(2022.7.13更新)
前回に引き続き養子縁組について解説します。
今回は普通養子縁組、特別養子縁組の違いを明らかにします。




普通養子縁組と特別養子縁組
厚生労働省の資料「普通養子縁組と特別養子縁組について」で違いを確認します。
簡単にまとめました。


普通養子縁組

特別養子縁組

成立

養親と養子の同意

養親の請求に対して家庭裁判所が決定する

養親の要件

成年に達している

25歳以上の夫婦(一方が25歳以上ならもう一方は20歳以上でよい)配偶者がある者

養子の要件

養親より年齢が下

原則15歳未満

実親との親族関係

継続

終了

成立までの監護期間

なし

6ヶ月以上

離縁

養親と養子の同意

養子、実親、検察官の請求

戸籍表記

実親の名前あり、養子の続柄は養子(養女)と記載

実親の名前なし、養子の続柄は長男(長女)などと記載


2020年4月1日「民法」改正により、特別養子縁組の養子の要件が原則15歳未満に引き上げられました。
例外として、15歳に達する前から養親候補者から引き続き養育される場合、やむを得ない事由によって15歳までに申し立てできない場合は、15歳以上でも可能(18歳未満)としています。


2点補足します。
■特別養子縁組の離縁
特別養子縁組が成立すると、原則的に離縁はできません。
ただし、養親による虐待や実親が相当の監護ができるなどの要件で、養子、実親、検察官が請求した場合に、家庭裁判所が離縁を行います。
養親は離縁を請求することはできません。
特別養子縁組の離縁について保育士試験に出ることはないと思いますが、全く離縁できないわけではなく離縁できる要件もあること、ただし養親は離縁の請求をできないということを念のためおさえます。

■特別養子縁組の成立までの監護期間
児童を委託後、家庭裁判所に特別養子縁組の請求をします。
その審判が下るまで6ヶ月以上の期間があり、その試験期間を監護期間といいます。
すでに子どもと一緒に暮らしていても、縁組の成立までには6ヶ月以上かかるということですね。
請求後すぐに特別養子縁組が認められない理由は、家庭裁判所が親子関係の相性や養親の能力などを慎重に確認するからです。
以前はこの監護期間の中で育児休業が認められていなかったので、共働き家庭ではどちらかが仕事を辞めなければならないということがありました。
しかし「育児介護休業法」が改正され、平成29年より監護期間中も育児休業が認められるようになりました。


平成29年神奈川県 問10

特別養子縁組に関した過去問を紹介します。

平成29年神奈川県「社会的養護」問10
次の文は、特別養子縁組に関する記述である。適切な記述を◯、不適切な記述を×とした正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A  特別養子縁組は、「児童福祉法」に規定されている。
B  特別養子縁組の対象となる子どもは、5歳未満と規定されている。
C  養親となる者は、夫婦であり、共に20歳以上でなければならない。
D  実親との法的な親子関係は終了する。

一つ一つみていきます。

A  特別養子縁組は、「児童福祉法」に規定されている。

→ ×
「児童福祉法」ではなく「民法」です。
第817条の2では、特別養子縁組の成立を規定しています。
厚生労働省の資料「普通養子縁組と特別養子縁組について」3ページ目には、養子縁組に関した「民法」の条文がまとめられています。
こちらも目を通しておきたいです。


B  特別養子縁組の対象となる子どもは、5歳未満と規定されている。

→ ×
この試験の出題時点では、5歳未満ではなく「6歳未満」ですので×ですね。
原則、6歳に達していない者が養子の要件でした。
さらに法改正により、現在、特別養子縁組の養子の要件は原則15歳未満です。


C  養親となる者は、夫婦であり、共に20歳以上でなければならない。

→×
20歳以上ではなく25歳以上の夫婦です。
ただ、夫婦の一方が25歳以上であれば、一方は20歳以上で可としています。


D  実親との法的な親子関係は終了する。

→◯
普通養子縁組では実親との親子関係はそのままですが、特別養子縁組では実親との親子関係は終了します。


実体験を読んで理解するのもおすすめです

特別養子縁組について調べると、特別養子縁組が成立した経緯を細かく書かれているブログを見つけました。
特別養子縁組の申し立てにはたくさんの書類や準備が必要なこと、監護期間中は縁組が成立するまでずっと不安な気持ちで過ごしていること、縁組が成立した後のことなど、実体験を読んで初めて知ることや涙することが多くありました。

試験に合格するためには制度や仕組みを学ぶだけでいいのですが、実際の体験談を読むと、内容の理解が深まります。
試験勉強の合間に、里親などの体験談を読まれるのもおすすめです。