(2022.7.21更新)
今回は神奈川県平成29年試験「社会的養護」問5を解説します。
問題はこちら


問5 社会的養護の基本的な考え方
 
次の文は、現在の社会的養護の基本的な考え方に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 社会的養護は、一般の子育て支援施策と一連の連続性を持つものであり、密接な連携が必要である。
B 社会的養護は、「子どもの最善の利益」という考え方のもとに、子どもが心身ともに健康に育つ基本的な権利を保障する。
C 社会的養護は、不適切な養育をする保護者から子どもを分離することを原則とし、保護者への懲戒を含む指導・教育的支援を行う。
D 社会的養護は、子どもに対して未来の人生を作り出す基礎となることを意図して、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指し、このことが自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していく。

(組み合わせ)  
   A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ○
4 × ○ ○ ○
5 × × × ○

問題を読んでいくと、Cの「子どもを分離することを原則とし」「保護者への懲戒を含む指導」という部分がひっかかりますね。
それ以外は素直に読むと○ですので、答えを選びやすいのではないでしょうか。

この問5は平成27年「社会的養護」の問1とほとんど同じ問題で、A、B、Cが全く同じ文章でした。
A、B、Cは、先日解説した問2にも出題されていた「社会的養護の課題と将来像」(平成 23 年7月)から出題されていました。
※「社会的養護の課題と将来像」は全面的に見直されて、現在は「新しい社会的養育ビジョン」と変わっています。
また、Dについては、おなじみの「児童養護施設運営指針」からの出題でした。

では1つずつ確認します。

A 社会的養護は、一般の子育て支援施策と一連の連続性を持つものであり、密接な連携が必要である。

→○
正しい記述です。
「社会的養護の課題と将来像」
の3ページから出題されていましたので引用します。
「すべての子どもと家庭のための子育て支援施策を充実させていく中で、社会的養護の対象となる子どもにこそ、特に支援の充実が必要である。また、社会的養護と一般の子育て支援施策は、一連の連続性を持つものであり、密接な連携が必要である
。」


B 社会的養護は、「子どもの最善の利益」という考え方のもとに、子どもが心身ともに健康に育つ基本的な権利を保障する。

→○
正しい記述です。
「社会的養護の課題と将来像」
の3ページから出題されていましたので引用します。
社会的養護は、「子どもの最善の利益のために」という考え方
と、「社会全体で子どもを育む」という考え方を理念とし、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、社会の公的責任で保護養育し、子どもが心身ともに健康に育つ基本的な権利を保障する。」

C 社会的養護は、不適切な養育をする保護者から子どもを分離することを原則とし、保護者への懲戒を含む指導・教育的支援を行う。

→×
「子どもを分離することが原則」「保護者への懲戒を含む指導」は誤りですね。
まず、社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。
保護者から子どもを分離することが原則でもないですし、保護者に対して懲戒を含む指導を行うこともありません。
社会的養護では、親子関係の再構築のために、保護者の養育力の向上を目的とするなど家族に対する支援を行っています。
「社会的養護の課題と将来像」の28ページでは具体的な支援が述べられています。
例えば保護者に対する虐待防止の援助プラグラム、スキルの指導、個別対応などです。
また、施設に入所した場合も親との面会や宿泊、一時帰宅などの支援を行い、家庭復帰に向けた取り組みがなされています。

D 社会的養護は、子どもに対して未来の人生を作り出す基礎となることを意図して、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指し、このことが自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していく。

→○
正しい記述です。
社会的養護の原理ですね。
「児童養護施設運営指針」の2ページから出題されていますので、引用します。
「子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。」


次回は問6を確認します。