令和3年前期試験「社会福祉」の問題を一つ一つ解説しています。
今回は問14の「相談援助の方法・技術」についてです。


問14  相談援助の方法・技術
 
次の文のうち、相談援助の方法・技術に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A アウトリーチとは、支援の必要な状況であるにもかかわらず、それを認識していない、あるいは支援につながっていない利用者に対して、支援者から援助につなげるための働きかけを行うことである。
B ケアカンファレンスとは、支援に関する情報を共有し、組織的な支援計画を作成するための会議への参画及び会議を運営することである。
C ソーシャルアクションとは、利用者の支援に必要となる公的・私的な社会資源の分野・業種等の横断的な協働関係を形成することである。
D ケアマネジメントとは、支援の開始にあたり、支援計画に基づいて、利用者が公的な社会資源やボランティア等の民間サービスを統合的に利用できるように仲介していくことである。
(組み合わせ)
    A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ○
4 × ○ ○ ○
5 × × ○ ○

それぞれの用語についての説明が合っているかどうかが問われました。
繰り返し出題されている用語がある一方で、ケアカンファレンスは見慣れないものでしたね。

A アウトリーチ 平成29年後期、平成31年前期(社会的養護)、平成25年 出題あり
B ケアカンファレンス 調べましたが最近の過去問にありませんでした。
C ソーシャルアクション 平成31年前期(社会的養護)、平成29年前期 出題あり
D ケアマネジメント 令和元年後期、平成28年前期 出題あり

一つずつ見ていきます。


A アウトリーチとは、支援の必要な状況であるにもかかわらず、それを認識していない、あるいは支援につながっていない利用者に対して、支援者から援助につなげるための働きかけを行うことである。

→〇
正しい内容です。
アウトリーチは「ケースの発見」に関する問題でよく出題されていますね。

まず、相談援助の展開過程のうち、受理面接(インテーク)の前段階として 「ケースの発見」があります。
これは支援が必要であると認識され、問題や課題を発見した段階です。
ケースの発見には、クライアント自身が問題を感じて自分から出向いて相談をしに来る場合と、クライアント自身が援助を求めていない、問題に気づいていない、援助を受けることに消極的という場合があります。
前者のクライエントをボランタリー、後者のクライエントをインボランタリーという名称で区別されています。
後者のように接近困難なクライエント(インボランタリー)に対して、援助者が積極的に出向いていくことをアウトリーチと言います。



B ケアカンファレンスとは、支援に関する情報を共有し、組織的な支援計画を作成するための会議への参画及び会議を運営することである。

→〇
正しい内容です。
「カンファレンス」は会議という意味があります。
そしてケアカンファレンスは福祉や医療の分野で使われる用語で、支援計画を作成するためにクライエント本人や家族、専門職が集まり、支援に関する情報共有や問題解決のために開かれる会議をいいます。


C ソーシャルアクションとは、利用者の支援に必要となる公的・私的な社会資源の分野・業種等の横断的な協働関係を形成することである。

→×
ソーシャルアクションとは社会福祉活動法ともいい、問題解決のために行政機関に対してサービスの新設や改善を直接求めるという方法です。
クライエントに適したサービスがない場合、社会資源を創出するなどの行動を起こしたり、社会にはたらきかける活動をしたりすることでクライエントの問題を解決していくことです。

Cの説明はネットワーク(ネットワーキング)の説明に近いでしょうか?


D ケアマネジメントとは、支援の開始にあたり、支援計画に基づいて、利用者が公的な社会資源やボランティア等の民間サービスを統合的に利用できるように仲介していくことである。

→〇
正しい内容です。
ケアマネジメントとは、クライエントのニーズに対して、必要な福祉サービスを結び実施することです。

厚生労働省では以下のように定義付けています。
「利用者が地域社会による見守りや支援を受けながら、地域での望ましい生活の維持継続を阻害するさまざまな複合的な生活課題(ニーズ)に対して、生活の目標を明らかにし、課題解決に至る道筋と方向を明らかにして、地域社会にある資源の活用・改善・開発をとおして、総合的かつ効率的に継続して利用者のニーズに基づく課題解決を図っていくプロセスと、それを支えるシステム」


この中で特に出題されやすいアウトリーチについて、社会福祉士の過去問を紹介します


関連過去問
 
アウトリーチに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 . 支援を求めて相談室を訪れるクライエントを対象とする。
2 . 相談援助過程の援助開始時だけではなく、援助が始まった後も有効である。
3 . 慈善組織協会(COS)の友愛訪問員活動に起源を持つ。
4 . 所属機関のバックアップを必要としない対応方法である。
5 . 地域住民とのつながりの構築は不要である。 
適切な記述は2と3ですね。
選択肢2について、アウトリーチとは支援の入り口につながるものだけではなく、支援の途中でも(例えばクライエントの自宅を訪問するなど)積極的にクライエントのニーズを把握していくことをいいます。


次は問15の「グループワークの過程」の解説です。