(2022.7.7更新)
今回は、平成31年前期試験の問1を解説します。
平成31年前期の問1は、「児童福祉法」改正だけでなくその他の法律の改正点も出題された、複雑で難しい問題となっていました。
ただ、全ての設問の内容が、厚生労働省の資料「児童福祉法等の一部を改正する法律の概要」に示されています。
この資料を活用すると勉強しやすくなります。




平成31年前期試験
次の文は、「児童福祉法」及び「児童虐待の防止等に関する法律」における、平成 28 年の改正内容に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 市町村から児童相談所への事案送致を新設した。
2 市町村が設置する児童福祉審議会の調整機関について、専門職を配置しなければならないとした。
3 一時保護中の 18 歳以上の者等について、22 歳に達するまでの間、新たに施設入所等措置を行えるようにした。
4 児童虐待の疑いがある保護者に対して、再出頭要求を経ずとも、裁判所の許可状により、児童相談所による臨検・捜索を実施できるものとした。
5 児童虐待の発生予防に資するため、都道府県は、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行う母子健康包括支援センターの設置に努めるものとした。

誤りを見つける問題は多いですが、この問題は適切な記述を選ぶ問題です。
つまり、4つの設問には誤りが含まれています。

一つ一つ確認していきます。

1 市町村から児童相談所への事案送致を新設した。 

→×
正しくは「児童相談所から市町村への事案送致を新設した。」です。
問題文の文章自体が短すぎて意味が分かりにくいのですが、要保護児童について、市町村から児童相談所へその問題を送る(正しくは児童相談所から市町村へその問題を送る)ということです。
市町村と児童相談所は連携が必要なので、当たり前ではないのか?と思いますね。
市町村から児童相談所への事案送致は改正前から定められています。

そして、平成28年に定められたのが、児童相談所から市町村への事案送致の新設です。
これは「児童福祉法」第26条第1項第三号で定められています。(第26条は児童相談所長についての規定です)
「児童及び妊産婦の福祉に関し、情報を提供すること、相談(専門的な知識及び技術を必要とするものを除く。)に応ずること、調査及び指導(医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を必要とする場合を除く。)を行うことその他の支援(専門的な知識及び技術を必要とするものを除く。)を行うことを要すると認める者(次条の措置を要すると認める者を除く。)は、これを市町村に送致すること。 」

「厚生労働省資料」
では、以下のように述べられています。
■児童相談所から市町村への事案送致を新設。(児童福祉法・児童虐待防止法)
※ 現行は、市町村から児童相談所への事案送致のみ規定。
※ 併せて、児童相談所・市町村に共通のアセスメントツールを開発し、共通基準による初期評価に基づく役割分担を明確化。これにより、漏れのない対応を確保。

市町村が対応することが適当な事案は、児童相談所から市町村へ送るという行うことになります。
つまり、児童相談所と市町村は適切に役割分担をしていくということになりますね。


2 市町村が設置する児童福祉審議会の調整機関について、専門職を配置しなければならないとした。

→×
児童福祉審議会ではなく、正しくは「要保護児童対策地域協議会」です。
これは「児童福祉法」第25条の2(要保護児童対策地域協議会)第6項で定められています。
市町村の設置した協議会(市町村が地方公共団体(市町村を除く。)と共同して設置したものを含む。)に係る要保護児童対策調整機関は、厚生労働省令で定めるところにより、専門的な知識及び技術に基づき前項の業務に係る事務を適切に行うことができる者として厚生労働省令で定めるもの(次項及び第八項において「調整担当者」という。)を置くものとする。」

「厚生労働省資料」では、以下のように述べられています。
■ 市町村が設置する要保護児童対策地域協議会の調整機関について、専門職を配置するものとする。(児童福祉法)
 ※ 現行は、要保護児童対策調整機関における専門職(児童福祉司たる資格を有する者、保健師等)の配置は努力義務であり、1,387市区町村
(80.4%)が配置済。(平成27年4月1日)
■ 調整機関に配置される専門職は、国が定める基準に適合する研修を受けなければならないものとする。(児童福祉法)

第6項では、市町村の要保護児童対策地域協議会の調整機関については専門職を置くこととしています。
つまり、市町村の要保護児童対策地域協議会の機能を強化することが目的です。


3 一時保護中の 18 歳以上の者等について、22 歳に達するまでの間、新たに施設入所等措置を行えるようにした。

→×
22歳ではなく、正しくは「20歳」となります。
18歳以上の者に対する支援の継続についてですね。
これは「児童福祉法」第33条第8項で定められています。
「児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第一項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、次に掲げる措置を採るに至るまで、引き続き一時保護を行い、又は一時保護を行わせることができる。」

「厚生労働省資料」では、以下のように述べられています。
■ 一時保護中の18歳以上の者等について、20歳に達するまでの間、新たに施設入所等措置を行えるようにするとともに、 その保護者に対する面会・通信制限等の対象とする。(児童福祉法・児童虐待防止法)

つまり、18歳以上の者に対する支援の継続は20歳に達するまで
ということです。
何度も出題されている自立援助ホームの対象者拡大(条件によっては22歳まで)と混合しないように注意します。


4 児童虐待の疑いがある保護者に対して、再出頭要求を経ずとも、裁判所の許可状により、児童相談所による臨検・捜索を実施できるものとした。

→◯
これが正しい記述でした。
臨検とはその場に出向いて取り調べること、捜索とは隠しているものを探すことです。
このように改正されたということは、児童相談所の権限が強化したということですね。

これは「児童虐待の防止等に関する法律」第9条の3第1項で定められています。
「都道府県知事は、第八条の二第一項の保護者又は第九条第一項の児童の保護者が正当な理由なく同項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り又は調査を拒み、妨げ、又は忌避した場合において、児童虐待が行われている疑いがあるときは、当該児童の安全の確認を行い、又はその安全を確保するため、児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該児童の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、当該児童の住所若しくは居所に臨検させ、又は当該児童を捜索させることができる。」

「厚生労働省資料」では、以下のように述べられています。
■ 臨検・捜索について、再出頭要求を経ずとも、裁判所の許可状により、実施できるものとする。(児童虐待防止法) 
※ 現行は、保護者が立入調査を拒むことに加え、再出頭要求にも応じないことが要件。



5 児童虐待の発生予防に資するため、都道府県は、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行う母子健康包括支援センターの設置に努めるものとした。

→×
都道府県ではなく、正しくは「市町村」となります。
これは「母子保健法」第22条第1項で定められています。
「市町村は、必要に応じ、母子健康包括支援センターを設置するように努めなければならない。」

「厚生労働省資料」では、以下のように述べられています。
■市町村は、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する「子育て世代包括支援センター」を設置するよう努める ものとする。(母子保健法)
※ 平成27年度実施市町村数:138市町村 → 平成28年度実施市町村数(予定):251市町村
※ 法律上は、「母子健康包括支援センター」という名称。

子育ての不安、孤立に対応し、虐待を防ぐために「子育て世代包括支援センター」が法定化されました。
平成28年に「母子保健法」第22条が改正され、市町村の設置が努力義務となったということです。
法律上の名称と通称が異なるで、学習の際は注意が必要ですね。


平成28年の法改正は、資料を活用して漏れなく学習する
今回の資料は全て児厚生労働省資料に含まれている内容でした。
この資料をうまく活用して、平成28年改正点を漏れなく学習したいです。