(2022.8.11更新)
「教育原理」には「中央教育審議会答申」からの出題が定番です。
内容を知らなくても、解答テクニックや国語力をあわせて答えを導くこともできますが、気になる答申は時間があるかぎり読んでおきたいところです。

平成30年神奈川、平成31年神奈川、令和元年後期は、いずれも「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について (答申)」(平成 28 年)からの出題でした。
243ページからなるボリュームのある答申です。
今後の試験にもまだまだ出る可能性がありますので、3回の試験の出題確認と次に出るところはどこかを考えます。

平成30年 神奈川県 問10
「カリキュラム・マネジメント」の三つの側面の一部の穴埋め

① 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校教育目標を踏まえた( A )視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。

② 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連の( B )を確立すること。

③ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、( C )の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

(組み合わせ)
   A                B       C
1 子ども中心の     PDCAサイクル    地域等の外部
2 教科等横断的な フィードバックシステム 地域等の外部
3 子ども中心の  フィードバックシステム インターネット上等
4 教科等横断的な PDCAサイクル            地域等の外部
5 教科等横断的な PDCAサイクル            インターネット上等

これは「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について (答申)」(平成 28 年)の23~24ページ(第4章)からの出題でした。

A「教科等横断的な」、B「PDCAサイクル」、C「地域等の外部」があてはまります。
教科等横断的とは、各教科等の教育内容が互いに関係して、つながりを持つということです。
子どもの学びは一つ一つの教科で区切られているのではなく教科が相互に関係している、ということを考慮した教育課程の編成が求められています。
例えば指導内容を他の教科の先生と共有することは「教科等横断的」な実践です。

23ページには「カリキュラム・マネジメント」の説明があります。
「各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する学校教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくことが求められる。これが、いわゆる「カリキュラム・マネジメント」である。」

平成29年 神奈川県 問10
「主体的・対話的で深い学び」の内容として不適切な記述を選ぶ

1 「主体的・対話的で深い学び」の実現とは、特定の指導方法ではなく、人間の生涯にわたって続く「学び」という営みの本質を捉えて授業の工夫・改善を積み重ねていくことである。

2 「アクティブ・ラーニング」は、総合的な学習の時間や特別活動で行う教科横断的な問題解決型の学びのみを指すものとして定義されており、各教科の授業は「アクティブ・ラーニング」の土台となる基礎的な知識を習得するためのものと位置づけられる。

3 「アクティブ・ラーニング」の視点については、深まりを欠くと表面的な活動に陥る失敗事例も報告されていることから、「深い学び」の視点が重要である。

4 子どもたちが学びを深めるための資料の選択や情報収集、教員の教材準備等を支えるために、学校図書館が、公共図書館など地域との協働を図ることも必要である。

5 「主体的・対話的で深い学び」の実現のために、ICTの活用方法についての実践的研究と成果の普及が求められる。

これは「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について (答申)」(平成 28 年)の49~53ページ(第7章)からの出題でした。
難しく感じますが、よく読んでみると、2の「のみ」という言葉もヒントになります。

アクティブ・ラーニングとは、学習者が主体となり、能動的に学べるような授業を行うものです。
総合的な学習の時間や特別活動だけではなく、国語や理科、社会、体育などの各教科においても関わるものであるため、2の「問題解決型の学びのみを指すものとして定義されており~」は誤りとなります。
2の問題文に関する内容は答申の50~51ページにあります。
「「アクティブ・ラーニング」については、総合的な学習の時間における地域課題の解決や、特別活動における学級生活の諸問題の解決など、地域や他者に対して具体的に働きかけたり、対話したりして身近な問題を解決することを指すものと理解されることも見受けられるが、そうした学びだけを指すものではない。
例えば国語や各教科等における言語活動や、社会科において課題を追究し解決する活動、理科において観察・実験を通じて課題を探究する学習、体育における運動課題を解決する学習、美術における表現や鑑賞の活動など、全ての教科等における学習活動に関わるものであり、これまでも充実が図られてきたこうした学習を、更に改善・充実させていくための視点であることに留意が必要である。」


令和元年後期  問8
穴埋め

2030 年とその先の社会の在り方を見据えながら、学校教育を通じて子供たちに育てたい姿を描くとすれば、以下のような在り方が考えられる。

・ 社会的・職業的に自立した人間として、我が国や郷土が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、理想を実現しようとする高い志や意欲を持って、主体的に学びに向かい、必要な情報を判断し、自ら知識を深めて個性や能力を伸ばし、人生を切り拓いていくことができること。

・ ( A )を通じて、自分の考えを根拠とともに伝えるとともに、他者の考えを理解し、自分の考えを広げ深めたり、集団としての考えを発展させたり、他者への思いやりを持って多様な人々と 協働したりしていくことができること。

・ ( B )の中でも、感性を豊かに働かせながら、よりよい人生や社会の在り方を考え、試行錯誤しながら問題を発見・解決し、新たな価値を創造していくとともに、新たな問題の発見・解決につなげていくことができること。

(組み合わせ)
       A                        B
1 発表や主張  変化の激しい社会
2 発表や主張  知識基盤社会
3 対話や議論  変化の激しい社会
4 対話や議論  情報化社会
5 対話や議論  知識基盤社会

これは「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について (答申)」(平成 28 年)の13ページ(第3章)からの出題でした。

A 「対話や議論」、B「変化の激しい社会」が入ります。
文章から判断して、Aは一方的な「発表や主張」ではなく、相手がある「対話や議論」、Bは「~の中でも」につながることから「変化の激しい社会」を選ぶことができます。


今後の出題

このように、これまでの出題は、答申の第1部「学習指導要領等改訂の基本的な方向性」から、「教科等横断的」「アクティブ・ラーニング」「主体的・対話的で深い学び」などのキーワードを取り入れた問題が出題されていました。

そして、まだ出題されていないところで保育士試験と絡んできそうなところはこのあたりです。

■第1部 第5章「何ができるようになるか -育成を目指す資質・能力-」(27~45ページ)
→資質・能力の三つの柱は、「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」とも関わる重要な部分です。

■第1部 第9章 「何が身に付いたか -学習評価の充実」(60~63ページ)
→神奈川県では用語問題の「評価」の代わりに出題されるかもしれません。

■第2部 第1章「各学校段階の教育課程の基本的な枠組」のうち幼児教育(72~83ページ)
→令和2年前期試験より出題範囲が変更され、「教育原理」には「乳幼児期の教育の特性」が追加されました。
これを「幼稚園等の幼児教育」ととらえると、答申のこの部分があてはまります。


このように、保育士試験と関わりそうな内容が多い答申であるため、今年以降もまだまだ出題が続くと考えられます。
「中央教育審議会答申の勉強はまだ何もやっていない」という方は、このあたりを読んでみるのもおすすめです。
資料や答申は対策が難しいところではありますが、ぜひ頑張ってください!