令和3年前期試験「社会福祉」の問題を一つ一つ解説しています。
今回は問16の「福祉サービス第三者評価事業」についてです。


問16 福祉サービス第三者評価事業
 
次の文のうち、福祉サービス第三者評価事業に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 福祉サービス第三者評価事業は、質の高い福祉サービスを事業者が提供するため、すべての福祉サービスを提供する事業所において義務として取り組む事業である。
B 厚生労働省が策定したガイドラインに基づき、都道府県が第三者評価基準を策定している。
C 福祉サービス第三者評価事業の目的等については、「社会福祉法」によって定められている。
D 福祉サービス第三者評価事業の評価結果は、福祉サービスを提供する事業所の同意を得て、市町村により公表されている。

(組み合わせ)
   A B C D
1 ○ ○ × ×
2 ○ × × ○
3 × ○ × ○
4 × × ○ ○
5 × × ○ ×

出題の定番である第三者評価の問題でしたが、これは少し難しかったですね。
 
一つずつ見ていきます。


A 福祉サービス第三者評価事業は、質の高い福祉サービスを事業者が提供するため、すべての福祉サービスを提供する事業所において義務として取り組む事業である。

→×
すべての福祉サービスを提供する事業所において義務が誤りですね。

第三者評価は「社会福祉法」第78条第1項に規定されています。
「社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。 」(努力義務)

またすべての事業所が努力義務ではなく、児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設は児童福祉施設の設備及び運営に関する基準により第三者評価の受審及びその結果の公表が義務づけられていることもポイントですね。
 

B 厚生労働省が策定したガイドラインに基づき、都道府県が第三者評価基準を策定している。 

→×
文章前半は、厚生労働省ではなく全国社会福祉協議会です。
第三者評価基準ガイドラインの策定を行うのは全国社会福祉協議会ですね。

文章後半は、都道府県ではなく都道府県推進組織です。
第三者評価基準は、第三者評価基準ガイドラインにもとづき都道府県推進組織が策定を行います。

以下、ホームページより引用します。
全社協は、福祉サービス第三者評価事業の推進及び都道府県における福祉サービス第三者評価事業の推進組織(以下「都道府県推進組織」という。)に対する支援を行う観点から、以下の業務を行うこと。
①「都道府県推進組織に関するガイドライン」の策定・更新に関すること
②「福祉サービス第三者評価機関認証ガイドライン」の策定・更新に関すること
「福祉サービス第三者評価基準ガイドライン」の策定・更新に関すること
④「福祉サービス第三者評価結果の公表ガイドライン」の策定・更新に関すること
⑤「評価調査者養成研修等モデルカリキュラム」の作成・更新その他評価調査者養成研修に関すること
⑥福祉サービス第三者評価事業の普及・啓発に関すること
⑦その他福祉サービス第三者評価事業の推進に関すること」

全国社会福祉協議会のホームページに、この評価基準ガイドラインが掲載されています。


C 福祉サービス第三者評価事業の目的等については、「社会福祉法」によって定められている。

→微妙なところですが◯でしょうか。
福祉サービス第三者評価事業に関する指針において、「福祉サービス第三者評価事業は、個々の事業者が事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけることを目的とするものであること。なお、福祉サービス第三者評価を受けた結果が公表されることにより、結果として利用者の適切なサービス選択に資するための情報となること。」としています。

つまり、第三者評価事業の目的は福祉サービス第三者評価事業に関する指針に定められており、
・個々の事業者が具体的な問題点を把握してサービスの質の向上に結びつけること
・利用者が適切にサービス選択を行うための情報となること
という2つがあります。

「社会福祉法」第78条第1項は、経営者の責務及び福祉サービス第三者評価事業の位置づけであり、事業の目的ではないので、これが「目的等」として◯であるかどうかは微妙なところではあります。



D 福祉サービス第三者評価事業の評価結果は、福祉サービスを提供する事業所の同意を得て、市町村により公表されている。

→×
公表を行うのは市町村ではなく第三者評機関都道府県推進組織です。
都道府県推進組織に関するガイドライン(3ページ目)に定められています。
結果の公表は、利用者へのアピール(どういう部分で努力しているかということ)になりますので事業所のメリットになりますが、公表は同意の上ということです。
ただし、Aにも書きましたように、児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設については結果の公表は義務です。


最後に、第三者評価に関した過去問を紹介します。(平成26年


平成26年「社会福祉」問16
 
次の文は、福祉サービスの第三者評価事業に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 児童福祉分野の福祉サービス第三者評価事業では、民生委員・児童委員の評価を組み入れることが特別に定められている。
B 福祉サービス第三者評価事業は、サービス提供者が事業運営の具体的な問題点を把握し、サービスの質の向上に結び付けるとともに、利用者が適切にサービス選択を行うための情報提供も目的としている。
C 保育所の第三者評価事業は、全国社会福祉協議会が設置した福祉サービスの質の向上推進委員会(以前の評価基準等委員会)が策定した保育所版福祉サービス第三者評価基準ガイドラインに基づき都道府県や第三者評価機関で工夫を加えながら実施している。
D「社会福祉法」では、社会福祉事業経営者に対して、自ら提供するサービスの評価を行うよう促すと同時に、国に対しても、公正かつ適切なサービス評価を実施するように要請している。
(組み合わせ)略


A × 民生委員・児童委員の評価を組み入れるような規定はありません。
B ◯ 福祉サービス第三者評価事業に関する指針に示された目的です。
C ◯  ここは以前解説をしましたのでブログ記事をご確認ください。
D ◯ 「社会福祉法」第78条第2項の規定です。


次は問17の「福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)」の解説です。