キーワードは「玉川学園創設者」「全人教育」「澤柳政太郎とともに長年教育活動に携わる」
全人教育とは、知識や技術のみに偏らず、感性なども重視して全面的に発達させるという教育です。

Bは石田梅岩(いしだばいがん)です。
キーワードは「江戸時代の思想家」「石門心学」「倹約斉家論」
今後もあまり出題されないと思いますが、過去問に出題された人物は2、3つのキーワードだけでもおさえておきたいですね。

次回は平成29年後期試験の人物問題の分析です。