(2023.2.7更新)
「少年法」関連の問題を続けて紹介しています。
今回は平成28年前期「児童家庭福祉」問12を確認します。


問12 少年非行等の現状と法制度
 
次の文は、少年非行等の現状と法制度についての記述である。適切な記述を○、 不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 「児童養護施設入所児童等調査結果(平成 25 年2月1日現在)」によると、児童自立支援施設に入所している児童の約6割は児童虐待を受けた経験をもつ。
B 児童自立支援施設は入所施設であり、入所した児童を対象として指導を行う施設であるため、保護者の下から通わせることは行っていない。
C 罪を犯した満 14 歳以上の児童を発見した者は、家庭裁判所に通告しなければならない。
D 「少年法」によると、家庭裁判所が審判を行う必要がある時は、決定をもって、家庭裁判所調査官の観護に付すか、少年鑑別所に送致することができる。

(組み合わせ)  
    A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ○
4 × × ○ ○
5 × × ○ ×

BとCはこれまで紹介した過去問にもありましたね。

一つずつ見ていきます。

A 「児童養護施設入所児童等調査結果(平成 25 年2月1日現在)」によると、児童自立支援施設に入所している児童の約6割は児童虐待を受けた経験をもつ。

→◯
平成25年の調査結果は古いので、児童養護施設入所児童等調査結果(平成 30 年 2 月 1 日現在)の数値を確認します。
13ページ「児童の被虐待経験の有無」のうち、児童自立支援施設に入所する児童の「虐待経験あり」の割合は64.5%(前回調査58.5%)です。
児童自立支援施設と児童養護施設は虐待経験ありが約6割です。


B 児童自立支援施設は入所施設であり、入所した児童を対象として指導を行う施設であるため、保護者の下から通わせることは行っていない。

→×
前回解説した平成28年後期にも出題がありました。
児童自立支援施設は、入所と通所で利用することができます。
児童自立支援施設の定義はしっかり覚えたいですね。

「児童福祉法」第44条「児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。」


C 罪を犯した満 14 歳以上の児童を発見した者は、家庭裁判所に通告しなければならない。

→◯
平成29年後期にも出題されました。
罪を犯した14歳以上の少年(=犯罪少年)は、家庭裁判所へ送致・通告されます。
犯罪少年は児童相談所を通しません


D 「少年法」によると、家庭裁判所が審判を行う必要がある時は、決定をもって、家庭裁判所調査官の観護に付すか、少年鑑別所に送致することができる。

→◯
これは「少年法」第17条の規定です。
「家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。 
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。 」

つまり裁判所が調査や審判を行うために、少年の逃亡を防いだり、緊急保護の必要があったりする場合などに、①家庭裁判所調査官の観護 や ②少年鑑別所に送致 を行います。
これを観護措置といいます。 
実際には①の措置はまれで、観護措置=②の措置を指します。

観護措置の解説として、少年審判とその手続(裁判所ホームページ)より引用します。

【観護措置とは】
「観護措置とは,主に家庭裁判所に送致された少年の審判を円滑に進めたり,少年の処分を適切に決めるための検査を行ったりすることなどが必要な場合に,少年を少年鑑別所に送致し,一定期間そこに収容することをいいます。
法律上は「審判を行うため必要があるとき」とされており,具体的な事案に応じて裁判官が決めます。少年鑑別所で少年の心身の状況等の検査をする必要がある場合のほか,一般的には,少年が調査,審判などに出頭しないおそれのある場合や暴走族等の悪影響から保護する必要がある場合などに観護措置がとられることが多いようです。」


次回に続きます。