「社会的養護」の過去問を分析する中で、親権に関する問題がよく出題されていること、問題の根拠として「児童福祉法」と「民法」の両方が絡む場合があることが分かりました。

親権に関する問題は「児童家庭福祉」「社会福祉」にも出題されています。

最近の出題ではこれらの4問です。

①「児童家庭福祉」平成31年前期の問5   
②「児童家庭福祉」平成30年神奈川県独自試験の問10
③「社会福祉」平成30年後期の問3
④「社会福祉」平成28年前期の問5

それぞれ「児童福祉法」や「民法」を根拠としています。
この知識は「社会的養護」にも関わってくるので、過去問の内容もしっかりとおさえたいです。
 

今回は、「民法」の条文穴埋め問題だった「児童家庭福祉」平成31年前期の問5を解説します。





平成31年前期試験「児童家庭福祉」問5
次の文は、「民法」の一部である。( A )~( D )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

第 818 条 成年に達しない子は、父母の( A )に服する。

第 820 条 ( A )を行う者は、子の( B )のために子の( C )をする( D )を有し、義務を負う。

第 821 条 子は、( A )を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

第 822 条 ( A )を行う者は、第 820 条の規定による( C )に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

(組み合わせ)

       A    B               C             D
1 監護 利益  保護及び養育  責任
2 監護 懲戒  監護及び教育  権利
3 養育 保護  監護及び教育  責任
4 親権 利益  監護及び教育  権利
5 親権  懲戒  保護及び養育  責任

条文の穴埋め問題は、似た意味の言葉が並ぶ(他の言葉でも意味が通じる)ので難しく、やはり条文を知っていなければ正しい答えを選べません。

答えは4で、A → 親権   B →利益   C→監護及び教育  D →権利が入ります。

ここでは、820条の「子の利益のために子の監護及び教育をする権利」と、それを受けた821条の「懲戒権」がポイントとなります。


一つ一つ確認していきます。

第 818 条
成年に達しない子は、父母の( 親権 )に服する。


第818条第1項です。
未成年者は父母の親権に服するとしています。
つまり、未成年者は父母に養育・監護され、財産を管理されるということですね。

さらに、第818条第3項では、婚姻中は共同で親権を行使するとしています。
つまり離婚後はどちらか一方が単独で親権を行使するということです。


第 820 条
( 親権 )を行う者は、子の( 利益 )のために子の( 監護及び教育 )をする( 権利 )を有し、義務を負う。


この条文では親権を規定しています。
親権者は、子の監護、教育をする権利と義務があるということですね。

監護とは監督・保護のことで、子どもの生活の面倒をみるというような意味です。
教育とは「しつけ」という意味も含まれます。

つまり、親権者は子どもの面倒をみて、しつけを行うということです。

また、「子の利益のために」という部分は平成23年改正で追加されました。
監護・教育は「子の利益のため」であるということが重要となります。



第 821 条
子は、( 親権 )を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。


親権に、子どもの居所を指定する権利が含まれるということです。
親権者と子どもは一緒に住むだけでなく、別居も認められています。
なんらかの事情で子どもが別居する場合は、親権者が指定する場所に住む必要があるということです。



第 822 条
( 親権 )を行う者は、第 820 条の規定による( 監護及び教育 )に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。


822条は、820条を受けています。
「子の利益のために」行われる監護及び教育の中で、必要な範囲で懲戒ができます。
つまり親権者に懲戒権はあるものの、「子の利益のため」に行うことを前提としているということです。
「子の利益のため」という言葉があることで、虐待が防止されます。

ただ、これでは「しつけという暴力」が正当化されてしまいます。
親がしつけ(教育)の範囲として、暴力を行なってよいという解釈にもなりかねません。

よって、現在は「民法」第822条の懲戒権の在り方が見直されようとしています。

これは前回書いた「児童福祉施設の長の権限」に関連しています。
 

児童福祉施設の長は、子どもの親などの親権を行うものがいても、監護、教育、懲戒に関して、必要な措置ができるということを「児童福祉法」第47条第3項で定めています。
この条文は改正が決まっており、条文の最後に「ただし、体罰を加えることはできない。」など、体罰を禁止する文言が追記され、令和2年4月に施行されます。
 
このような改正を受けて、「民法」第822条の懲戒権についても、在り方を検討するということが児童福祉法等の一部を改正する法律 の公布について)で述べられています。


「民法」第820条、822条は理解して覚える


保育士試験に関わる「民法」の条文はそれほど多くないため、まずは過去問に出題されている条文からおさえておきたいです。
特に今回の問題に出てきた第820条、822条は、今後の「児童福祉法」改正と関連しているため、特に理解して覚えたいです。

次回も親権に関する問題を解説します。