(2022.9.19更新)
教育原理の人物問題を確認します。

平成24年試験

平成24年試験は人物問題が4問(問3、問4、問5、問6)出題されました。
順番に見ていきます。



問3

問3はロックに関する記述のうち、誤っているものを1つ選ぶ問題です。
1 彼は、『人間知性論』では生得観念を否定するいわゆる白紙説によって教育の可能性を大きく広げる働きをした。
 
2 彼は、『教育に関する考察』の序文に「健全な身体に宿る健全な精神」という言葉を書き、精神と身体の関係の重要性を明らかにしている。
 
3 彼は、教育目標となる人間像を支配階層である紳士(ジェントルマン)におき、紳士は「体・徳・知」兼備の人間でなければならないとした。
 
4 彼は、幼児期から正しい習慣形成をすることこそが教育の基本であるとして、鍛錬主義の教育を唱えた。
 
5彼は、道徳的品性の陶冶が教育の課題であるとし、その方法として多方面への興味を喚起することが必要だと考え、「教育的教授」という概念を提示した。

誤っているものを選ぶ問題ですので、ロック以外の人物説明が1つ混ざっていると考えます。
5の「道徳的品性の陶冶」「教育的教授」はヘルバルトですので、これが×です。
ヘルバルトについては、翌年に同じ問題形式で出題されています。
平成25年試験問3の解説もご覧ください。

1から4はロックの説明です。
知らない知識があればこの機会に吸収したいですね。

問4

問4は、デューイに関する記述のうち、誤っているものを1つ選ぶ問題です。
1 彼は、シカゴ大学に附属の実験学校を開設し、子どもの作業活動と社会的生活経験の広がりを中心とする教育実践を行った。
 
2 彼は、教育を経験の再構成であるととらえた。
 
3 彼は、知識を構造として学習させることによって、科学的概念を子ども自らが発見していく方法を提唱した。
 
4 彼が提唱した反省的思考に支えられた学習法は、今日の問題解決学習へとつながっている。
 
5 代表的な著作に『学校と社会』や『民主主義と教育』がある。

こちらも問3同様に、デューイ以外の人物説明が1つ混ざっていると考えます。
3の「構造」「発見」という言葉を見つけることができ、これがデューイのキーワードではないとわかります。
「発見」といえばブルーナーです。
ブルーナーは、学問の構造(本質)を教え込むのではなく、子どもが自分で考えて発見することを重視しています。

問5

問5は人物と教育思想を組み合わせる問題でした。
A 世阿弥は、『風姿花伝』において能の本質である「幽玄」を花にたとえ、年齢段階と心身の発達段階に応じた7段階の修業の在り方を説いている。
 
B 貝原益軒は、『和俗童子訓』において「年ニ随ッテ教ノ法」(随年教法)を説いたが、 これは子どもの年齢に応じた教授法と教材の配列を示した教育課程論である。
 
C 福沢諭吉は、『学問のすゝめ』において「必ず邑に不学の戸なく家に不学の人なからしめん事を期す」と述べ、義務教育の思想を展開した。
 
(組み合わせ)
  ABC
1○○○
2○○×
3○×○
4○××
5×○○

世阿弥の『風姿花伝』、貝原益軒の『和俗童子訓』、福沢諭吉の『学問のすゝめ』とあり、全て◯と判断してしまうような問題ですが、Cのみ×です。
文章後半には著書の説明がありますので、そちらも丁寧に確認します。

Cの「必ず邑に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん事を期す。」は、『学問のすゝめ』の一部ではなく、学制の一部です。
簡単に言うと、全ての人が学びましょうという意味であり、義務教育を推進しているものです。

一方、問題文にある福沢諭吉の『学問のすゝめ』とは1872年に刊行されたもので、義務教育の思想も述べられています。
そして福沢諭吉の思想は、同年に制定された『学制』に影響しました。
つまり、「必ず邑に~」は福沢諭吉の著書の言葉ではなく『学制』の一部となりますが、福沢諭吉の思想が影響しているということですね。

また、平成30年後期の教育原理の問5にもこの部分を含んだ以下の文章が出題されています。
必ず邑に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん事を期す。人の父兄たる者、宜しくこの意を体
 認し、その愛育の情を厚くし、その子弟をして必ず学に従事せしめざるべからざるものなり。
この文章から法令と制定年を選ぶ問題でした。
答えは1872年制定の学制ということになりますね。

問6

問6は、著書の一部からから著書名を選ぶ問題でした。
この問題は文章だけではなく、「陶工」と書かれたページに、陶芸家が作業をしている絵と作り方が説明されています。
1 『大教授学』
2 『ゲルトルートは如何にしてその子を教えたか』 
3『一般教育学』
4 『母の歌と愛撫の歌』
5 『世界図絵』
※絵は省略。

これは、コメニウスの『世界図絵(せかいずえ)』です。
『世界図絵』とは、世界最初の絵が入った言葉の教科書で、いわゆる図鑑のようなものですね。
「陶工」という言葉を理解するのに、文章だけではイメージがつきにくいですが、絵もあるとわかりやすいです。

他の選択肢の著者名もおさえておきたいですね。
『大教授』コメニウス                 
『ゲルトルートは如何にしてその子を教えたか』ペスタロッチ  
『一般教育学』ヘルバルト            
『母の歌と愛撫の歌』フレーベル