(2022.11.30更新)
平成27年地域限定試験「社会福祉」問6を解説します。


平成27年地域「社会福祉」問6
 
次の文は、生活保護制度に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を × とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 指定医療機関で医療扶助を受ける際は、福祉事務所の発行する医療券を提出する。
B 被保護者は、自ら生計の状況を適切に把握し、支出の節約を図るよう努める。
C 高等学校の授業料は、生活保護制度においては支給されない。
D 住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを目的とする施設がある。
 
 (組み合わせ)  
   A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ○
4 × ○ ○ ○
5 × ○ × ×

まず、解答テクニックです。
Cの「支給されない」という言い回しは×と判断します。
社会福祉の問題では、必要な人が適切な福祉サービスを受けられるような問題が作られています。
ですので、「~は支給されない」「~という規定はない」という表現は×と考えられます。
よって高等学校の授業料は生活保護制度の対象といえます。

 一つずつ見ていきます。
 
A 指定医療機関で医療扶助を受ける際は、福祉事務所の発行する医療券を提出する。

→◯
正しい記述です。
まず、文章の前半にあるように、生活保護の医療扶助は指定医療機関で受けることが決まっています。
これは「生活保護法」第34条第2項、第49条に定められています。

・第34条第2項
「前項に規定する現物給付のうち、医療の給付は、医療保護施設を利用させ、又は医療保護施設若しくは第四十九条の規定により指定を受けた医療機関にこれを委託して行うものとする。」
・第49条
「厚生労働大臣は、国の開設した病院若しくは診療所又は薬局について、都道府県知事は、その他の病院若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局について、この法律による医療扶助のための医療を担当させる機関を指定する。」

また、後半について、保護を決定して実施する機関は福祉事務所であることをおさえます。
これは「生活保護法」第19条に定められています。
「都道府県知事、市長及び社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。」


B 被保護者は、自ら生計の状況を適切に把握し、支出の節約を図るよう努める。 

→◯
正しい記述です。
生活上の義務については「生活保護法」第60条で定められており、この条文の出題でした。
「被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。」

C 高等学校の授業料は、生活保護制度においては支給されない。

→× 
支給されます。
生活保護のうち「教育扶助」は義務教育を受けるために必要なものとなりますが、高校の授業料は「生業扶助」に含まれます。
生業扶助及び一時扶助について(厚生労働省)の12ページに、高等学校等修学費が定められており、「高校就学費用を生活保護制度において制度化したものであり、具体的には、高校就学に伴い必要となる学用品費、交通費、授業料等を給付する。」としています。


D 住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを目的とする施設がある。

→◯
正しい記述です。
家賃のうち定められた金額を支給する住宅扶助ですが、住居のない世帯に住宅扶助を行う設がある(つまり住居を提供する)ということですね。
これは「生活保護法」第38条第6項に定められた宿所提供施設です。
「宿所提供施設は、住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを目的とする施設とする。」

義務教育の費用は「教育扶助」、高等学校の費用は「生業扶助」

高等学校の授業料や学用品等は、生活保護の中の「生業扶助」に含まれることをおさえます。
生活保護の中で「教育扶助」は義務教育を受けるために必要なものですから、もし、Cの文章が「高等学校の授業料は教育扶助として支給される」という文章であれば×です。