令和3年前期試験「社会福祉」の問題を一つ一つ解説しています。
今回は問2の「社会保障制度に関する勧告」についてです。


問2 社会保障制度に関する勧告
 
次の文は、1950(昭和25)年の社会保障制度審議会(現、社会保障審議会)の勧告に基づいて、日本における社会保障と社会福祉の位置づけを説明したものである。( A )~( C )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

社会保障制度とは、疾病や障害、老齢や失業などの困窮の原因に対し、( A )または公の負担で経済保障を行う。また、生活困窮に陥った者に対しては( B )によって最低限度の生活を保障する。加えて、( C )によって子どもへの保育や障害者等への福祉サービスを提供し、公衆衛生とともに、すべての国民が文化的社会の成員としての生活を営むことができるようにする。

(組み合わせ)
      A                     B                  C
1 保険的方法   国家扶助    社会福祉
2 保険的方法   地域保健    社会福祉
3 保険的方法   社会福祉    地域保健
4  社会福祉   保険的方法   地域保健
5  社会福祉    国家扶助   保険的方法

社会保障制度審議会が行った「社会保障制度に関する勧告」についての問題です。
この勧告は50年勧告や1950年勧告と呼ばれることもあります。
厚生労働白書でもよく述べられており、平成29年版厚生労働白書では4〜5ページに記載があります。

「社会保障制度に関する勧告」とは何かというと、日本国憲法第25条に用いられた「社会保障」について、具体的に定義を示したものです。
日本国憲法 第25条
第1項  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項  国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

このように日本国憲法第25条に「社会保障」が明文化されました。
さらに「1950年勧告」によって「社会保障」の明確な定義が示されました。

疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もって全ての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」(参照 厚生労働省資料1ページ
※赤字が今回試験で出題された部分です。

つまり「社会保障制度」とは、社会保険、公的扶助(生活保護など)、社会福祉、公衆衛生の4部門であることをおさえておきたいですね。


では問2の穴の考え方です。

( A ) 「〜又は直接公の負担において経済保障の途を講じ」という言葉が続いています。
文章から社会保障制度の経済的保障を聞いていることだと理解できますので、それは社会保険(保険者が保険料を納付して給付を受けられる制度)と社会扶助(公費負担)によるものと考えます。
よって( A )には「険的方法」が入ります。


( B )「生活困窮に陥った者に対しては( B )によって最低限度の生活を保障する」という文章から、生活困窮した場合、だれが救済措置をとるのかと考えます。
生活保護制度などは国家的な救済処置が行われますので、( B )には「国家扶助」が入ります。

( C )「〜によって子どもへの保育や障害者等への福祉サービスを提供」ということから、児童福祉や障害者福祉といった社会福祉の給付を述べていることがわかります。
よって( C )には「社会福祉」が入ります。


では最後に、「1950年勧告」に関する過去問を紹介します。


平成31年前期「社会福祉」問9
 
1950(昭和25)年の「社会保障制度に関する勧告」が出されて以降、わが国の社会保険制度は大きく発展した。


答えは〇です。
この勧告が出されてから、日本の社会保険制度は大きく発展していきます。
勧告が出された当時は、生活保護が社会保障の大きな柱だったのですが、1961(昭和36)年には全ての国民が公的な医療保険制度や年金制度に加入する「国民皆保険・皆年金」が実現し、その後も高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉に関する制度が整備されていきます。


次は問3の「社会福祉体制」の解説です。