(2022.6.28 更新)
今回は平成30年後期、平成26年、平成30年神奈川県試験で出題された「被措置児童等虐待対応ガイドライン」についてみていきます。
「被措置児童等虐待対応ガイドライン」
この「被措置児童等虐待対応ガイドライン」は、厚生労働省のホームページで確認できます。どのような内容かというと、里親や施設職員による児童への虐待がないように、予防や指導など必要な対応をして、子どもの権利擁護を図るというものです。
つまり、家庭で起こる虐待ではなく、里親や施設職員による虐待や不適切な指導への対応ガイドラインです。
被措置児童(=なんらかの事情で家庭で養育できなくなった児童)が、施設などで安心して過ごすために作られたものです。
家庭で虐待を受けて保護され、そのあと入所した児童福祉施設内で職員に虐待を受けている子どもが実際にいると考えると胸が苦しくなります。
このようなガイドラインがあること自体が悲しいです。
なぜ、施設内で虐待が起こってしまうのか?
このようなガイドラインがあることで、虐待や虐待とまではいかないような不適切な指導を減らすことができるのか?
考えると悲しくなってしまいます。
ではまず、過去問を確認します。
過去問分析
出題された3つの問題を見ていきます。
まず、平成30年後期では、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」の一部の穴埋め問題が出題されました。
被措置児童等虐待対応ガイドラインの5ページに書かれてある内容です。
これは、このガイドラインに関わらず、施設が運営するにあたって大切なことをイメージすれば解くことができます。
まず、平成30年後期では、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」の一部の穴埋め問題が出題されました。
施設運営そのものについては、施設職員と施設長が意思疎通・意見交換を図りながら方針を定めること、相互理解や信頼関係を築き、チームワークのとれた( A )組織作りを進めること、( B ) の活用や、( C )の積極的な受審・活用など、外部の目を取り入れ、開かれた組織運営としていくことが重要です。
【語群】
ア 風通しのよい イ 合理的な ウ 第三者委員 エ 要保護児童対策地域協議会
オ 行政による監査 カ 第三者評価
(組み合わせ)
A B C
1 ア ウ オ
2 ア ウ カ
3 ア エ オ
4 イ ウ カ
5 イ エ カ
【語群】
ア 風通しのよい イ 合理的な ウ 第三者委員 エ 要保護児童対策地域協議会
オ 行政による監査 カ 第三者評価
(組み合わせ)
A B C
1 ア ウ オ
2 ア ウ カ
3 ア エ オ
4 イ ウ カ
5 イ エ カ
被措置児童等虐待対応ガイドラインの5ページに書かれてある内容です。
これは、このガイドラインに関わらず、施設が運営するにあたって大切なことをイメージすれば解くことができます。
A チームワークがとれた組織ですから、無駄がないという意味の「合理的な」ではなく、「風通しのよい」が入ることがわかります。
C「受審」「外部の目を取り入れ」とありますので、Cには第三者評価が入ることがわかります。
そしてBはCと関連した「第三者委員」が入ります。
よって答えは2です。
第三者評価とは、調査員の調査を受け、自分たちの施設の取り組みを伝えるものです。
施設に何が足りていないかという見直しをしたり、改善したりすることにつながります。
第三者評価の受審そのものが子どもの権利擁護につながっていくとも考えられます。
また、この問題は解答テクニックを使って、選択肢に多く出てくる言葉を見つけることができます。
そうすると、ア、ウ、カが3つずつ出ており、これら全てが含まれた2を選ぶことができます。
多くの過去問を解いてみたところ、全国で行われる保育士試験はこの解答テクニックがかなり有効でした。(神奈川県独自試験ではほとんど使えませんでした)
どうしても答えが浮かばないというときは、是非活用してみてください。
次に、平成26年は「権利擁護」についての◯×組み合わせ問題でした。
A 社会的養護の施設等では、子どもの気持ちを受け入れつつ、子どもの置かれた状況や今後の支援について説明する。
B 子どもの意見をくみ上げる仕組みとして、施設に設置された意見箱や、苦情解決責任者、苦情受付担当者、第三者委員等を活用する。
C 現在入所している子どもや退所した子どもの声を聞き、施設等の運営の改善や施策の推進に反映させていく取り組みが重要である。
D 被措置児童等虐待の通報制度や、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」に基づき、児童養護施設等の職員や里親による虐待の防止を徹底する。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 ○ × × ○
3 ○ × × ×
4 × ○ ○ ×
5 × ○ × ×
B 子どもの意見をくみ上げる仕組みとして、施設に設置された意見箱や、苦情解決責任者、苦情受付担当者、第三者委員等を活用する。
C 現在入所している子どもや退所した子どもの声を聞き、施設等の運営の改善や施策の推進に反映させていく取り組みが重要である。
D 被措置児童等虐待の通報制度や、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」に基づき、児童養護施設等の職員や里親による虐待の防止を徹底する。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 ○ × × ○
3 ○ × × ×
4 × ○ ○ ×
5 × ○ × ×
AからCを読むと、全て常識的なことが書かれているので◯と分かります。
Dは「被措置児童等虐待対応ガイドライン」とは何かということを知っていれば◯とわかりますが、すでにAからCが◯なので、1の答えを選ぶことができますね。
そして、平成30年の神奈川県独自試験も「権利擁護」についての◯×組み合わせ問題でした。
A 社会的養護の施設等では、子どもの気持ちを受け入れるとともに、その子どもの置かれている状況や今後の支援について説明する。
B 子どもの意見をくみ上げる仕組みとして、施設に設置された意見箱や、苦情解決責任者、苦情受付担当者、第三者委員等を活用する。
C 現在入所している子どもや退所した子どもの声を聞き、施設などの運営改善や施策の推進に反映させていく取組が重要である。
D 被措置児童等虐待の通報制度や、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」に基づき、 児童養護施設等の職員や里親による虐待の防止を徹底する。
(組み合わせ)
ABCD
1〇〇〇〇
2〇××〇
3〇×××
4×〇〇×
5×〇××
B 子どもの意見をくみ上げる仕組みとして、施設に設置された意見箱や、苦情解決責任者、苦情受付担当者、第三者委員等を活用する。
C 現在入所している子どもや退所した子どもの声を聞き、施設などの運営改善や施策の推進に反映させていく取組が重要である。
D 被措置児童等虐待の通報制度や、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」に基づき、 児童養護施設等の職員や里親による虐待の防止を徹底する。
(組み合わせ)
ABCD
1〇〇〇〇
2〇××〇
3〇×××
4×〇〇×
5×〇××
なんと、平成30年神奈川県独自試験の問題は、平成26年の試験問題とほとんど同じです!!(答えも同じ)
言い回しが少し違う部分があるだけで、同じ内容が出題されています。
こんなこともあるのですね。(これってどうなんでしょう!?)
言い回しが少し違う部分があるだけで、同じ内容が出題されています。
こんなこともあるのですね。(これってどうなんでしょう!?)
学習ポイント
出題されたこの3問は、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」の具体的な部分までは出題されておらず、常識の範囲内で答えられるような問題でした。
今後も「被措置児童等虐待対応ガイドライン」は出題される可能性が高いですが、あまり細かいことは聞かれずに、このガイドラインは何かということを理解できていれば解くことができそうです。
被措置児童等虐待対応ガイドラインの、1 制度化の趣旨、2 基本的な視点 を読めば十分だと感じます。
そして関連した資料として、「被措置児童等虐待届出制度の実施状況」があります。
次回は、この「被措置児童等虐待届出制度の実施状況」について見ていきます。
コメント
コメント一覧
諸事情で3週間試験勉強手つかずでした。。。
また今日からぼちぼち頑張ります。
社会的養護の勉強に入りました! この記事、前の記事「社会的養護の推進に向けて」もわかりやすくて助かります。
本当にこの虐待のコンテンツの勉強、私も気分が滅入ります。
「被措置児童等虐待対応ガイドライン」に限らず、社会的養護の多くの内容が虐待を受けた児童の養護ですよね。みんなに幸せになって欲しいなぁ、私にできることはないかなぁ、と思いながら勉強しています。
では、また、よろしくお願いします。
こんばんは!
そうだったのですね。
事情もありますから、勉強時間を確保したり、モチベーションやテンションを保ったりすることが難しい時もありますよね。
前向きなお気持ちで進められますように。
保育士試験を通じて勉強したことによって虐待も身近な問題としてとらえ、 自分にできることはないかと私も考えるようになりました。
例えば虐待事件があった時に、虐待への責任を追及するのではなく、第一に子どもが幸せになる仕組みをみんなが考えていくような社会になるといいですよね。
では、お体を大切にして無理せずお過ごしくださいね。
また頑張ってください^_^
返信いつもありがとうございます
トウコさんがどこかの記事でいつかファミサポのサポートする側として登録したいとおっしゃっていて、私も同じく、いつか時間&経済の余裕ができた時には、登録して「働くママ」さんを援助したいなぁと思っています。
余談ですけど、昔の記事にコメントを残すと、後からどの記事に自分がコメントしたかわからなくなってしまい、、、ちょっと大変です。
こんにちは!
フラダンスさんもファミサポの援助会員にご興味があるのですね。
サポート側として登録して、子育てを応援することができたらいいですよね^_^
今のところ自分は依頼会員側として利用する機会がありませんでしたが、素晴らしい仕組みだと思います。
確かに!コメントをどこに書いたかはわからなくなりますよね(T_T)
私の画面では「コメント一覧」があるのですが、書いてくださった方は迷子になってしまいますね。
設定に最新コメントを載せる機能がありますので、試しにPC版とスマホ版でそれぞれ設定してみましょうか。
あとでやってみますね!
被措置児童等の虐待に関することなのですが、根拠法というか、何に規定されているか(児童福祉法、児童虐待の防止等に関する法律など)が微妙に違っていたりしますが、覚え方などございますでしょうか?
忙しい中、すいません...
他にも「被措置児童等虐待の通報制度や、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」に基づき、児童養護施設等の職員や里親による虐待の防止を徹底する。」というのもあり、全てが似ていて、混乱です。
まず、被措置児童等虐待について定めているのは「児童福祉法」です。
第33条の10から第33条の17に規定されています。
「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」には被措置児童等虐待についての規定はありません。
ただし、「児童虐待防止法」も関連がありますので、ガイドラインの10ページを以下に引用しますね。
「児童虐待防止法においては、保護者がその監護する児童に対し、その身体に外傷を生じるおそれのある暴行やわいせつな行為、ネグレクト、著しい心理的外傷を与える行為等を行うことを「児童虐待」として定義しています。
ここで言う「保護者」とは、親権を行う者のほか、児童を現に監護する者とされており、児童が施設に入所している場合又は里親に委託された場合には、当該施設の長又は里親は一定の監護権を有し、かつ、現に監護していることから、保護者に該当するものです。
一方、施設職員として養護に従事する者については、施設長の指揮命令に従い、一定の業務に従事していることから、保護者には該当するものではありません。
したがって、
① 施設職員が行う虐待については、児童虐待防止法に規定する児童虐待の対象ではありませんが、今回新たに被措置児童等虐待の対象に該当することになります。
② 里親や施設長については、児童を現に監護する者として、児童虐待防止法に規定する「保護者」となることから、これらの者が行う虐待については、児童虐待防止法に規定する児童虐待であるとともに、今回、さらに被措置児童等虐待に該当することになります。」
この部分の説明でいかがでしょうか。
「児童虐待防止法」と「児童福祉法」の双方が適用されるということです。
はい!沢山教えていただき、助かりました。
本当に勉強になります!
ありがとうございました!!