(2022.8.3 更新)
教育原理の人物問題を確認します。

平成26年試験問題

平成26年試験は人物問題が2問(問3、問4)出題されました。
順番に見ていきます。


問3

問3は、フレーベルの記述のうち、誤った内容を選ぶ問題です。
1 「あらゆる善の源泉は遊戯の中にあるし、また遊戯から生じてくる」として、遊戯(遊び)の重要性を述べた。
 
2 子どものすべての活動は神的なものの自己表現であり、創造的な活動であるとした。

3 「頭と心と手」に象徴される精神力、心情力、技術力という3種の根本的な能力を調和的に発達させることが教育の課題であるとした。

4 家庭教育を向上させるために母親のための教育書『母の歌と愛撫の歌』を著した。

5 幼児のための教育遊具を考案、製作し「恩物(Gabe)」と名付けた。 

3の「頭と心と手」と言えばペスタロッチですので、3が誤りです。
これは『白鳥の歌』で述べられているペスタロッチの考え方です。
頭文字をとって「3H」と出題されることもあり、ペスタロッチの「生活が陶冶する」は、この3Hの考え方が元になっています。

1、2、4、5は全てフレーベルの記述です。
1  幼児にとって最も大切なのは遊びということを述べた著書『人間の教育』の一部です。
「遊びの重要性」=フレーベルの思想ということをおさえます。

2 全ての人間に神性が宿るということを、同じく著書『人間の教育』で述べています。
子どもの中にある神性をどのようにして伸ばしていくかということをフレーベルは考えました。

4 フレーベルの著書『母の歌と愛撫の歌』は、父親母親のために書かれた育児書です。

5 フレーベルの教育遊具を恩物と言います。
ドイツ語ではGabe(ガーべ)といい、与えられたものという意味があります。
現在も使われている積み木はフレーベルが考えたもので、これも恩物の一つです。
遊び方の決まりはなく、自由に積み重ねたり、創造したりと、いろいろな遊び方をすることができます。
 

問4

問4はI群の記述(著書の一部)とII群の著者を組み合わせる問題でした。
【I群】
A 教育は、経験の意味を増加させ、引き続く経験の進路を方向づける能力を高めるような形での、経験の再構成または再組織化なのである。
 
B 私は彼らとともに泣き、彼らとともに笑いました。彼らは世界も忘れ、シュタンツも忘れて、私のもとにおり、私もまた彼らのもとにおりました。彼らのスープは私のスープであり、彼らの飲み物は私の飲み物でした。私には何もなく、所帯もなく友人も召使 も誰も私の身のまわりにはいませんでした。私にはただ、子供たちだけがおりました。 彼らが健康なときは、私は彼らの真ん中にいました。彼らが病気のときは、私は彼らのそばにいました。私は夜は一番最後にベットに就き、 朝は一番早く起きました。私はベットのなかでも彼らが寝つくまで彼らとともに祈り、そして教えました。彼らはそうすることを望んだのです。二重感染の危険にさらされながら、私は彼らの着物や身体のほとんどどうしようもない汚れの世話をしてやりました。
 
【II群】
ア カント(Kant, I.)
イ デューイ(Dewey, J.)
ウ ルソー(Rousseau, J.-J.)
エ ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H.)
オ オーエン(Owen, R.)
 
 (組み合わせ)
    A B
1 ア ウ
2 ア エ
3 イ エ
4 イ オ
5 ウ オ

A  デューイの著書『民主主義と教育』の一部です。
民主主義と教育〈上〉 (岩波文庫)
J. デューイ
岩波書店
1975-06-16


問題文の「経験」からデューイの「経験主義」に結び付けられるのではないでしょうか。
『民主主義と教育』では、経験したことを発展させることが教育の目的であると述べています。
知識の習得ではなく、知識を生かして経験を発展させる教育を重視する「経験主義」がデューイの考え方です。

B  ぺスタロッチの著書『シュタンツ便り』の一部です。


問題文に「シュタンツ」という言葉がありますので、ペスタロッチの『シュタンツ便り』に結び付けられますね。
これはペスタロッチ自身がシュタンツ(スイス)に孤児院を開き、そこで実践した教育(道徳教育)について述べられています。
実際にペスタロッチが友人に宛てた手紙がもとになっており、文章が手紙形式になっているので読みやすいようです。