神奈川県平成31年「社会福祉」の解説をしています。
今回は問11です。
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問11 アプローチ
次の文は、相談援助技術の各種アプローチに関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 心理社会的アプローチとは、いわゆる学習理論を基盤とし、リスポンデント条件づけやオペラント条件づけ、認知行動療法による知見が導入されている。
2 課題中心アプローチとは、長期的な目標の達成を中心課題とするアプローチである。
3 危機介入アプローチは、ソーシャルワーカーはジェネラリストでなければならないとする考え方に立つ。
4 行動変容アプローチは、「状況のなかの人間」という視点を中心にすえたアプローチである。
5 心理社会的アプローチと機能的アプローチを折衷して構築されたのが、問題解決アプローチである。

◯◯アプローチの名称とその説明文をあわせた問題です。
相談援助を行うにあたり、クライエントが問題を解決できるように働きかける方法をアプローチと呼び、このアプローチにはさまざまな種類があります。

全国試験では令和2年後期に出題されており、それを受けて20問のミニテストも作っております。
知識の確認にお試しください。


では、一つずつ見ていきます。


1 心理社会的アプローチとは、いわゆる学習理論を基盤とし、リスポンデント条件づけやオペラント条件づけ、認知行動療法による知見が導入されている。

→×
説明文は行動変容アプローチについてです。

心理社会的アプローチとは、個人と社会のつながりを示す「状況(環境)の中の人」という概念を中心として、クライエントの環境面と心理面の関連性から働きかけていくアプローチです。

基盤には治療モデル(医学モデル)があります。
治療モデルとはクライエントを患者と見立てて、病気を治療することに焦点を当てて、どのような問題が起こっているか、原因は何かと追及し、問題解決をしていくことです。
 
この治療モデルをもととして、調査→診断→治療という援助過程をとる方法が診断主義です。
この診断主義の流れをくみ、ホリスが構築した理論が心理社会的アプローチとなります。

よって、心理社会的アプローチの説明文が出題される場合は、考え方のもととなる「治療モデル」や「診断主義」、提唱した人物である「ホリス」が問題文に含まれる場合があります。


2 課題中心アプローチとは、長期的な目標の達成を中心課題とするアプローチである。 

→×
長期的な目標の達成ではなく短期的な目標の達成です。
課題中心アプローチとは、短期間(決められた期間)での問題解決を目指して、計画的に短期間の援助を行う方法です。
原因を追求したり過去の出来事を振り返ったりすることはせず、「今ここで(here and now)」に焦点を当てます。
クライエントが今困っていることや自分が自覚している課題に焦点を当てて、達成できる目標を設定し、解決に向けて取り組みます。
クライエントが課題を自覚しているからこそ、決められた期間で目標解決を目指すことができるということです。

よって、課題中心アプローチの説明文が出題される場合は、「短期間」や「今ここで」という用語が問題文に含まれる場合があります。


3 危機介入アプローチは、ソーシャルワーカーはジェネラリストでなければならないとする考え方に立つ。

→×

説明文はジェネラリストアプローチについてです。

危機介入アプローチとは、クライエントの心理的危機へ介入することによって、社会的機能の回復や心理的危機の回避を行うことを目的とするアプローチです。
つまり危機的状態のクライエントに早期に関わり、できるだけ早くその状態から脱出できるように支援して対処能力を高めようとするものです。



4 行動変容アプローチは、「状況のなかの人間」という視点を中心にすえたアプローチである。

→×
説明文は心理社会的アプローチについてですので、1と4が逆ですね。
行動変容アプローチとは、学習理論に基づいているもので、条件反応の消去・強化による特定の問題行動の変容を働きかけるものです。


5 心理社会的アプローチと機能的アプローチを折衷して構築されたのが、問題解決アプローチである。

→◯
問題解決アプローチと言えばパールマンですね。
パールマンは
診断派の考えを持ちながら機能派を取り入れ、心理社会的アプローチ(診断主義)と機能的アプローチ(機能主義)の良いところをとりました。
パールマンについては、4つのP(人、問題、場所、過程)や6つのP(4つのP +専門職、制度)、著書『ソーシャル・ケースワーク 問題解決の過程』も出題されています。


次回は問12を確認します。
明日はお休み予定です。