(2022.7.17更新)
令和2年後期試験「社会的養護」の問題を一つずつ解説しています。
今回は問3の「里親制度」です。


問3 里親制度
 
次の文は、里親制度に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 「社会的養育の推進に向けて」(平成 31 年1月 厚生労働省)によると、平成 30 年3月末の里親及び小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)への社会的養護を利用する児童全体に占める委託率は約4割である。
B 小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)は、「社会福祉法」に定める第一種社会福祉事業である。
C 都道府県知事は、児童を里親に委託する措置をとった場合には、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事のうち一人を指定して、里親の家庭を訪問して、必要な指導をさせなければならない。

(組み合わせ)
    A B C
1 ○ × ○
2 ○ × ×
3 × ○ ○
4 × ○ ×
5 × × ○

Cは見慣れない難問でしたが、AとBがわかれば答えの5を選ぶことができました。
AとBは重要で今後も出題される可能性がありますので、知識を身につけておく必要があります。

一つずつ見ていきます。

A 「社会的養育の推進に向けて」(平成 31 年1月 厚生労働省)によると、平成 30 年3月末の里親及び小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)への社会的養護を利用する児童全体に占める委託率は約4割である。

→×
簡単に読み替えますと、「社会的養護を必要とする児童全体のうち、里親・ファミリーホームに委託される児童の委託率は約4割である。」という問題文です。
この資料を読んでいなくても過去問学習等で里親等委託率は上昇しているけれど現在4割もなかった、ということを覚えていれば×とわかりますね。

里親等委託率(%)は、 里親・ファミリーホーム委託児童数 ÷ 乳児院入所児+児童養護施設入所児+里親・ファミリーホーム委託児 で求められます。

社会的養育の推進に向けて(平成31年1月)の23ページに、平成29年度末の里親等委託率は19.7%と示されています。
また、最新の社会的養育の推進に向けて(令和4年3月)においては、令和3年度末の里親等委託率は22.8%と発表されています。
つまり里親等委託率は約2割と覚えます。

令和元年後期試験「児童家庭福祉(現 子ども家庭福祉)の問12に関連問題が出題されていますので紹介します。
保護者のない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童のうち、里親及びファミリーホームに委託(里親等委託)されている児童は、約半数(平成 28 年度末現在)であった。
→×
約半数が誤りです。
里親等委託率は約2割でしたね。
社会的養育の推進に向けて(平成31年1月)の23ページによると、平成28年度末の里親等委託率は18.3%です。


B 小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)は、「社会福祉法」に定める第一種社会福祉事業である。

→×
ファミリーホームを経営する事業は「社会福祉法」に定める第二種社会福祉事業です。
入所=第一種社会福祉事業というイメージがありますが、ファミリーホームは第二種であることがポイントでした。
第一種、第二種は基本的に入所・通所の違いで分類できますが、第二種社会福祉事業の中にはこの小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)のような入所施設を経営する事業もあるので注意します。

平成29年神奈川県試験の問8に関連問題が出題されていますので紹介します。
■小規模住居型児童養育事業は、「児童福祉法」に基づく、第二種社会福祉事業である。

ひっかけ問題のようですね。答えは×です。
この文章が「「児童福祉法」に基づく「小規模住居型児童養育事業」は、「社会福祉法」の第二種社会福祉事業である。」となると◯となります。
また、このように小規模住居型児童養育事業という名称のみ出される場合がありますので、小規模住居型児童養育事業=ファミリーホームとすぐにイメージできるようにしっかりと覚えます。


C 都道府県知事は、児童を里親に委託する措置をとった場合には、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事のうち一人を指定して、里親の家庭を訪問して、必要な指導をさせなければならない。

→◯
難問でした!
里親委託の措置を行った際の里親家庭への訪問指導は、どのような専門職が担当するかということです。
過去問や他の国家試験も調べてみましたが出題が見つかりませんでした。
これは「児童福祉法施行令」第30条の規定でした。
都道府県知事は、法第27条第項第3号の規定により児童を里親に委託する措置を採つた場合には、児童福祉司、知的障害者福祉法第9条第5項に規定する知的障害者福祉司又は社会福祉主事のうち一人を指定して、里親の家庭を訪問して、必要な指導をさせなければならない。

また、里親制度運営要綱でもこの第30条に関連した規定があります。
「都道府県知事は、児童を里親に委託する場合、政令第30条の規定に基づき、児童福祉司等の中から1人を指名して、当該里親の家庭を訪問して必要な指導をさせるとともに、必要に応じて、法第27条第1項第2号の規定に基づき、児童委員に、児童福祉司等と協力して、当該里親の指導をさせること。」
まとめますと、里親委託措置をとった際には、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事のうち一人が都道府県知事に指定されて、里親家庭に対して訪問指導をするということです。


以上、問3の解説でした。
次回は問4の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の解説をします。