(2022.12.29更新)
日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業)が含まれた問題解説を行っています。
すでに解説済みの問題もありますので、それについてはポイントを紹介します。
出題一覧は下の表です。
今回は、平成26年試験を確認します。

平成30年前期

17

平成29年後期

5

平成29年前期

19

平成27年地域

20

平成26

5


【神奈川県】

平成30年  

問20

平成29

8


平成26年試験 問5
 
次の文は、利用援助等に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を × とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 通所介護のサービスを利用しているFさんは、妻を亡くした後ふさぎこんでしまい、そのサービスの利用を中止すると申し出た。その際、通所介護事業の担当者は、Fさんが家に引きこもってしまっては心身ともに悪い状態になると判断して、このままサービスを利用し続けるようにFさんに働きかけた。

B 自分の物忘れと判断力が衰えてきたことを自覚した独居のGさんは、その不安を民生委員に相談したところ、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が役立つだろうと紹介された。

C 経済的に困窮している母子家庭を発見した児童委員は、その母親に代わって生活保護を申請することにした。

D 地域包括支援センターは、認知症の諸症状が現われてきた独居のHさんを発見し、要介護認定を申請するよう勧めたが断られた。支援センターでは、Hさんが認知症のため説得しても効果は薄いと判断して、支援を断念した。

(組み合わせ)  
 A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × × ○ ○

さまざまな事例を集めた問題でした。
このうち、Bが日常生活自立支援事業に関連しています。

B 自分の物忘れと判断力が衰えてきたことを自覚した独居のGさんは、その不安を民生委員に相談したところ、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が役立つだろうと紹介された。

民生委員の立場で言い換えますと、Gさんの相談を受けた民生委員は、Gさんが日常生活自立支援事業を必要としていると考えて、日常生活自立支援事業を紹介したということですね。
「自分の物忘れと判断力が衰えてきたことを自覚」「社会福祉協議会」というキーワードから、日常生活自立支援事業に結びつけることができます。
日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業)とは、都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会を実施主体として、「認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うもの」です。(厚生労働省
福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理を行う事業であるため、判断力が衰えてきたGさんにとって役立ちますね。

そして、問題文に出てくる「民生委員」の役割としても合っています。
民生委員の職務は「民生委員法」第14条に定められています。
第14条 民生委員の職務は、次のとおりとする。
一 住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと。
二 援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。
三 
援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと。
四 社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。
五 社会福祉法に定める福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)その他の関係行政機関の業務に協力すること。
2 民生委員は、前項の職務を行うほか、必要に応じて、住民の福祉の増進を図るための活動を行う。

赤字の部分がこの問題に関わってきますね。

B以外も確認します。
今回の問題は、問題を抱えている人のためになる支援か、生活環境を整えられる支援か、などといった視点で考えると答えがわかりやすいです。

A 通所介護のサービスを利用しているFさんは、妻を亡くした後ふさぎこんでしまい、そのサービスの利用を中止すると申し出た。その際、通所介護事業の担当者は、Fさんが家に引きこもってしまっては心身ともに悪い状態になると判断して、このままサービスを利用し続けるようにFさんに働きかけた。

→◯
正しい記述です。
Fさん本人が利用中止を申し出ているものの、担当者がFさんの状況を考慮して利用継続をするように働きかけています。
これは知識問題ではなく、利用者の状況をイメージして答える問題でした。
どのような援助が望ましいかを考えると答えを導くことができますね。


C 経済的に困窮している母子家庭を発見した児童委員は、その母親に代わって生活保護を申請することにした。

→×
まず、生活保護制度の原則には「申請保護の原則」があります。(「生活保護法」第7条)
これは要保護者、扶養義務者、その他の同居の親族の申請によって保護が開始されるというものです。
ただし、要保護者が急迫した状況のあるときは申請がなくても必要な保護が行われることとしています。
次に、児童委員の職務は「児童福祉法」第17条第1項に定められています。
第17条第1項
児童委員は、次に掲げる職務を行う。
一 児童及び妊産婦につき、その生活及び取り巻く環境の状況を適切に把握しておくこと。
二 児童及び妊産婦につき、その保護、保健その他福祉に関し、サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助及び指導を行うこと。
三 児童及び妊産婦に係る社会福祉を目的とする事業を経営する者又は児童の健やかな育成に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。
四 児童福祉司又は福祉事務所の社会福祉主事の行う職務に協力すること。
五 児童の健やかな育成に関する気運の醸成に努めること。
六 前各号に掲げるもののほか、必要に応じて、児童及び妊産婦の福祉の増進を図るための活動を行うこと。

児童委員が生活保護の代理申請を行うという業務は、この中にないため、Cは×となります。
 

D 地域包括支援センターは、認知症の諸症状が現われてきた独居のHさんを発見し、要介護認定を申請するよう勧めたが断られた。支援センターでは、Hさんが認知症のため説得しても効果は薄いと判断して、支援を断念した。

→×
断られたので支援を断念するというところが誤りですね。
これでは援助が必要な人を見過ごすことになってしまいます。
説得の仕方を変えるなど工夫していくことが必要です。

また、地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるように支援する役割があります。
「介護保険法」第115条の46に「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設とする。」と定義されています。

この地域包括支援センターに関連して、地域包括ケアシステムについても出題が考えられますので、厚生労働省の該当ページは読んでおきたいですね。


次回に続きます。