(2023.1.14更新)
令和2年神奈川県保育士試験「社会福祉」問15の解説です。
「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)という保育士試験では見慣れない法律からの出題でした。
個人情報自体は保育士試験にも時々出題があります。
例えば「保育所保育指針」の「保育所は、入所する子ども等の個人情報を適切に取り扱う」という部分や、「児童福祉法」第18条の22「保育士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保育士でなくなつた後においても、同様とする。 」の部分です。

ただ、今回は「個人情報の保護に関する法律」からの出題で、内容も保育士試験の範囲を超えているかな?とも思われるものでしたね。
何をもとに出題されたのかを調べたところ、第31回(平成30年度)「社会福祉士」国家試験の問題117にたどり着きました。
それが今回の神奈川県試験の問15と同じような内容で、問15の選択肢1、3、4がほぼ同じでした。
問題作成にあたって、社会福祉士の過去問を参考にされたのかもしれませんね。

「個人情報の保護に関する法律」からの出題は今後もほとんどないと思われますので、この神奈川県試験の問題を簡単に復習する程度で十分ではないかなと思います。
このブログでも簡単に解説します。




問15 個人情報の保護に関する法律
次の文は、「個人情報の保護に関する法律」に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 「個人情報」には既に亡くなった人の情報も含まれる。
2 本人の人種や信条、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などは「要配慮個人情報」にあたる。
3 特定の個人を識別できない情報であっても、人に関することはすべて個人情報として扱われる。
4 国は、個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせんその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
5 個人情報取扱事業者は、いかなる場合であっても、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。

適切な記述を一つ選ぶ問題です。

最初は解答テクニックです。
例外があることを考えると、3すべて5 いかなる場合であってもは誤りと判断できます。
これで選択肢を1、2、4にしぼることができます。
そして、この問題の答えは2でした。

では、選択肢を一つずつ見ていきます。

1 「個人情報」には既に亡くなった人の情報も含まれる。

→×
故人は保護の対象外です。
第2条の定義では、個人情報とは生存する個人に関する情報としています。
「この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。」


2 本人の人種や信条、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などは「要配慮個人情報」にあたる。

→◯
正しい記述です。
「要配慮個人情報」とは、不当な差別、偏見、不利益が生じないように取り扱いに特に配慮が必要な個人情報のことです。
第2条第3項では「要配慮個人情報」を定義づけしています。
「この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。」


3 特定の個人を識別できない情報であっても、人に関することはすべて個人情報として扱われる。

→×
「人に関することはすべて個人情報」が誤りですね。
 第2条第1項第1号では、個人情報は特定の個人を識別することができるものと定義しています。
「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」


4 国は、個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせんその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

→×
国ではなく、正しくは地方公共団体です。
この苦情処理のあっせん等は第13条に規定されています。
地方公共団体は、個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせんその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」

また、苦情処理のための措置は第9条に規定されています。
「国は、個人情報の取扱いに関し事業者と本人との間に生じた苦情の適切かつ迅速な処理を図るために必要な措置を講ずるものとする。」
 

5 個人情報取扱事業者は、いかなる場合であっても、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。
 
→×
「いかなる場合であっても」が誤りです。
例えば、人の生命に関わる際に本人の同意を得ることが困難な場合は例外です。

これは第17条第2項に規定されています。
「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」

問15の解説は以上です。
次回は問16の地域子育て支援拠点事業の問題解説です。