(2023.1.30更新)
今回は平成31年前期試験の問12を確認し、出題された「ケースの発見」について見ていきます。


問12 ケースの発見
 
次の文は、ケースの発見に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 個々の民生委員・児童委員の役割は、ケースの発見に関して、市町村全域を対象に戸別訪問を行うことである。
B 潜在的なニーズが多くある場合、相談援助者はケースの発見に積極的にならなければならない。
C 専門職同士が連携し、地域の中でネットワークを構築することは、ケースの発見に結びつく。
D ボランティア団体が運営する居場所づくりの拠点において、そこに参加する地域住民の見守りをすることは、ケースの発見に結びつく。
(組み合わせ)
 A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 ○ ○ × ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ○
5 × × ○ ×

「ケースの発見」は令和2年後期(平成28年後期と同じ問題)や平成28年前期などにも出題されています。
よく出題される印象があるため、どのようなものかということを理解しておく必要があります。

「ケースの発見」とは、支援が必要であると認識され、問題や課題を発見した段階です。
相談援助の展開過程の一番最初であり、受理面接(インテーク)の前段階ですね。
 
ケースの発見には、クライアント自身が問題を感じて自分から出向いて相談をしに来る場合と、クライアント自身が援助を求めていない、問題に気づいていない、援助を受けることに消極的という場合があります。
前者のクライエントをボランタリー、後者のクライエントをインボランタリーという名称で区別されています。
そして、後者のように接近困難なクライエント(インボランタリー)に対して、援助者が積極的に出向いていくことをアウトリーチと言います。
このアウトリーチもよく出題されていますね。

一つ一つ見ていきます。

A 個々の民生委員・児童委員の役割は、ケースの発見に関して、市町村全域を対象に戸別訪問を行うことである。

→×
「市町村全域を対象に戸別訪問を行う」という部分が誤りで、このような規定はありません。
「民生委員法」第13条では「民生委員は、その市町村の区域内において、担当の区域又は事項を定めて、その職務を行うものとする。 」としています。
民生委員は戸別訪問をすることもありますが、あくまでも担当の区域内で行います。


B 潜在的なニーズが多くある場合、相談援助者はケースの発見に積極的にならなければならない。

→◯
潜在的なニーズとは、潜在的(外に現れず、内にひそんでいること)にかかえているニーズということで、本人も気付いていない場合があります。
そもそも相談するという意識がないこともありますので、援助者は積極的に出向いていくことでニーズ発見へとつながります。
つまりアウトリーチですね。


C 専門職同士が連携し、地域の中でネットワークを構築することは、ケースの発見に結びつく。

→◯
専門職がつながりを築くことでケースの発見に結びつくことはイメージしやすいですね。
専門職同士が連携し合うことで、地域が抱える課題や個人のニーズを把握できるようになります。


D ボランティア団体が運営する居場所づくりの拠点において、そこに参加する地域住民の見守りをすることは、ケースの発見に結びつく。

→◯
Cと同様にイメージしやすいです。
居場所づくりの拠点において見守りをするということは、異変に気づくなど問題の早期発見につながります。
顔の見える関係であることによって、支援が必要であることに気づき、ケースの発見に結びつきます。

復習として、令和2年後期試験の問11です。
次の文のうち、相談援助の展開過程の中の「ケースの発見」に関する記述として、最も不適切な記述を一つ選びなさい。

1 ケースの発見の契機は、直接の来談、電話での受付、メールによる相談、訪問相談等、様々である。
2 利用者の能力や態度が相談援助の展開過程を左右することはある。 
3 接近困難な利用者が地域にいる場合、援助者は利用者の来訪を待つ姿勢が必要である。 
4 地域の関係機関等と日頃から連携を強め、ケースの早期発見に努めることは必要である。 
5 利用者と援助者との好ましい信頼関係を構築することは重要なテーマである。

答えは3ですね。
利用者の来訪を待つのではなく、積極的に出向いて働きかける必要があります。 
「ケースの発見」は、積極的な働きかけを重視すること、継続的な関わりを展開すること、信頼関係を構築することなどがポイントです。


以上、「ケースの発見」に関する過去問解説でした。