神奈川県独自の地域限定保育士試験についても分析したいと思います。

平成30年神奈川県独自試験

平成30年神奈川県独自試験の「教育原理」は人物問題が3問出題されました。
他にも生涯学習の問題に人物名が出ているので、4問を分析したいと思います。

では、順番に見ていきます。




問3

問3は、著書の一部から著者を選ぶ問題です。

玉座の上にあっても木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間、その本質からみた人間、一体彼は何であるか。何故に賢者は人類の何ものであるかをわれらに語ってくれないのか。 何故に気高い人たちは人類の何ものであるかを認めないのか。農夫でさえ彼の牝牛を使役 するからにはそれを知っているではないか。牧者も彼の羊の性質を探究するではないか。
 
1 ルソー(Rousseau, J.-J.)
2 エレン・ケイ(Key, E.)
3 ヘルバルト(Herbart, J. F.)
4 ペスタロッチ(Pestalozzi, J. H.)
5 オーエン(Owen, R.)

これはペスタロッチ著書『隠者の夕暮』の一部です。




玉座(ぎょくざ)とは、王が座る席です。
つまり、王も住まいがない者も同じ人間であり、平等であるということを述べています。
この冒頭部分が有名ですので、試験に出題されやすい部分と言えます。
『隠者の夕暮』を覚える時は「玉座の上にあっても木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間」という部分も一緒に覚えます。
ペスタロッチについては、この『隠者の夕暮』の他、『白鳥の歌』『シュタンツ便り』の一部が出題されています。

問4

問4は記述にあてはまる人物を選ぶ問題でした。

長野県小県郡で自由画教育と農民美術の運動を行った。手本を模倣する従来の美術教育から脱し、子どもの、のびのびした明るい感性がそのまま表現される自由画を目指した。 主要な著書として『自由画教育』がある。
 
1 無着成恭
2 羽仁もと子
3 北原白秋
4 小川未明
5 山本鼎


問題文のキーワード「自由画教育」について説明します。
子どもが自由に表現した絵を自由画と呼び、絵を描くことが楽しい、面白いと感じさせることが目的で、子どもの個性を尊重することが自由画教育です。

自由画教育の運動を行ったのは山本鼎(やまもと かなえ)です。
1916年に留学先のフランスからクレヨンを持ち帰り、子どもが絵を描くための道具として広めました。
さらに、子どもがもっと描きやすくするためにクレパスを考案しています。

また、キーワードにある「農民美術」とは、木彫りなどの手工芸品です。
冬の間することがなかった農民の副業として広まりました。

選択肢の人物を簡単に説明します。

無着成恭(むちゃく せいきょう)『やまびこ学校』中学生の詩や作文を載せた文集
羽仁もと子(はに もとこ)『家庭之友』家庭生活雑誌の創刊
北原白秋(きたはら  はくしゅう)歌人、詩人。『ゆりかごのうた』『この道』などの作詞者
小川未明(おがわ  みめい) 小説家、童話作家。児童文学の父。『赤いろうそくと人魚』など


問6

問6は記述にあてはまる人物の◯×組み合わせ問題でした。

A 子どもの発見者と言われるルソー(Rousseau,J.-J.)は『エミール』において、男女は同一の教育を受けるべきであると述べた。
 
B アリエス(Ariès, P.)は『<子供>の誕生 -アンシァン・レジーム期の子供と家族生活-』において、子どもを題材とした芸術と図像記述の歴史に着目して、子供期が発見されたものであると主張した。
 
C コルチャック(Korczak, J.)は『児童の世紀』を著し、20世紀が児童の世紀になると主張した。
 
D イリイチ(Illich, I.)は『脱学校の社会』において、学習や健康といった価値の制度化を特徴とする学校化された社会を批判した。
 
(組み合わせ)

 ABCD
1○○○×
2○○×○
3○××○
4×○○×
5×○×○


通常の保育士試験の人物問題では、文章後半の「行ったこと」の内容に誤りはほぼありません。
単純に、人物と「行ったこと」を結べるかどうか判断します。
しかし、神奈川県独自試験は「行ったこと」の内容にも誤りがあるので大変難しくなっています。 

この問題の解答は5です。 

A  ルソーの著書は『エミール』ですので、ここまでは◯です。
『エミール』は平成27年試験 問5の解説にありますように、エミール少年が成長していく物語風の教育書です。
その中で、教育の男女平等ということは書かれておらず、女性は読み書きよりも実用的なことを重視することが書かれています。
つまり、ルソーは男女で異なる教育を行うことを述べています。
よって後半部分が誤りとなり、 Aは×となります。


B  アリエスの著書は『子供の誕生』で、後半の文章も正しいので◯です。
以前の社会は子どもを「小さな大人」として扱っていましたが、「子どもの発見」という考え方を述べ、子どもを特別なものとして配慮しようとする内容となっています。


C 『児童の世紀』の著書はエレン・ケイなので×です。
『児童の世紀』は平成29年前期 問3解説にもありますように、20世紀が子ども中心の社会になるように、子どもや女性の立場を考えていこうという内容です。
コルチャックは「子どもの権利」という概念を持った人物で、その思想が「児童の権利に関する条約」につながっています。

 
D 『脱学校の社会』の著書はイリイチで、後半の文章も正しいので◯です。
イリイチ(イリッチ)は、学校制度の撤廃を提唱し、学校がなくても教育が成り立つことを述べています。
現在のフリースクールはこの考え方によるものです。

 

問9

問9はラングランの生涯学習についての穴埋め問題でした。

ラングラン(Lengrand, P.)は、1965 年、( A )の成人教育推進国際委員会におい て、「生涯にわたって統合された教育」を提唱した。また、( B )は、1973年の報告書 において、「( C )教育」について論じている。

A「ユネスコ」 B「OECD」 C「リカレント」がそれぞれ入ります。
ラングランは著書『生涯教育の誕生』にて、教育は学校卒業で終わるものではなく、生涯続くものであることを述べています。
リカレントとは「再び」という意味があり、学校を卒業して社会人になってから、再び学校に入って学び直すことをリカレント教育といいます。


次回は、平成29年の神奈川県独自試験の人物問題を分析します。