(2022.7.14更新)
今回は、苦情対応・運営適正化委員会について解説します。
苦情対応や運営適正化委員会については、子ども家庭福祉・社会福祉・社会的養護で出題され、特に社会福祉によく出題されています。
苦情対応が何故、社会的養護の科目の範囲なのか?と疑問に思いますが、「社会的養護」の試験範囲を確認すると、
社会的養護の現状と課題(1)施設等の運営管理
とありますので、施設の運営管理に苦情対応が含まれていると考えます。
ただ、10問しかない中で、苦情対応や運営適正化委員会が出題される可能性はあまり高くないと思います。
社会福祉を受ける方は必ずおさえたい分野ですが、残りニコイチだけなどという方は出るポイントをおさえて基本を復習されるとよいですね。
今回は社会的養護での出題に向けた3つのポイントと過去問を紹介します。

 




苦情対応や運営適正化委員会は「児童福祉法」には定められていません

おさえておきたい大きなポイントは3つです。

ポイント①定められている法律
児童福祉施設における苦情対応は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」、運営適正化委員会については「社会福祉法」に定められています。
根拠法が「児童福祉法」ではないことがポイントです。

ポイント②児童福祉施設の種類によっては、施設職員以外の者を関与させなければならない
乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設では、苦情解決のために施設職員以外の者を関与させなければなりません。
これは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第14条の3第2項の規定です。

ポイント③運営適正化委員会は都道府県社会福祉協議会に設置される
運営適正化委員会は、都道府県社会福祉協議会に設置されていること、公正・中立な第三者機関であることがポイントです。


平成30年前期「社会的養護」問4
苦情対応・運営適正化委員会に関する、実際の問題を確認します。

平成30年前期「社会的養護」問4
次の文は、児童福祉施設における苦情への対応に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい

A 児童福祉施設では、苦情の公正な解決を図るために、苦情の解決にあたり当該児童福祉施設の職員以外の者を関与させなければならないとされている。
B 児童福祉施設は、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないとされている。
C 運営適正化委員会は、苦情の解決にあたり、利用者の処遇について不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、施設が所在する市町村長(政令指定都市の長は除く)に通知しなければならないとされている。
D 児童福祉施設は、運営適正化委員会が行う「社会福祉法」の規定による調査に、できる限り協力しなければならないとされている。

(組み合わせ)  
   A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ×

一つ一つ確認していきます。

 A 児童福祉施設では、苦情の公正な解決を図るために、苦情の解決にあたり当該児童福祉施設の職員以外の者を関与させなければならないとされている。

→ ×
素直に読むと◯なのですが、「児童福祉施設」という主語が×です。
この文章だと「全ての児童福祉施設」という意味になってしまいますね。
全ての児童福祉施設ではなく、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設となります。
これは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第14条の3第2項の規定です。
「乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設及び児童自立支援施設は、前項の必要な措置として、苦情の公正な解決を図るために、苦情の解決に当たつて当該児童福祉施設の職員以外の者を関与させなければならない。」


B 児童福祉施設は、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないとされている。

→ ◯
これは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第14条の3第1項の規定です。
「児童福祉施設は、その行つた援助に関する入所している者又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。」
Aとは異なり、苦情対応の窓口設置等は全ての児童福祉施設が対象となります。

C 運営適正化委員会は、苦情の解決にあたり、利用者の処遇について不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、施設が所在する市町村長(政令指定都市の長は除く)に通知しなければならないとされている。

→×
市町村長ではなく都道府県知事です。
運営適正化委員会から都道府県知事へ通知されるという仕組みです。
これは「社会福祉法」第86条に規定されています。
「運営適正化委員会は、苦情の解決に当たり、当該苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。」
また、運営適正化委員会については「社会福祉法」第83条に規定されています。
運営適正化委員会とは、利用者が福祉サービスを適切にできるために、福祉サービスに関して利用者からの苦情を解決するために設置されるものです。


D 児童福祉施設は、運営適正化委員会が行う「社会福祉法」の規定による調査に、できる限り協力しなければならないとされている。

→◯
これは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第14条の3第4項の規定です。
「児童福祉施設は、社会福祉法第83条に規定する運営適正化委員会が行う同法第85条第1項の規定による調査にできる限り協力しなければならない。 」
条文内の第83条は運営適正化委員会、第85条第1項は運営適正化委員会の行う苦情の解決のための相談等について定められています。


条文は要約で理解する

社会的養護での出題が考えられる、苦情対応・運営適正化委員会に関係する条文は8つあります。
次のような簡単な要約で内容を理解していきたいです。

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」では、第14条の3(第1〜第4項)で「苦情への対応」を定めています。
第1項   すべての児童福祉施設には苦情受付の窓口を設置しなければならない
第2項   乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設においては、苦情解決のために施設職員以外の者を関与させなければならない
第3項  児童福祉施設が都道府県や市町村から指導、助言を受けた場合、それに従って必要な改善を行わなければならない
第4項 児童福祉施設は、運営適正化委員会の調査にできる限り協力しなければならない


社会福祉法」では、第83条から第86条で運営適正化委員会について定めています。
第83条  都道府県社会福祉協議会に運営適正化委員会を置く
第84条  運営適正化委員会が、福祉サービス利用援助事業に必要な助言や勧告をする
第85条  運営適正化委員会は、苦情解決の申し出あった場合、相談に応じ、助言、調査を行う
第86条  苦情解決にあたり、利用者に不当な行為が行われているおそれがあると認める時は運営適正化委員会から都道府県知事へ通知しなければならない