平成31年前期から平成26年までの「社会的養護」のうち、「児童福祉法」が根拠となった問題です。
法改正により出題傾向も変わってきていると考え、平成26年以降としました。

平成31年前期

1

児童福祉法改正

26条第1項第三号
25条の2
33条第8


3

親権

33条の2第1項
33条の23項
33条の7
47条第2

平成30年後期

5

児童自立生活援助事業

6条の31


9

児童養護施設の入所手続き

第27条第1項

平成30年前期

3

児童福祉法改正

3条の2
11条第1項第ニ号
6条の4第ニ号
6条の31項第ニ号


5

被措置児童等虐待の防止

33条の10
33条の123

平成29年後期

2

社会的養護に関する条文

3条の2


10

福祉サービス

6条の314項
44
6条の31

平成29年前期

出題なし



平成28年後期

出題なし



平成28年前期

5

児童自立生活援助事業

6条の31
34条の7


9

放課後等デイサービス

6条の224

平成27年地域限定

出題なし



平成27

6

監護措置と親権代行

33条の2
47


9

障害児施設

31条第2

平成26年再

9

施設職員等による被措置児童等に対する虐待

33条の10

平成26

5

児童福祉施設の長の権限

47条第3


今回は、平成31年前期試験の問3を解説します。
親権に関する条文の問題は、この平成31年前期、平成27年と出題されていますので続けて解説します。




平成31年前期試験


次の文は、親権に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。

1 親権者等は、児童相談所長や児童福祉施設の施設長、里親等による監護措置を、不当に妨げてはならない。

2 児童相談所長は、親権喪失、親権停止及び管理権喪失の審判について家庭裁判所への請求権を有する。

3 里親等委託中及び一時保護中の児童に親権者等がいない場合には、市町村長が親権を代行する。

4 子の親族及び検察官のほか、子、未成年後見人及び未成年後見監督人も、親権の喪失等について、家庭裁判所への請求権を有する。

5 家庭裁判所は、「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」に、2年以内の期間を定めて親権停止の審判をすることができる。

この問題の根拠となるのは「民法」と「児童福祉法」の2つの法律です。

まず、親権とはいわゆる「親の権利」で、子どもを監護、教育したり、財産を管理したりする権利で「民法」に定められています。
そして、子どもの利益を守るために「民法」だけでなく「児童福祉法」にも親権に関する内容が定められています。

児童虐待や育児放棄から子どもを守るため、親が持つ、この親権は制限されることがあります。
「社会的養護」は虐待された児童などの要保護児童を対象とした支援ですので、「社会的養護」という科目においては、親権に関して「監護措置」「親権喪失」「親権停止」などが出題されるということです。


設問を1つずつ見ていきます。



1 親権者等は、児童相談所長や児童福祉施設の施設長、里親等による監護措置を、不当に妨げてはならない。

→正しい

簡単にいうと、子どもの親などの親権者は、児童相談所長などの監護措置(=児童の利益を保護すること)を不当に妨げてはいけないということです。

「不当に妨げる行為」とは、
・児童を連れ去る
・職員に暴行する
・児童に経済的な損失を与える
などがあげられます。
これは、厚生労働省のガイドラインで具体的に述べられています。


そして、この「不当に妨げてはならない」ことは「児童福祉法」第33条の2第3項で定められています。
前項(第2項 監護措置)と一緒に読んで理解します。

第33条の2

児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる。

前項の児童の親権を行う者又は未成年後見人は、同項の規定による措置を不当に妨げてはならない


まず、児童相談所長は、一時保護が行われた児童で、子どもの親などの親権を行う者がいても監護措置ができるということ。
そして、子どもの親などは監護措置を妨害してはいけないということがポイントですね。



2 児童相談所長は、親権喪失、親権停止及び管理権喪失の審判について家庭裁判所への請求権を有する。

→正しい

簡単にいうと、親権喪失、親権停止、管理権喪失の裁判の請求は、児童相談所長もできるということです。
児童相談所長が、親権を持つ子どもの親などが適切な監護、教育を行なっていない、子どもの利益を守られていないと判断した時は、家庭裁判所へ親権喪失などの審判の請求ができます。

これは「児童福祉法」第33条の7で定められています。

第33条の7

児童等の親権者に係る民法第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項、第八百三十五条又は第八百三十六条の規定による親権喪失親権停止若しくは管理権喪失の審判の請求又はこれらの審判の取消しの請求は、これらの規定に定める者のほか、児童相談所長も、これを行うことができる





3 里親等委託中及び一時保護中の児童に親権者等がいない場合には、市町村長が親権を代行する。

→誤り。

「市町村長」ではなく、正しくは「児童相談所長」です。

2010年の「児童福祉法」改正にて、児童相談所長の権限が強化され、要保護児童に親権者がいない場合に、児童相談所長が代わりに親権を行うことができると定められました。
親権に関する内容に「市町村長」は関わらないと理解できていれば、誤りということがすぐに分かりますね。

まず、一時保護中の児童については、第33条の2で定められています。

第33条の2

児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。


そして、里親等委託中の児童については、第47条第2項で定められています。

第47条 

2 児童相談所長は、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親に委託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。




4 子の親族及び検察官のほか、子、未成年後見人及び未成年後見監督人も、親権の喪失等について、家庭裁判所への請求権を有する。

→正しい。

親権喪失の申し立ては誰ができるのかという問題ですね。
これは「民法」834条で定められています。

第834条 

父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、
子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

親権喪失の申し立てができるのは、

・子ども自身
・子どもの親族
・未成年後見人
・未成年後見監督人
・検察官

ということになります。
これは親権喪失だけでなく、親権停止の申し立ても同じです。


5 家庭裁判所は、「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」に、2年以内の期間を定めて親権停止の審判をすることができる。

→正しい。

家庭裁判所による親権停止の審判についての問題です。
これは「民法」834条の2で定められています。

第834条の2

父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。

2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める

親権停止の期間は2年以内ということですね。


親権に関する内容まとめ


親権に関する条文として、「児童福祉法」の第33条の第1項と第3項、第33条の7、第47条第2項が出題されました。
親権に関する問題は平成27年の問6にも出題されており、今後も繰り返し出題される可能性があります。

・児童相談所長は、一時保護が行われた児童で、子どもの親などの親権を行う者等がいない者に親権を行うことができること。
・ 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で、子どもの親などの親権を行う者等がいても監護措置ができること。

・子どもの親などは監護措置を不当に妨害できないこと。

これらのポイントを理解していれば、問題に答えることができます。

親権の問題は、今回の問題のように「児童福祉法」と「民法」の条文が絡んだ問題が出題される可能性があります。
ただ保育士試験の問題ですので、出題する側のことを考えると「民法」の条文よりも「児童福祉法」の条文に答えを含ませていると考えられます。
もし判断に迷うことがあれば、これは「民法か児童福祉法か」という視点で答えを選ぶというのもおすすめです。

次は平成27年の問6「監護措置と親権代行」について解説します。