(2023.2.6 更新)
今回は平成29年後期試験「児童家庭福祉」問8を確認します。


問8 少年の保護の状況
 
次の文は、児童虐待の検挙、および少年の保護の状況に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。

1 平成27 年に警察が、「児童虐待の防止等に関する法律」に基づき児童相談所に通告した被害児童数は約37 , 000 人である。
2 児童虐待事件における検挙件数は平成11 年以降毎年増加してきた。
3 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」における福祉犯の被害少年は毎年約1 , 000 人を超えている。
4 平成27 年に警察から児童相談所に通告された触法少年と比較し、送致された触法少年は約200 名と非常に少なくなっている。
5 罪を犯した14 歳以上の少年は児童相談所へ送致・通告される。

全体的に難しいですが、冷静に考えると、選択肢5の「児童相談所」の部分に疑問を持つことができます。
選択肢4にも「児童相談所への送致・通告」が出てきているので混乱しますが、これに引っ張られずに答えを選びたいですね。

選択肢5について、罪を犯した14歳以上の少年(=犯罪少年)は、家庭裁判所へ送致・通告されます。
犯罪少年は児童相談所を通しません
そして家庭裁判所は、必要に応じて少年を処分します。
処分の具体的な内容は、「少年法」関連②の記事で紹介した少年事件 処分の種類(裁判所ホームページ)で確認できます。

対して、14歳未満の触法少年は、少年の行為や環境等によって警察から児童相談所へ送致・通告されます。
そして児童相談所にて、少年が家庭裁判所での審判が必要とされた場合は家庭裁判所へ送致されます。
触法少年の場合は直接家庭裁判所に送致されるのではなく、まずは児童相談所に送致されることがポイントです。

一つずつ見ていきます。


1 平成27 年に警察が、「児童虐待の防止等に関する法律」に基づき児童相談所に通告した被害児童数は約37 , 000 人である。


→◯
平成28年版 警察白書第2章の97ページで確認できます。
児童虐待又はその疑いがあるとして警察から児童相談所に通告した児童数は年々増加し、 平成27年は37,020人でした。


2 児童虐待事件における検挙件数は平成11 年以降毎年増加してきた。

→◯
1と同じく「平成28年版 警察白書第2章の97ページで確認できます。
平成27年中の検挙件数は785件、検挙人員は811人と、統計をとり始めた11年以降、過去最多で、年々増加しています。


3 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」における福祉犯の被害少年は毎年約1 , 000 人を超えている。

→◯
福祉犯とは、少年の心身に有害な影響を与え、少年の福祉を害する犯罪です。(児童買春など)
平成28年版 警察白書第2章の99ページで確認できます。
平成23年以降減少していますが、平成27年中の被害少年数は6,235人と1,000人を超えています。


4 平成27 年に警察から児童相談所に通告された触法少年と比較し、送致された触法少年は約200 名と非常に少なくなっている。 

→◯
平成27年中の調査結果がもう出てこなかったので、令和元年中の結果をもとに解説します。
令和元年中における 少年の補導及び保護の概況の103ページで確認できます。
令和元年中において警察から児童相談所に通告された触法少年は3,027人、児童相談所に送致された触法少年は129人でした。

まず、警察は触法少年を発見した時に、その触法少年が要保護児童と認められる際は児童相談所に通告する義務があります。(「児童福祉法」第25条第1項)
さらにその触法が一定の刑罰法令に触れるものである時や、家庭裁判所の審判に付することが適当であるとされる場合に、警察は児童相談所長に送致しなければなりません。(「少年法」第6条の6の規定)
つまり、重い犯罪行為であった場合は送致となりますから、問題文のように通告された人数と比較すると送致された人数の方が少なくなりますね。


5 罪を犯した14 歳以上の少年は児童相談所へ送致・通告される。

→×
先に解説したとおりです。
犯罪少年の送致・通告先は児童相談所ではなく家庭裁判所です。



次回に続きます。