過去10回の試験に出題された教育原理の人物問題を分析します。

平成28年後期試験問題

平成28年後期試験は、人物に関連した問題が3問出題されました。
そのうち1問は日本の教育史を年代順に並び替える問題で、その中に人物名が含まれていました。
よって人物問題としては2問となります。

では、順番に見ていきます。




問4

問4は著書の一部から著者を選ぶ問題です。

そこで、活動的な仕事のさまざまな形態を学校に導入することに関して、留意すべき重大な事柄は、これらの形態を通して、学校の全精神が一新されるということである。学校は、将来営まれるべき、ある可能な生活と抽象的で、迂遠な関わりしかもたない学課を学ぶ場所ではなく、自らを生活と関連させ、子供が指導された生活を通じて学ぶ、子供の住みかになる機会をもつものとなる。学校は小型のコミュニティ、胚芽的社会になる機会をもつ。これが基本的事実であり、ここから継続的で、秩序ある教育の流れが生ずる。


1 ロック(Locke, J.)
2 オーエン(Owen, R.)
3 デューイ(Dewey, J.)
4 パーカースト(Parkhurst, H.)
5 キルパトリック(Kilpatrick, W.H.)


これは『学校と社会』の一部で、デューイの著書です。
デューイのキーワードとしては「シカゴ大学」「デューイスクール」「プログマティズム」「実験主義」「経験主義」などがありますが、この文章にはそれらのキーワードに結びつくものがありません。

ただ、「学校は小型のコミュニティ」「生活と関連させ」という言葉がありますので、ここから著書の『学校と社会』をイメージし、デューイに結びつけられると思います。

デューイの『学校と社会』は平成30年前期試験問4にも出題されており、今後も繰り返し出題される可能性があります。
そこで『学校と社会』にはどのようなことが書かれているか簡単にあげてみます。

・子どもが中心であること
・社会が変わったことで学校も変わらなければならないということ
・学校が小さな社会(コミュニティ)となること
・教師や教科書中心の教え込む学習ではなく、子どもの生活に役立つ学びが必要であること
・子どもが生活で得た経験を学校に持ち込み、学校は子どもの生活に沿ったものを教えること

このようなことが書かれていれば、デューイの『学校と社会』と判断できます。

問5

問5も問4と同様に、著書の一部から著者を選ぶ問題です。

子供が日々幼稚園へ来てその日何をするかはあらかじめきめられません。幼稚園として、 先ず用意して置けるものは誘導準備だけです。誘導以外のことは、子供が来てからのことであります。子供が来たらば、こういうふうに充実指導をしてやろうと考えて置きましても、幼児自らがどういう活動をするかを見なくてはどう充実してやるべきかわかりません。 ただしどういう活動にはどういうふうな誘導を与えてやるかということは、個々の場合を離れて広く研究しておかれることですから、機会に応じて誘導保育案を実行していくこと は、幼稚園の平生の心がけだと思うのであります。
 
1 松野クララ
2 森有礼
3 倉橋惣三
4 城戸幡太郎
5 澤柳政太郎


「誘導」という言葉が出てきたら、迷わず倉橋惣三です。
 平成29年後期試験問4と同様に、こちらも倉橋惣三の著書『幼稚園保育法真諦(幼稚園真諦)』からの出題でした。
この著書は、倉橋惣三の誘導保育の具体的な方法などが書かれています。
繰り返し出題されている著書なので、しっかりと対策しなければなりません。
「誘導」以外にも、「幼稚園」「幼稚園生活」「自由遊び」「幼児にとって遊びと仕事の区別はない」ななどがキーワードとなります。

選択肢の他の人物も教科書に載っていると思いますが、簡単に説明します。

松野クララ「東京女子師範学校付属幼稚園の主席保母」「フレーベルが設立した保母学校でフレーベルから直接学ぶ」

森有礼(もり ありのり)「初代文部大臣」「小学校令、 中学校令、師範学校令、帝国大学令の公布」

城戸幡太郎(きど まんたろう)「 保育問題研究会」「倉橋惣三の児童中心主義を批判」「社会中心主義」

澤柳政太郎(さわやなぎ まさたろう)「成城小学校創設」「ドルトンプラン導入」

問6

問6は日本の教育史を古い年代順に並べるという問題です。
人物として鈴木三重吉が含まれています。

A 鈴木三重吉が『赤い鳥』を創刊した。
B 東京女子師範学校附属幼稚園が創設された。
C 「教育ニ関スル勅語」(教育勅語)が発布された。
 
  (組み合わせ)
1 A→B→C
2 A→C→B
3 B→A→C
4 B→C→A
5 C→A→B
 

答えは4の、B→C→Aです。
1つずつ見ていきます。

A  『赤い鳥』とは、『赤い鳥』という話ではなく、さまざまな児童文学や童謡を載せた雑誌の名前です。
例えば、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』『杜子春』などが載っています。
これは1918(大正7)年に創刊されました。
細かい年号を覚えるのではなく、大正時代の児童雑誌と覚えると良いと思います。

なぜ保育士試験に、『赤い鳥』の創刊が出題されたのか考えてみました。
まず鈴木三重吉は自身の子どもが生まれたことをきっかけに、子どもに児童文学を読ませたいと考えて『赤い鳥』を創刊しています。
そして2018年に創刊100年を迎え、記念講演会やイベント等も実施されています。
平成28(2016)年の保育士試験は、この100年の節目を迎えようとする雑誌に敬意を払い、児童文学の理念などを考えさせるために出題したのかなと思います。


B  東京女子師範学校付属幼稚園とは、日本初の官立(=国立)幼稚園です。
それまでも幼稚園のようなものはありましたが、1876(明治9)年に国立幼稚園が初めて創設されたので、その年号は重要です。
さらに、倉橋惣三が1917(大正6)年に主事に就任したこともおさえておきます。


C  教育勅語が1890(明治23)年であることは必ず覚えておきたいところです。
学制→教育令→教育勅語→幼稚園保育及設備規程→幼稚園令→学校教育法・教育基本法
といった流れは、制定年とともにおさえておきます。


次回は平成28年前期試験の人物問題の分析です。