(2022.7.22更新)
今回は神奈川県平成29年試験「社会的養護」問7を解説します。
問題はこちら


問7 要保護児童
 
次の文は、要保護児童に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。

1 「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」(厚生労働省)によると、里親・ファミリーホームに委託される児童の数は、過去5年増加している。
2 「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」(厚生労働省)によると、児童養護施設に入所する児童は、過去5年減少傾向にある。
3 「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」(厚生労働省)によると、乳児院に入所する児童の数は、過去十数年において、約1割増となっている。
4 「児童養護施設入所児童等調査(平成25年2月1日現在)」(厚生労働省)によると、児童養護施設に入所している児童の平均在所期間は、里親委託されている児童の平均委託期間より長い。
5 要保護児童とは、「児童福祉法」において、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童と定義されており、非行の問題を抱える児童は含まない。

1~3の「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」については、「社会的養育の推進に向けて」と改称され、数値も更新されています。
令和4年神奈川県、令和4年後期、令和5年前期は、「社会的養育の推進に向けて(令和4年3月)」から出題されます。
4については、現在は「児童養護施設入所児童等調査結果」(平成30年2月1日現在)が新しい資料となっていますので、こちらの資料で数値を確認します。

では1つずつ見ていきます。

1 「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」(厚生労働省)によると、里親・ファミリーホームに委託される児童の数は、過去5年増加している。

→〇
正しい記述です。
社会的養育の推進に向けて(令和4年3月)
3ページを見ますと、児童数を示したグラフが右上がりに増えています。
家庭養育優先原則に基づき、家庭での養育が困難又は適当でない場合は、養育者の家庭に子どもを迎え入れて養育を行う里親やファミ リーホーム(家庭養護)を優先していますから、里親・ファミリーホームに委託されている児童は増えています。


2 「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」(厚生労働省)によると、児童養護施設に入所する児童は、過去5年減少傾向にある。

→〇
正しい記述です。
問題作成時点も現在も変わらず減少傾向です。
1の解説と同じページに、児童養護施設に入所する児童数がグラフで示されています。
過去10年で、児童養護施設の入所児童数は約2割減となっています。

3 「社会的養護の推進に向けて(平成29年3月)」(厚生労働省)によると、乳児院に入所する児童の数は、過去十数年において、約1割増となっている。

→×(問題作成時は〇)
1、2の解説と同じページに、乳児院に入所する児童数がグラフで示されています。
平成29年神奈川県試験の際は〇でしたが、現在は過去10年で約2割減となっています
児童養護施設と同様に、乳児院も児童数が減少していることをおさえます。


4 「児童養護施設入所児童等調査(平成25年2月1日現在)」(厚生労働省)によると、児童養護施設に入所している児童の平均在所期間は、里親委託されている児童の平均委託期間より長い。

→〇
正しい記述です。
里親委託児童よりも児童養護施設に入所している児童の平均在所期間の方が長いです。
児童養護施設入所児童等調査結果」(平成30年2月1日現在)の4ページでは、児童の委託(在所)期間が示されています。
児童養護施設における平均在所期間は5.2年 (前回4.9年) 里親における平均委託期間は4.5年(前回3.9年)です。


5 要保護児童とは、「児童福祉法」において、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童と定義されており、非行の問題を抱える児童は含まない。

→×
「児童福祉法」第6条の3において要保護児童とは、「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童」と定義されています。
ここに「非行の問題を抱える児童は含まない」という内容はありません。
厚生労働省の要保護児童対策地域協議会の説明でも、対象児童は「地域協議会の対象児童は、児福法第6条の3に規定する「要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)」であり、虐待を受けた子どもに限られず、非行児童なども含まれる。 」としています。

問題の1から3について、里親委託が増えて児童養護施設や乳児院の入所児童数が減少しているのは、里親委託を優先して進められていることや、平成28年「児童福祉法」改正において家庭養育優先の原則が規定されたことが理由です。
このように里親委託への取り組みや「児童福祉法」改正を行った結果、施設養護の児童数が減少し、里親やファミリーホームの委託児童数が増えたということになります。
数値の増加や減少を学ぶ際は、「なぜそのようになっているか」という理由や背景まで理解していると、記憶にも残りやすいですね。


次回は問8を確認します。