過去10回の試験に出題された教育原理の人物問題を分析します。

平成28年前期試験問題

平成28年前期試験は、人物問題が4問出題されました。
この試験では、法律4問・人物4問と、準備できる問題が8問も出題されていました。
こういう構成はラッキーです。
そしてこのうち人物4問はひねった問題がなく、教科書学習で解けるものばかりでした。
ただ、教育原理がとりやすい場合はペアになってる社会的養護が超難問だったりしますね

では、順番に見ていきます。




問4

問4は、著書の一部から著者を選ぶ問題です。

知的観点においては、基礎陶冶の理念は、その教育原則を「生活が陶冶する」という全く同じ言葉で言うことができる。道徳陶冶が本質的にわれわれ自身の内的直観から、すなわちわれわれの内的本性に生き生きと語りかける諸印象から出発するのと同様に、精神陶冶はわれわれの外的感覚に語りかけ、活気づける対象の直観から出発する。自然はわれわれの感覚の印象全般を、われわれの生活に結びつける。われわれの外的認識すべては、その生活の感覚の印象の結果である。

1 コメニウス(Comenius, J.A.)
2 ルソー(Rousseau, J.-J.) 
3 ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H.)
4 フレーベル(Fröbel, F.W.) 
5 デューイ(Dewey, J.)

「生活が陶冶する」といえば、迷うことなくペスタロッチですね。
これはどの教科書にも必ず出ている言葉なので、必ずとりたい問題です。

「生活が陶冶する」とは、生活(社会や人間関係)が人間を育てるという意味です。
分かりにくい言葉なので、私は「環境が人をつくる」「きちんとした環境がきちんとした人間をつくる」などと解釈しています。

この文章は、ペスタロッチの著書『白鳥の歌』の一部です。
ペスタロッチについては『隠者の夕暮れ』『リーンハルトとゲルトルート』『シュタンツ便り』『幼児教育書簡』などさまざまな著書があります。
その中でこの『白鳥の歌』は生涯最後に書かれた本で、有名な「生活が陶冶する」という言葉もここに書かれています。
「生活が陶冶する」という言葉を残した『白鳥の歌』は、ペスタロッチの最後の集大成という感じですね。

保育士試験とは全く関係ありませんが、『白鳥の歌』というタイトルは、白鳥が死ぬ前に歌うことから、芸術家にとって最後の作品を意味し、最後の作品名につけられることがあります。
例えばシューベルトの『白鳥の歌』は遺作の歌曲集で、こちらもシューベルトの集大成というイメージがあります。
ペスタロッチがこれで最後だ!という気持ちで書いたかと思うと、内容は難しそうですが読んでみたくなりますね。

また、『白鳥の歌』の中で、ペスタロッチは、頭(精神)、心(心情)、手(技術)の能力を調和して発展させることが教育の目的や課題としていることも書かれています。
Head、Heart、Handの頭文字をとって、3Hと覚えると覚えやすいですね。


問5

問5はI群の記述とII群の人物を組み合わせる問題でした。
このような出題形式は日本の人物で出題されることが多いですね。

【I群】
A 自分が無知であることを自覚する「無知の知」を思索の出発点とすることによって臆見を排し、知を愛し求めることを人間性の根本ととらえた。弟子たちに対話の中で問いかけ、学ぶ者が自ら答えを見出すよう促す「産婆術」という教育の方法を示した。

B 経験論の代表者。人間の精神は本来白紙(タブラ・ラサ tabula rasa)のようなものであり、経験が意識内容として観念を与えるとした。これは「白紙説」ともよばれ、知識を獲得させる教育は、白紙の子どもの精神に外からいろいろと刺激を与え、観念を構成していくことだとした。
 
【II群】
ア ソクラテス(Sōkratēs)
イ ロック(Locke, J.)
ウ アリストテレス(Aristotelēs)

(組み合わせ)
    A B
1 ア イ
2 ア ウ
3 イ ア
4 イ ウ
5 ウ ア


こちらもラッキー問題ですね。
無知の知」「産婆術」と言えばソクラテス、「白紙説」と言えばロックです。
人物をひと通り勉強された方は一瞬で分かるのではないでしょうか。

ソクラテスについては、プラトンやアリストテレスと同時に出題されやすいので混乱しないように注意します。

問6

問6は「障害児教育」を行うために考案した教具から人物を選びます。

着衣枠、重量板、触覚板、円柱さし、ピンクタワー、算数棒、音感ベル
 
1 フレーベル(Fröbel, F.W.)
2 エレン・ケイ(Key, E.)
3 イリイチ(Illich, I.)
4 モンテッソーリ(Montessori, M.)
5 ルソー(Rousseau, J.-J.) 

これは問題文に「障害児教育を行うための教具」とあるので、問題文の具体的な教具を見ずともモンテッソーリと分かりますね。
教具という言葉からフレーベルの恩物をイメージする可能性がありますが、「障害児教育」というところがポイントです。

モンテッソーリの教具は現在も家庭や幼稚園で使われています。
教具の特徴は指先を使うことです。
手先を使うことで感覚器官を刺激し、脳を刺激するとしています。
障害児にこのような感覚教育を施したところ、知的水準が上がったという効果があったようです。

うちにも何かモンテッソーリの教具がなかったかなと考えたところ、2歳になった頃に買った「ひも通し」がありました。
DSC06146

穴にひもを入れて反対側からひもを出す遊びです。
商品にはモンテッソーリ教具とは書いてありませんが、このひも通しも感覚教具の一つです。
手先を使ってひもを通すことで集中力も高めます。
ボビンに高さがあるためひもを入れて反対側から出すのが難しく、残念ながらうちの子どもはあまり遊びませんでした。
ボビンではなくボタンの方が良かったかな?


 

手作りできる教具もあり、問題文にある「着衣枠」は家にあるもので作れます。
着衣枠とは、自分で自分の服を脱いだり着たりすることを目的として、遊びながらその技術を身につける道具です。
ボタン留め、リボン結び、ファスナーの上げ下げなどを練習することができます。

何か枠になるものと着なくなった服で簡単に作ることができます。
DSC06148

これはフォトフレームの外枠に子どもの服を巻きつけただけですが、布を枠に固定して動かないようにすれば、ボタン留めを繰り返し練習することができます。

「モンテッソーリの障害児教育」というキーワードを覚えるだけでもよいのですが、手先を使う教具を用いたこと、その教具の具体的な名称や使い方なども知っておくと、勉強の際により記憶に残りやすいと思います。

問7

問7は学習方法の記述についての穴埋め問題です。
人物問題には珍しい出題形式ですが、単純に人物とその提唱した学習方法を選ぶものです。

(A )は、発見学習に対して、その効率の悪さに異を唱え、文化の継承として知識をそのまま受け容れて身につけることが大切であると主張した。そのためには機械的に知識を覚えさせるのではなく、新しい学習内容を学習者が既に所有している知識と関連づけて、その意味や重要性を理解できる形で提示すれば、新しい知識の定着がよくなるとして、( B )を提唱した。学習内容を理解しやすく方向づけるためにあらかじめ与える情報を、先行オーガナイザーという。

(組み合わせ)      
      A                                            B
1 スキナー(Skinner, B.F.)            プログラム学習
2 ヘルバルト(Herbart, J.F.)         四段階教授法
3 ブルーム(Bloom, B.S.)              完全習得学習
4 オーズベル(Ausubel, D.P.)        有意味受容学習
5 キルパトリック(Kilpatrick, W.H.)   プロジェクト・メソッド
 

発見学習と言えばブルーナーですが、「発見学習を否定」していることを読み取ります。
「新しい学習内容を学習者が既に所有している知識と関連づけて」「先行オーガナイザー」という言葉から、オーズベルの有意味受容学習となります。
 
発見学習と有意味受容学習の違いです。 
例えば理科の実験など、実際に自分で体験して変化などを生徒自身に発見させる方法が発見学習ですが、生徒があらかじめ持っている知識と関連させて結果を教える方法が有意味受容学習です。
この場合、ただ結論を教えるだけでなく、すでに持っている知識と関連させて教えるということがポイントです。

つまり、オーズベルは、調べて自力で発見させようとする発見学習は効率が悪いので、先に学んだ内容に関連させて新しい知識を取り入れやすいように工夫した有意味受容学習を提唱したということです。


最後に、オーズベルのキーワード「有意味受容学習」の暗記方法を紹介します。

教科書によってはオースベルと表記されていますが、もちろんオーズベルと同一人物です。
英語表記だとAusubelなので、「s」は濁っても濁らなくてもどちらでもよさそうですね。
きっと本人としては「こっちの発音で呼んでほしい」というのがあると思いますが、どちらの読み方も受容した(受け入れた)と考えます。
そこで「オーズベル(オースベル)は受容」と覚え、オーズベルの有意味受容学習という言葉に結びつくことができます。(ちょっと強引!?)

次回は平成27年地域限定試験の人物問題の分析です。