(2022.7.23更新)
神奈川県令和2年試験「社会的養護」の解説をしています。
今回は問9を解説します。
問題はこちら


問9 事例
 
次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。

【事例】 継父から強い身体的虐待・心理的虐待を受けてきたN君(小3、男児)が児童養護施設に入所した。入所して1か月ほどたったある日、リビングルームで一人で絵本を読んでいたN君が、職員とMさん(小1、女児)が庭でシャボン玉遊びをしているのを見つけ、絵本をリビングルームのテーブルに出したまま、僕もやりたいと外に出てこようとした。それを見て職員がN君に対して「N君、絵本を元の場所に片付けようね。」と伝えると、N君は職員に対して「お前なんか大嫌いだ!死ね!消えろ!」と罵り、絵本を職員に投げつけ、 自室に閉じこもって泣いている。

【設問】 N君への職員の対応として適切な記述を〇、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A N君の自室に行き、「私はN君のこと、嫌いじゃないよ」と伝える。
B 「小3にもなって、本を投げつけるN君だから、私も嫌い」と伝える。
C N君が謝罪するまで、絶対N君に声かけはしない。
D 他の職員と連携しながら、N君の心身を傷つけないように対応する。

(組み合わせ)
  ABCD
1○××○
2○×××
3×○××
4××○○
5××○×

全国試験でも神奈川県試験でも事例問題は定番の出題となっていますね。
社会的養護の科目では、児童養護施設や乳児院などの社会的養護関係施設における一場面が出題される傾向があります。
ある程度の知識や常識で選択肢を消去することができるのですが、他のものと大きく違うもの(仲間外れ)を見つけていきましょう。
例えば、この問9でしたら、A、B、Dはアクションを起こしていますが、Cのみ「声かけはしない」という対応ですので、これは仲間外れと考えて、まずCを誤りと判断することができます。
この問題は、児童養護施設運営指針10ページの「養育・支援の基本」、14ページ「行動上の問題及び問題状況への対応」と照らし合わせて考えることができます。
(1) 養育・支援の基本(10ページ)
①子どもの存在そのものを認め、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止め、子どもを理解する。
・職員は高い専門性に基づく深い洞察力をもって子どもを理解し、受容的・支持的な態度で寄り添い、子どもの課題把握に努める。
・被虐待体験や分離体験など子どもが抱える苦痛やいかりを理解する。
・子どもが表出する感情や言動のみを取り上げるのではなく、理由や背景を理解する。
(10)行動上の問題及び問題状況への対応(14ページ)
①子どもが暴力、不適応行動などを行った場合に、行動上の問題及び問題状況に適切に対応する。
・子どもの特性等あらかじめ職員間で情報の共有化し、連携して対応する。
・問題行動をとる子どもへの対応だけでなく、施設の日々の生活の持続的安定の維持が子どもの問題行動の軽減に寄与することから、損なわれた秩序の回復、一緒に暮らす成員間の関係修復、生活環境の立て直しなど子どもの問題行動によって引き起こされる問題状況への対応を行う。
・子どもの行動上の問題に対しては、子どもが訴えたいことを受けとめるとともに、多角的に検証して原因を分析した上で、適切に対応する。また、記録にとどめ、以後の対応に役立てる。
・パニックなどで自傷や他害の危険度の高い場合に、タイムアウトを行うなどして子どもの心身を傷つけずに対応するとともに、周囲の子どもの安全を守る。

これを読みますと、BとCは誤りであるとわかります。

また、児童養護施設運営ハンドブックは47ページのエピソードは事例と似た内容です。
エピソードの説明として、「至極当然の注意であっても、素直に受けとめられず、反抗的な態度をとることも多々あります。「僕のことが嫌いだから僕ばっかり怒るんだ」と思ったのかもし れません。実は、こんなところに施設での養育・支援の難しさがあります。信頼関係を築いていくために子どもが基本的信頼感を獲得していくのに最も重要なことは、自分を無条件に愛し、受け入れてくれる大人との間に愛着関係を形成することです。」と記載されています。
これを読んでも、BとCは誤りであるとわかりますね。

A N君の自室に行き、「私はN君のこと、嫌いじゃないよ」と伝える。

→〇
正しい対応です。
受容的、支持的な態度で寄り添っていきます。

B 「小3にもなって、本を投げつけるN君だから、私も嫌い」と伝える。

→×
N君が表した言葉のみを取り上げるのではなく、訴えたいことを受け止め、理由を考えなければなりません。

C N君が謝罪するまで、絶対N君に声かけはしない。


→×
N君が突き放されていると感じる可能性があり、安心感を得られなくなってしまいます。

D 他の職員と連携しながら、N君の心身を傷つけないように対応する。

→〇
正しい対応です。


次回は問10を確認します。