(2022.7.12更新)
今回は「養子縁組」について取り上げます。
最近の「社会的養護」では養子縁組の出題が目立っています。
平成28 年「児童福祉法」改正では、子どもが権利の主体であることを明確にし、家庭への養育支援から代替養育までの社会的養育の充実とともに、家庭養育優先の理念を規定し、実親による養育が困難であれば、 特別養子縁組による永続的解決(パーマネンシー保障)や里親による養育を推進することを明確にしました。
これにより、出題が増えていると考えられます。




里親と養子縁組の違い

■里親
国から委託された子どもを一時的に里親の家庭で預かり、子どもを養育することが里親制度です。
里親は子どもと法的な関係はなく、親権は実親が持つか、親権者がいない場合は児童相談所長が親権を行います。
子どもは18歳になるまで養育を行われ、20歳まで措置を延長できます。
里親の種類は4つあり、養育里親、専門里親、親族里親、養子縁組里親です。
平成20年「児童福祉法」改正により「養育里親」と「養子縁組を希望する里親」とを制度上区分し、平成29年度から養子縁組里親が法定化、研修が義務化されました。


■養子縁組
養子縁組すると、「養子は養親の親権に服する」ということが「民法」第818条第2項で定められています。
法的な親子関係が成立し、養親が親権を持つということですね。
養子縁組の中には「普通養子縁組」「特別養子縁組」という2つの種類があります。
これらの違いについては、厚生労働省資料普通養子縁組と特別養子縁組についてで確認できます。
ここは次回の記事で詳しく見ていきます。


平成30年後期試験

今回は養子縁組里親に関する過去問を確認します。
養子縁組里親とは、養子縁組を希望し、養子縁組を前提として子どもを養育する里親をいいます。
つまり養子縁組が成立する前の状態ですね。
名簿登録や研修の受講について出題されています。

平成30年後期「社会的養護」問6
次の文は、養子縁組里親に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 養子縁組里親に委託される児童は、養子縁組里親になる者と親族関係にある必要がある。
2 養子縁組里親には、里親になるために必須となる指定された研修の受講義務がない。
3 養子縁組里親は、都道府県で作成される養子縁組里親の名簿登録が任意である。
4 養子縁組里親には、欠格事由が定められていない。
5 養子縁組里親には、里親手当は支給されない。

一つ一つ確認していきます。

1 養子縁組里親に委託される児童は、養子縁組里親になる者と親族関係にある必要がある。

→ ×
もともと児童と養親が親族関係にあるかということですので×ですね。
養子と養親はもともと親族関係である必要はありません
また、里親の種類である「親族里親」は、児童の親族であることが要件となります。


2 養子縁組里親には、里親になるために必須となる指定された研修の受講義務がない。

→ ×
平成28年「児童福祉法」改正(施行は平成29年4月)により、養子縁組里親への都道府県知事の研修が義務化されました。
第6条の4第2号では「養子縁組里親は、都道府県知事が厚生労働省令で定めることにより行う研修を修了した者」としています。

3 養子縁組里親は、都道府県で作成される養子縁組里親の名簿登録が任意である。

→×
こちらも平成28年「児童福祉法」改正(施行は平成29年4月)により、養子縁組里親は養子縁組里親名簿への登録が必要となります。
養子縁組里親は養子縁組里親名簿、養育里親・専門里親は養育里親名簿という異なる名簿に登録されることがポイントです。


4 養子縁組里親には、欠格事由が定められていない。

→×
養子縁組里親に欠格事由は定められています
欠格事由とは要求されている資格を欠くことです。
つまり、養子縁組里親になることができない原因ということですね。
欠格事由は里親制度運営要綱(平成29年改正)の4ページに定められています。


5 養子縁組里親には、里親手当は支給されない。

→◯
里親手当が支給される里親は、養育里親・専門里親の2つです。
養子縁組里親と親族里親には支給されません。
ただし、一般生活費(子どもの食事・衣服などの費用)、その他(教育費・医療費など)は養子縁組里親・親族里親にも支給されます。
具体的には、厚生労働省資料里親制度1ページに、里親に支給される手当等が載っています。