(2022.6.28更新)

今回は平成26年に出題された「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」についてみていきます。



「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」
「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」は、厚生労働省のホームページで確認できます。
この被措置児童等虐待届出等制度は、前回記事 資料「被措置児童等虐待対応ガイドライン」と関連しています。
児童が施設等で職員に虐待を受けた場合、児童本人の届出や通告により、都道府県市が調査や対応をするという制度です。

そして、実際の届出等の状況やその対応については毎年とりまとめられており、最新版が令和元年度です。
令和4年神奈川・後期試験で出題があるとすれば、この令和元年度における被措置児童等虐待届出等制度の実施状況からということが考えられます。

では、過去問を確認します。




過去問分析
「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」からの出題は平成26年試験です。
平成24年度の実施状況から、都道府県市が虐待の事実を認めた事例の◯×問題でした。
A 虐待の事実が確認された施設等種別で最も件数が多いのは乳児院である。
B 里親・ファミリーホームにおける被措置児童等に対する虐待は0件である。
C 被措置児童等虐待の種別では、心理的虐待の割合が最も高い。
D 虐待を行った職員等の実務経験年数の構成割合は、20 年以上よりも5年未満の方が高い。
 
(組み合わせ)  

   A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × × ×
3 × ○ × ×
4 × × ○ ○
5 × × × ○

A × 虐待の事実が確認された施設内での虐待数71件のうち、最も多かったのは児童養護施設で51件です。
B × 里親・ファミリーホームでの虐待は7件ありました。
C × 最も多いのは身体的虐待で、71件のうち45件です。
D ◯虐待を行った職員の実務経験年数は5年未満が最も多くなっています。

この資料を見ていなければ、施設内虐待をイメージして(したくはありませんが)考えることになるため難しいですね。

平成24年度の結果は古いので、この問題を令和元年度の結果でも見ていきます。
A 虐待の事実が確認された施設内での虐待数94件のうち、最も多かったのは児童養護施設で50件です。乳児院では2件でした。(3ページ)
B 里親・ファミリーホームでの虐待は11件です。(3ページ)
C 最も多かったのは身体的虐待で、94件のうち59件です。(5ページ)
D 虐待を行った職員の実務経験年数は5年未満が最も多く、50.5%です。(6ページ)

また、資料からの具体的な出題はこの1回のみですが、これ以外にも施設内虐待(子どもの権利擁護)に関する問題が多く出題されています。
3つの問題をピックアップします。

平成28年前期は「 社会的養護と子どもの権利 」についての◯×問題でした。
A 社会的養護の下にある子どもの権利は、与えられる権利、保護される権利といった受動的権利の擁護という側面と、子どもが主体的に参画するという権利行使の主体としての能動的権利の保障の双方から捉える必要がある。

B 子どもの権利を保障する取り組みとして、子どもの人権救済申し立て、代弁、権利が正しく行使されているかを監視する等のアドボカシー機能を果たす具体的で実効性の高い仕組みづくりが大切である。

C 虐待等により権利侵害を受けてきた子どもたちが権利意識を持てるようになるためには、愛着関係を基盤として「自分を大切にしたい」という自尊感情を抱き、自己及び他者を大切にする意識を育むことが重要である。

D 子どもの権利を侵害する施設内虐待は、施設の構造的要因は考えられず、個人の資質的要因によるため、施設管理者の権威的運営による日常的な職員個人への監視機能が求められる。

(組み合わせ)

   A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ ○ × ×
4 ○ × ○ ○
5 × ○ ○ ○

AからCは◯、Dは×で、答えは1です。
Dは施設内虐待の記述ですね。
施設内虐待を防ぐためには、職員個人ではなく、施設全体で取り組んでいく必要があります。

昨日分析した「被措置児童等虐待対応ガイドライン」では、
組織全体として、活性化され風通しがよく、また地域や外部に開かれた組織とすることによって、より質の高い子どもへの支援を行うことが可能となり、被措置児童等虐待も予防されるものと考えられます。
逆に言えば、組織全体としてこのような体制ができていない施設で被措置児童等虐待が起こった場合には、個々の職員の援助技術や資質の不足等の問題にとどまらないことが想定されます。
このように、組織の運営体制が重要であることが述べられています。



平成29年後期は「子どもの権利擁護の取り組み 」についての◯×問題でした。
A 児童養護施設等の入所児童に対し、権利について正しく理解できるよう、「子どもの権利ノート」等を用い、わかりやすく説明することが求められている。 
 
B 利用者からの苦情を適切に解決するため、社会福祉事業経営者は施設内に苦情の相談窓口を設け、第三者の協力を得るなどして解決に努めることとされている。
 
C 施設職員による被措置児童等虐待については、市町村において、子ども本人からの届出や周囲の者からの通告を受け付け、調査等の対応をすることが「児童虐待の防止等に関する法律」で法定化されている。
 
 (組み合わせ)  

   A B C  
1 ○ ○ ○  
2 ○ ○ ×  
3 ○ × ○
4 × ○ ×  
5 × × ○

AとBは◯、Cは×で、答えは2です。
まず、被措置児童等虐待に関しては、「児童虐待の防止等に関する法律」ではなく「児童福祉法」で定められています。
「児童虐待の防止等に関する法律」とは、児童虐待の定義などを定めた法律です。

また、施設職員による虐待通告後の対応については都道府県が行うこととなっています。
「被措置児童等虐待対応ガイドライン」でも、「都道府県」が通告や通知、児童本人からの届出を受けて、調査等の対応や必要な指導を行うことが述べられています。


 
平成30年前期は「被措置児童等虐待の防止 」についての◯×問題でした。
A 「児童福祉法」において、被措置児童等への虐待行為には経済的虐待が含まれる。

B 「児童福祉法」において、被措置児童等自身による虐待の被害の届出は規定されていない。

 C 児童養護施設の長は、児童を現に監護する者として保護者となることから、被措置児童への虐待行為を行った場合、それは「児童虐待の防止等に関する法律」に規定する児童虐待であるとともに、被措置児童等虐待に該当する。

(組み合わせ)  

    A B C
 1 ○ ○ ○
 2 ○ ○ ×
 3 ○ × ○
 4 × ○ ×
 5 × × ○ 

A ×施設内虐待の種類に、経済的虐待は含まれていません。
施設内虐待の定義は「児童福祉法」第33の10に定められています。

B ×本人が届け出ることができます。

C ◯文章の通りです。
被措置児童虐待(=施設内虐待)は、「児童虐待の防止等に関する法律」に規定する児童虐待と、「児童福祉法」に規定された被措置児童等虐待の両方に該当するということです。


学習ポイント
「被措置児童等虐待届出制度の実施状況」の具体的な内容が再び出題される可能性があります。

令和元年度の数値

・虐待の事実が認められた施設等ではどこが一番多かったか→児童養護施設
・里親やファミリーホームで虐待があったか→11件確認された
・虐待の種別で最も多かったのは何か→身体的虐待 
・虐待された児童の年齢で最も多かったのは何歳頃か→10から14歳
・虐待を行った職員の実務経験年数で最も多かったのは→5年未満(50.5%)

このような内容を理解しておく必要があります。

また、施設内虐待は児童の権利擁護に絡んだ問題が多く出題されています。
・ 施設内虐待防止のためには、施設全体で取り組む必要があるということ
・ 被措置児童等虐待の定義や、通告後の対応については「児童福祉法」で定められていること
・ 児童本人からも届け出ることができること

このような具体的な内容をおさえておく必要があります。