前回に引き続き、「社会的養護」の親権に関する問題に対応するために、「児童家庭福祉」「社会福祉」の過去問を確認します。

今回は、「児童家庭福祉」平成30年神奈川県独自試験の問10です。
神奈川県の過去問はこちらにあります。(平成29年過去問平成30年過去問平成31年過去問

 





平成30年神奈川県試験「児童家庭福祉」問10
次の文の文は、児童家庭福祉の専門職・実施者に関する記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。

A 児童養護施設、障害児入所施設及び児童自立支援施設の長は、学校教育法に規定する保護者に準じて、その施設に入所中の児童を就学させなければならないが、児童心理治療施設の長についてはこの限りではない。

B 児童相談所長は、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親に委託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。

C 児童福祉施設の長は、入所中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。

D 児童養護施設の長は、当該施設の所在する地域の住民につき、児童の養育に関する相談に応じ、及び助言を行わなければならない。

E 児童福祉施設の長は、親権を行う者又は未成年後見人のある入所中の児童等について、児童等の生命又は身体の安全を確保するため緊急の必要がある場合であっても、親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合は、監護、教育及び懲戒に関してその児童等の福祉のため必要な措置をとることはできない。

  (組み合わせ)

1AB
2AC
3BC
4CD
5DE

一見、とても難しそうに感じます。
ただ、正しい内容を誤りにしているわけですので、内容をよく知らなくても「これが誤りかな」と判断できそうです。

例えば、

A → 児童心理治療施設だけ児童の就学義務がないのはおかしいですね。
E→ 緊急の場合にも監護措置がとれないというのは子どもの利益に反します。

A、Eが×ということは国語力で判断できるので、選択肢を3と4まで減らすことができます。

では、一つ一つ確認していきます。

A 児童養護施設、障害児入所施設及び児童自立支援施設の長は、学校教育法に規定する保護者に準じて、その施設に入所中の児童を就学させなければならないが、児童心理治療施設の長についてはこの限りではない。

→×

児童心理治療施設の長も児童を就学させる義務があります。
これは「児童福祉法」第48条の規定によります。
 第48条
 
    児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設の長、その住居において養育を行う第六条の三第八項に規定する厚生労働省令で定める者並びに里親は、学校教育法に規定する保護者に準じて、その施設に入所中又は受託中の児童を就学させなければならない

児童心理治療施だけ例外ということは考えられません。
そして里親やファミリーホームも同様に、受託中の児童を就学させる義務があります。



B 児童相談所長は、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親に委託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。

→◯

ファミリーホームや里親委託中の児童に親権者がいない場合には、児童相談所長が代わりに親権を行うということです。
これは第47条第2項で定められています。
第47条第2項 

児童相談所長は、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親に委託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。

里親に親権はありません
児童の親権は実親が持っているか、親権者がいない場合は児相談所長が代わりに親権を行うことになります。



C 児童福祉施設の長は、入所中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。

→◯

入所中の児童に親権者がいない場合には、児童福祉施設の長が代わりに親権を行うということです。
これは第47条第1項で定められています。
第47条第1項
児童福祉施設の長は、入所中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。




D 児童養護施設の長は、当該施設の所在する地域の住民につき、児童の養育に関する相談に応じ、及び助言を行わなければならない。

→×

児童養護施設等の地域住民に対する支援ですね。
問題文は「〜しなければならない」と義務となっていますが、正しくは「努めなければならない」という努力義務となります。

これは第48条の2で定められています。
第48条の2
乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設の長は、その行う児童の保護に支障がない限りにおいて、当該施設の所在する地域の住民につき、児童の養育に関する相談に応じ、及び助言を行うよう努めなければならない



E 児童福祉施設の長は、親権を行う者又は未成年後見人のある入所中の児童等について、児童等の生命又は身体の安全を確保するため緊急の必要がある場合であっても、親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合は、監護、教育及び懲戒に関してその児童等の福祉のため必要な措置をとることはできない。

→×

これは「児童福祉法」第47条の第5項で定められています。
第3項とあわせて理解します。
第47条 

3 児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第六条の三第八項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親は、入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる。

5 第三項の規定による措置は、児童等の生命又は身体の安全を確保するため緊急の必要があると認めるときは、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反しても、これをとることができる。この場合において、児童福祉施設の長、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親は、速やかに、そのとつた措置について、当該児童等に係る通所給付決定若しくは入所給付決定、第二十一条の六、第二十四条第五項若しくは第六項若しくは第二十七条第一項第三号の措置、助産の実施若しくは母子保護の実施又は当該児童に係る子ども・子育て支援法第二十条第四項に規定する支給認定を行つた都道府県又は市町村の長に報告しなければならない。

緊急の場合には子どもの親などの親権者等の意に反しても、監護措置を行うことができるということです。


間違った思い込みがないように注意


児童相談所長の権限、児童福祉施設の長の権限に関する問題で、「児童福祉法」第47条、48条を根拠としていました。

私は受験勉強中に、「里親には親権があるもの」と思い込んでいましたので、第47条第2項を読み、なぜ里親委託中の児童について、児童相談所長が親権を代行するのだろう?と不思議で、理解できませんでした。

里親に親権がないことがわかれば納得できるのですが、里親についてよく理解できていないまま勉強を先に先に進めていたので、思い込みが生まれてしまっていたのです。

思い込みを疑うというのはなかなか難しく、里親に親権がないと気づくまで、かなり時間がかかってしまいました。

保育士試験は範囲が広いので勉強をどんどん進めていかなければならないのですが、間違った思い込みをしてしまわないように注意しなければなりません。

次回も親権に関する問題を解説します。