(2022.8.11更新)
今回は令和2年神奈川県試験「教育原理」問8の解説です。
これは倉橋惣三に関する問題でした。
「教育原理」において日本の人物は、特に貝原益軒、倉橋惣三の2人がよく出題されていますので、できるだけ多くの知識を頭に入れて準備しておきたいですね。


問8 人物問題

次の文は、倉橋惣三に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。

1 日本におけるヘルバルト(Herbart, J.F.)の教育思想の紹介者として知られる。
2 日本で最初の幼稚園である東京女子高等師範学校附属幼稚園において主事を務めた。
3 幼稚園は教師が直接子どもに接する前に設備によって保育するところであり、設備の背後に教師の教育目的が隠れていると説いた。
4 「生活を生活で生活へ」という言葉に表現されるように、子どもの自然な生活に幼稚園を順応させていくべきであると主張した。
5 高等女学校の修身教科書を著すなど、女子教育にかかわる活動も行った。

答えは1です。
問7同様に、選択肢1にわかりやすい誤りがありました。

一つずつ見ていきます。

1 日本におけるヘルバルト(Herbart, J.F.)の教育思想の紹介者として知られる。

ヘルバルトではなくフレーベルです。
倉橋惣三はフレーベルの影響を受けた人物です。
また、日本にヘルバルトの教育を紹介したのは谷本富(たにもと とめり)や湯原元一です。
谷本富らはこれまでの試験に出題されていないのですが、念のためヘルバルトのキーワードとして頭に入れておきたいです。

【ヘルバルト】
・「4段階教授法」明瞭・連合・系統・方法
・著書『一般教育学
・教育の目的は倫理学、教育の方法は心理学によって示されるということ
・教育の目的は「道徳的品性の陶冶」であること(道徳知性を与えて立派な人格を形成すること)
・子どもに多方面への興味を喚起すること(自然に任せずに適切にサポートして興味を引き出すこと)
・ヘルバルトの教育思想は、谷本富、湯原元一によって日本に紹介された


2 日本で最初の幼稚園である東京女子高等師範学校附属幼稚園において主事を務めた。

これは平成23年の問7と同様の文章です。
倉橋惣三は東京女子高等師範学校附属幼稚園の主事として24年間務めています。
また、東京女子高等師範学校附属幼稚園の初代監事(園長)は関信三であることも重要で、平成31年神奈川県の問5に出題されています。


3 幼稚園は教師が直接子どもに接する前に設備によって保育するところであり、設備の背後に教師の教育目的が隠れていると説いた。

これは、倉橋惣三の著書『幼稚園保育法真諦』で述べられている内容です。
「先生が自ら直接に子どもに接する前に、設備といふことに大に重きを置く場所であります。その設備の背後には先生が隠れて居る。その設備の中に先生の教育目的は大いに這入つて居るのであります。」

『幼稚園保育法真諦』では、幼稚園生活や誘導保育の具体的な方法が述べられており、平成29年後期の問4平成28年後期の問5にも、本文の一部が出題されています。
どのような部分が出ているかを復習しておきたいです。


4 「生活を生活で生活へ」という言葉に表現されるように、子どもの自然な生活に幼稚園を順応させていくべきであると主張した。

有名な「生活を生活で生活へ」は、子どもが自発的に活動し、生活することを重要としたことから生まれた言葉です。


5 高等女学校の修身教科書を著すなど、女子教育にかかわる活動も行った。

これは少し難しかったですね。
修身とは第二次世界大戦前の日本における教育科目の一つで、現在の道徳にあたります。
調べたところ、こちらの教科書目録の「修身」ページに、著者:倉橋惣三、著書名「女子修身 巻一 高等女学校」というものを見つけました。
これより、倉橋惣三は修身の教科書を著し、女子の教育にも関わっていたことがわかります。


以上、問8の問題解説でした。