今回も、先日の神奈川県独自試験の教育原理を見ていきたいと思います。

問題構成はこのようになっています。

1

資料

特別支援教育の推進

2

人物

プラトン

3

人物

ペスタロッチ

4

人物

カイヨワ

5

人物

松野クララ

6

人物

城戸幡太郎

7

諸外国の教育制度

イギリスの教育制度

8

用語

エンゼルプラン

9

用語

PISA

10

中央教育審議会答申

アクティブ・ラーニングなど


問5、問6と、日本の人物が2問も出題されていることは珍しいです。
今回は、保育原理に出題される人物も含まれていた問6を見てみます。


問6

次の文は、城戸幡太郎に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 保育問題研究会を結成し、会長として研究者と保育者の共同の実証的研究を推進した。

2 日本で最初にリトミックを幼児教育に導入し、日本のリトミック教育の基礎を築いた。

3 従来の画一主義的な教育を批判する大正新教育運動のなか「全人教育論」を主張した。

4 大正、昭和期の幼稚園遊戯の中心である「律動遊戯」、「律動的表情遊戯」を考案した。

5 自然の中で子どもたちを遊ばせる露天保育を提唱し「家なき幼稚園」を設立した。

答えから言うと、

1 城戸幡太郎
2 小林宗作
3 小原国芳
4 土川五郎
5 橋詰良一


となっています。
小林宗作、土川五郎、橋詰良一の3人は保育原理の範囲の人物ですね。

この問題は、平成29年後期試験「保育原理」問14と問16などを参考にして作られていると考えられます。

問題を作る側のことを考えると、問題作成にあたって過去問を参考にするのが基本ではないかと想像します。
それは、考える手間が省ける、不適切な問題とならない、過去問と同レベルの問題を出題することができるなど、さまざまなメリットがあるからです。
特に保育士試験は例年と同じような難易度の問題を求められるでしょうから、必然的に過去問を参考にすると考えられます。
よって、過去問の一部を使ったり、過去問と全く同じ問題を出題することは、問題作成者にとって都合がいいということですね。

このように、問題作成者が過去問を参考にしていると考えると、過去問を解くという勉強がとても重要となります。
私も「この問題はどの過去問を参考にしているのか?」というところまで分析して、皆さまの勉強に役立つ内容を書いていきたいと思っています。

では、参考にしていると思われる平成29年後期「保育原理」問14、問16を紹介します。

平成29年後期「保育原理」問14
わが国の保育の歴史において、大正時代は海外の思想も含めて様々な保育が紹介され、 実践された時代であった。たとえば、河野清丸らによって( A モンテッソーリ  )の教育法や教具が紹介された。大阪では、( B 橋詰良一 )が「家なき幼稚園」と称する園舎を持たない形態で野外保育を始めたり、( C 小林宗作 )がリトミック運動を始めたりしたのもこの頃である。このような新しい時代の自由主義的な機運の中で、大正 15 年には( D 幼稚園令 )が公布された。

(組み合わせ)
         A                                                 B            C                 D  
1  シュタイナー(Steiner, R.)            東基吉      土川五郎      保育要領 
2 モンテッソーリ(Montessori, M.)  橋詰良一  小林宗作       幼稚園令 
3  シュタイナー(Steiner, R.)             橋詰良一  西條八十     幼稚園設置基準 
4 モンテッソーリ(Montessori, M.)   東基吉      土川五郎     幼稚園設置基準 
5  フレーベル(Fröbel, F.W.)               赤沢鍾美  小林宗作    幼稚園令

橋詰良一の「家なき幼稚園」、小林宗作の「リトミック」、その他選択肢に土川五郎が出ています。
今回の問題には、この3人が出題されています。



平成29年後期「保育原理」問16
1936(昭和 11)年に「保育問題研究会」を設立し、著書『幼児教育論』において、幼稚園や託児所は「何よりも先ず子供の自然である利己的生活を共同的生活へ指導して行く任務を負わねばならぬ」と述べて、保育案は「社会協力」を指導原理として作成されるべきものであると主張した。

城戸幡太郎のたくさんのキーワードが含まれていますね。

城戸幡太郎は過去16回まで調べた教育原理においては、選択肢に登場することはあっても問題としては出題されていなかった人物です。(もっと前には出ているかもしれませんが)
ただ、最近ではこのように保育原理に出題されています。



では、今回の問題を一つ一つ見ていきます。

1 保育問題研究会を結成し、会長として研究者と保育者の共同の実証的研究を推進した。 

城戸幡太郎の記述です。
過去問にありますように、保育問題研究会を設立した人物です。

また、以前書いた人物別出題ポイント⑧にある通り、

・倉橋惣三の児童中心主義を批判
・社会中心主義
・子どもが大人を導く
・社会協力

このようなキーワードがあります。

「保育問題研究会」は現在も引き続き取り組まれているもので、ホームページもあります。
セミナーや集会などが行われ、さまざまなテーマで保育を考える取り組みがなされています。

1936(昭和11)年に東京で発足したこと(会長は城戸幡太郎)、保育実践を重視し、保育者と専門研究者が共同で研究することなどをおさえます。


2 日本で最初にリトミックを幼児教育に導入し、日本のリトミック教育の基礎を築いた。

小林宗作の記述です。
教育原理の範囲内には「リトミック教育」の人物はいませんので、これが誰か分からなくても城戸幡太郎ではないことが分かりますね。
小林宗作は、先にあげたように平成29年後期試験の保育原理で出題されました。


3 従来の画一主義的な教育を批判する大正新教育運動のなか「全人教育論」を主張した。

小原国芳の記述です。

小原国芳は平成30年前期の教育原理に出題されていますので、過去問対策をしていればすぐに分かりますね。

人物別出題ポイント⑨に書いていますように、
・玉川学園の創始者
・著書『全人教育論』
・労作教育

というキーワードがすでに出題されています。
全人教育とは、知識や技術のみに偏らず、感性なども重視して全面的に発達させるという教育です。


4 大正、昭和期の幼稚園遊戯の中心である「律動遊戯」、「律動的表情遊戯」を考案した。

土川五郎の記述です。

先にあげた、平成29年後期試験の保育原理の選択肢に登場していますね。
また、平成28年後期試験の保育原理でも以下のように出題されています。
ほとんどの教科書に載っていない人物ですので、この平成28年後期試験で、土川五郎を知った方も多いと思います。

平成28年後期試験「保育原理」問4
C 大正期に、リズミカルな歌曲に動作を振り付けた「律動遊戯」を創作し、発表した。

歌に合わせた振り付けを創作した人物ということですね。
「律動遊戯」と漢字にすると堅苦しいですが、「音楽に合わせたリズム遊び」 「音楽に合わせたダンス風の遊び」というようなことです。

 
5 自然の中で子どもたちを遊ばせる露天保育を提唱し「家なき幼稚園」を設立した。

橋詰良一の記述です。
人物別出題ポイント⑨に書いていますように、橋詰良一は主に保育原理に出題される人物です。




以上、問6についての解説でした。
今回の問題は、科目の枠を超えて広く浅く出題されています。
ただ、城戸幡太郎自体は教育原理の人物ですので、それほど難しい問題ではありません。
城戸幡太郎の内容のみ分かればいいので、城戸幡太郎が保育問題研究会の会長であったことを知っていれば、他の人物を知らなくても答えられます。

ただ、もしこの問題が、◯×形式や誤った記述を選ぶ形式で出題されると、少し難しいですね。
人物問題に確実に対応できるようにするために、教育原理の過去問だけでなく、他の科目の過去問もチェックしておくことが必要となります。
改めて、過去問は大事!と考えさせられた問題でした。

 
次回は、教育原理の問5を解説する予定です。