(2022.7.11更新)
今回は平成28年前期試験問9の放課後等デイサービスについての問題を解説します。
この問題では「児童福祉法」だけでなく、放課後等デイサービスガイドラインからも出ているため、事前準備が少し難しい問題と言えます。
ただ、「児童福祉法」条文を覚えていたり、名称が似ている放課後児童健全育成事業と区別して覚えていることで、〇×がはっきりと分かるものもありましたね。



平成28年前期試験 問9
次の文は、放課後等デイサービスに関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 授業の終了後又は休業日において生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与するとされている。
B 基本活動として、自立支援と日常生活の充実のための活動、創作活動、地域交流の機会の提供、余暇の提供等を複数組み合わせて支援を行うことが求められる。
C 指定放課後等デイサービス事業所は、指導訓練室のほか、指定放課後等デイサービスの提供に必要な設備及び備品等を設けなければならない。
D 放課後児童支援員は、保育士、児童指導員、教員、看護師のいずれかの資格を有していなければならない。

(組み合わせ)  
   A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ × ○ ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × ○ × ○

まず、放課後等デイサービスの根拠法は「児童福祉法」です。
第6条の2の2第4項
「この法律で、放課後等デイサービスとは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。」
放課後等デイサービスは、平成22年改正(平成24年施行)の「児童福祉法」で創設された制度です。
「学校教育法」第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く)に就学する障害児を対象としていて、放課後や夏休み等の支援の充実、居場所確保を目的としています。
対象児童について「幼稚園及び大学を除く」というところも出題されやすいですね。

同じ「放課後」で始まる、放課後児童健全育成事業と間違えないように注意します。
放課後児童健全育成事業の根拠法も「児童福祉法」です。
第6条の3第2項
「この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。」
こちらはいわゆる学童保育ですね。
昔から学童保育はあったのですが、平成9年改正(平成10年施行)「児童福祉法」で制定化されました。
対象者はおおむね10歳未満(小学3年生)まででしたが、その後の改正により、小学校に就学している児童と拡大しました。

では問題を一つ一つ確認していきます。

A 授業の終了後又は休業日において生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与するとされている。

→◯
「児童福祉法」第6条の2の2第4項の通りです。
福祉系科目では条文がそのまま出題されることも多いですから、事業の定義はしっかりと覚えたいです。


B 基本活動として、自立支援と日常生活の充実のための活動、創作活動、地域交流の機会の提供、余暇の提供等を複数組み合わせて支援を行うことが求められる。

→◯
これは厚生労働省放課後等デイサービスガイドラインで述べられている内容です。
①自立支援と日常生活の充実のための活動 ②創作活動 ③地域交流の機会の提供 ④余暇の提供という4つの基本活動が述べられています。(ガイドラインの4から5ページ)


C 指定放課後等デイサービス事業所は、指導訓練室のほか、指定放課後等デイサービスの提供に必要な設備及び備品等を設けなければならない。

→◯
放課後等デイサービスガイドラインでは、事業所には適切な設備を設けることが述べられています。
「放課後等デイサービス事業所は、放課後等デイサービスを提供するための設備及び備品を適切に備えた場所である必要がある。様々な障害のある子どもが安全に安心して過ごすことができるようバリアフリー化や情報伝達への配慮等、個々の子どもの態様に応じた工夫が必要である。
子どもが生活する空間については、指導訓練室のほか、おやつや学校休業日に昼食がとれる空間、静かな遊びのできる空間、雨天等に遊びができる空間、子どもが体調の悪い時等に休息できる静養空間、年齢に応じて更衣のできる空間等を工夫して確保することが必要である。」としています。(8ページ)
 

D 放課後児童支援員は、保育士、児童指導員、教員、看護師のいずれかの資格を有していなければならない。

→×
放課後児童支援員とは、放課後児童健全育成事業の職員ですね。
この問題は放課後等デイサービスですから、別の事業であるため×です。
放課後等デイサービスの職員については、放課後等デイサービスガイドラインで定めています。
「放課後等デイサービス事業所においては、指導員又は保育士、児童発達支援管理責任者、機能訓練担当職員(機能訓練を行う場合)の配置が必須であり、重症心身障害児に対して放課後等デイサービスを行う場合は、指導員又は保育士に替えて、児童指導員又は保育士、さらに嘱託医、看護師、機能訓練担当職員の配置を行い、医療的ケア等の体制を整える必要がある。」(7ページ)



まずは「児童福祉法」の定義を確実に覚える

関連過去問として令和元年後期「児童家庭福祉(現 子ども家庭福祉)」では、次のような問題が出されました。
「放課後等デイサービスとは、授業の終了後または休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与する事業で、障害児入所支援の一つである。」(〇×問題)
これは、「障害児入所支援」というところが誤りで、正しくは「障害児通所支援」です。

福祉系科目では「児童福祉法」に定められた事業の定義は特に出題されやすいので、放課後等デイサービスについて、まずは第6条の2の2第4項を確実に覚えます。
そして、「放課後等デイサービスガイドライン」を読んで理解を深めていきたいですね。