(2022.12.1更新)
雇用保険制度を解説しています。
今回は平成28年後期試験(問11)の解説です。


平成28年後期試験 問11
 
次の文は、所得保障についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を × とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 育児休業の際に支給される育児休業給付金は、「健康保険法」に定められている。
B 国家公務員の常勤職員は、厚生年金保険の被保険者である。
C 老齢基礎年金は、租税のみを財源としている。
D 労働者災害補償保険は、通勤途上における負傷も保険給付の対象としている。
E 雇用保険では、厚生労働大臣が指定する、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練も保険給付の対象としている。
 
 (組み合わせ)
    A B C D E
1 ○ ○ × ○ ×
2 ○ × ○ ○ ×
3 ○ × ○ × ○
4 × ○ ○ × ×
5 × ○ × ○ ○

この問題は、雇用保険制度を含めた所得保障に関する内容です。
所得保障とは、失業や疾病によって働けなくなって収入がない状態の時に、生活のために金銭を支給されることです。

5つ全て分からなくても、例えば、Dの労災、Eの雇用保険がわかるだけで、正答の5を選ぶことができます。
また、解答テクニックを使うと「のみ」が含まれているCは×と判断できます。
もし正しい内容であれば、わざわざ「のみ」をつける必要がないからです。
これだけで1か5に絞ることもできますね。

1つずつみていきます。

A 育児休業の際に支給される育児休業給付金は、「健康保険法」に定められている。

→×
育児休業給付金は「雇用保険法」にもとづいたものです。
育児休業は「育児・介護休業法」で定められ、その給付金が「雇用保険法」に規定されています。
問題文の「
健康保険法」とは医療保険の給付等について定めたものですね。

このように根拠法を問うような問題は、誤りであることが多いです。
字数に限りのある問題文の中で、内容面に誤りを作るのは難しいと思います。
しかし、根拠法の部分だけ変えると簡単に誤った文章を作ることができますね。


B 国家公務員の常勤職員は、厚生年金保険の被保険者である。 

→◯
正しい記述です。
以前、国家公務員は共済年金に加入していましたが、被用者年金制度の一元化によって、平成27年10月より国家公務員も厚生年金に加入することになりました。


C 老齢基礎年金は、租税のみを財源としている。 

→×
「租税のみ」が誤りです。
租税とは、消費税などの国民から徴収した税金のことですね。
老齢基礎年金の財源は、被保険者が納めている保険料だけでは足りないため、国が負担しています。
被保険者の保険料と国庫負担とまかなわれていることをおさえます。

D 労働者災害補償保険は、通勤途上における負傷も保険給付の対象としている。 

→◯
正しい記述です。
労働者災害補償保険制度とは、いわゆる「労災」と呼ばれるもので、仕事中や通勤中に起こったケガや病気に対して保険給付を行う制度です。
問題文にある通勤途上における負傷は給付の対象です。


E 雇用保険では、厚生労働大臣が指定する、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練も保険給付の対象としている。

→◯
正しい記述です。
雇用保険のうち「失業等給付」は、求職者給付就職促進給付教育訓練給付雇用継続給付の4つの内訳になっています。
問題文にある教育訓練とは、この教育訓練給付をさしています。
教育訓練給付とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了すると給付金が支給されるというものです。
何か資格を取得するためにかかった講座について、その受講料の一部を補助するというものですね。
雇用保険の被保険者であるもの(過去に被保険者であったもの)が、一定の要件を満たすと、この教育訓練給付を受けることができます。


過去問から再び同じ内容の問題が出ることがありますので、それぞれおさえておきたいですね。
次回も引き続き雇用保険制度です。