(2023.1.15更新)
令和2年神奈川県保育士試験「社会福祉」問17の解説です。
「平成30年版厚生労働白書」からの問題解説です。

平成30年版 厚生労働白書」は
【第1部】「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」
【第2部】「現下の政策課題への対応」

という2部構成になっています。
第1部の方は毎年異なるテーマです。

これまで保育士試験ではいろいろな年度の「厚生労働白書」が出題されました。
例えば、令和元年後期試験「社会福祉」問18は「平成27年版 厚生労働白書」から出題されています。


今後の出題も、最新版だけではなく他の年度から出る可能性もあるため、膨大な資料が学習の対象となります。
しかし、「厚生労働白書」に関する問題は一般的な知識やこれまでの学習で培った知識で解けるものも多いです。
問題文に「厚生労働白書」という名称があると難しい問題と思い込みがちですが、選択肢を一つ一つ丁寧に読んで頭の中の知識と結びつけたいですね。




問17 平成30年版厚生労働白書
次の文は、「平成30年版厚生労働白書」で述べられている介護の現状に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 介護保険制度開始当時の2000(平成12)年4月から2018(平成30)年4月までの間に、介護サービス利用者は5倍以上になった。

2 「団塊の世代」が75歳以上に到達する2030(令和12)年の日本では、およそ5.5人に1人が 75 歳以上の高齢者になると推計されている。

3 2017(平成29)年に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により、介護保険の自己負担額は従来の2割から、一律3割へと引き上げられた。

4 2017(平成29)年に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の 一部を改正する法律」により、障害児を含む障害のある方と高齢者が同一の事業所でサービスを受けやすくするために、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスが位置づけられた。

5 2017(平成29)年度における高齢者虐待の対応状況によると、養介護施設従事者等による虐待判断件数が、養護者による虐待判断件数を上回っている。

適切な記述を一つ選ぶ問題です。
5つの選択肢はすべて 第2部 第7章 国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現の392〜396ページからの出題でした。
解答テクニックでしぼるのは難しいでしょうか。
ただ、数値が含まれる文章は誤りの傾向がありますので、数値部分を赤字にしてみます。

1介護サービス利用者は5倍以上になった。
75歳以上に到達する2030(令和12)年の日本では、およそ5.5人に1人が 75 歳以上の高齢者になる
3従来の2割から、一律3割へと引き上げ

まず、これらの選択肢を誤りかな?と疑うことができます。
内容面で考えると、3と5は×であることがはっきりわかるのではないでしょうか。
知識と解答テクニックをあわせてなんとか答えを導き出したいです。
この問題の答え(正しい記述)は4です。
では、選択肢を一つずつ見ていきます。
 
1 介護保険制度開始当時の2000(平成12)年4月から2018(平成30)年4月までの間に、介護サービス利用者は5倍以上になった。

→×
5倍以上ではなく約3.3倍です。 
これは難しいですね。
 資料の392ページからの出題です。
「介護サービスの利用者は在宅サービスを中心に着実に増加し、2000年4月には149万人であったサービス利用者数は、2018(平成30)年4月には474万人と、約3.3倍になっており、介護保険制度は着実に社会に定着してきている。」

2 「団塊の世代」が75歳以上に到達する2030(令和12)年の日本では、およそ5.5人に1人が 75 歳以上の高齢者になると推計されている。

→×
団塊の世代が75歳以上に到達するのは2030年ではなく2025年です。
これも少し難しいところでしょうか。
「地域包括ケアシステム」の学習の中で、団塊の世代が2025年に75歳以上となることを学びますので、その知識と結びつけたいです。

1と同じく、資料の392ページからの出題です。
「高齢化がさらに進展し、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年の日本では、およそ5.5人に1人が75歳以上高齢者となり、認知症の高齢者の割合や、世帯主が高齢者の単独世帯・夫婦のみの世帯の割合が増加していくと推計されている。」

3 2017(平成29)年に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により、介護保険の自己負担額は従来の2割から、一律3割へと引き上げられた。

→×
「従来の2割から、一律3割へ」が誤りです。
3割負担が導入されたのですが、一律3割負担になったわけではありません。
利用者負担は原則1割負担であり、所得によって2割、3割の負担となります。
 介護護保険の利用者負担については過去にも出題されていますので、この選択肢3はわかりやすいですね。
資料の393ページからの出題です。
「介護保険制度の持続可能性の確保の観点から、2割負担者のうち特に所得の高い層への3割負担の導入、介護納付金への総報酬割の導入を盛り込み、2018(平成30)年から順次施行している。」
 

4 2017(平成29)年に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により、障害児を含む障害のある方と高齢者が同一の事業所でサービスを受けやすくするために、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスが位置づけられた。

→〇

こちらが正しい記述です。
共生型サービスとは、同一の事業所で、障害福祉と介護保険の両方のサービスを提供する取り組みです。
例えば障害者が介護保険の被保険者となった際に、これまで利用していた障害福祉サービス事業所で引き続きサービスを受けることができます。

資料の395ページからの出題です。
地域包括ケア強化法では、障害児も含め障害のある方と高齢者が同一の事業所でサービスを受けやすくするために、介護保険と障害福祉両方の制度に新たに共生型サービスを位置づけた。」


5 2017(平成29)年度における高齢者虐待の対応状況によると、養介護施設従事者等による虐待判断件数が、養護者による虐待判断件数を上回っている。

→×
要介護施設従業者等による虐待判断件数よりも、養護者による虐待判断件数の方が多くなっています。
具体的には、要介護施設従業者等による虐待判断件数は510件、養護者による虐待判断件数は17,078件です。
資料の396ページからの出題です。
「2017(平成29)年度における対応状況は、養介護施設従事者等による虐待の相談・通報件数が1,898件、虐待判断件数が510件であり、養護者による虐待の相談・通報件数が30,040件、虐待判断件数が17,078件である。」


問17の解説は以上です。
次回は問18の「成年後見制度の利用の促進に関する法律」からの出題の解説です。