今回より神奈川県令和3年「社会福祉」の解説に入ります。
関連過去問や解答テクニックなども紹介しながら、令和3年後期に向けて進めます。

今回は問1です。
問題はこちら




問1 社会福祉の基本概念
 次の文は、社会福祉の基本概念に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 「日本国憲法」では、「都道府県は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び進歩に努めなければならない」とある。
B 岡村重夫は、「社会福祉的援助の原理」として、1社会性の原理、2全体性の原理、3 主体性の原理、4現実性の原理の4つの原理を示した。
C ナショナルミニマムとは、国民の平均的な生活を意味し、現代の社会福祉・社会保障政策では、貧困線を基準とした生活保障を基本理念として位置付けている。
D ノーマライゼーションとは、デンマークの知的障害者の運動からスタートしたものであるが、その後、身体障害者の運動や精神障害者の運動など、障害者全体の運動の中に広がり、近年では、高齢者福祉や子ども家庭福祉の領域でも用いられ、社会福祉の基本理念に拡大している。

(組み合わせ)
 ABCD
1〇〇×〇
2〇×〇×
3×〇〇×
4×〇×〇
5××〇〇

社会福祉の問1では、「日本国憲法」条文やノーマライゼーションの理念などが定番となってきましたね。
対策として、試験によく出る「日本国憲法」の条文を知ること、そしてノーマライゼーションはどのようなものかということを理解しておきたいです。
こちらの過去記事も参考にされてください。





1つずつみていきます。

A 「日本国憲法」では、「都道府県は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び進歩に努めなければならない」とある。

→×
「都道府県」ではなく「」ですね。
「日本国憲法」の中に、都道府県や市町村という言葉はありません。

これは「日本国憲法」第25条第2項です。
は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
第25条は国の社会的使命について示されており、「社会保障」が明文化されていることがポイントです。

神奈川県試験では、平成29年、平成30年、令和2年と繰り返し出題されており、全国では平成30年前期に出題されています。
穴埋めでの出題もありますので、確実に覚えます。




B 岡村重夫は、「社会福祉的援助の原理」として、1社会性の原理、2全体性の原理、3 主体性の原理、4現実性の原理の4つの原理を示した。

→〇
岡村重夫の社会福祉的援助の4つの原理とは、『社会性の原理』『全体性の原理』『主体性の原理』『現実性の原理』であり、これはそのまま覚えるしかありませんね。
さらに深く出題される可能性は低そうですので、それぞれの原理の意味については省略します。

関連過去問として平成20年の問題を紹介します。
「岡村重夫は、社会性の原理、全体性の原理、主体性の原理、現実性の原理を、社会福祉援助の4つの原理としてあげている。」
正しい記述ですね。


C ナショナルミニマムとは、国民の平均的な生活を意味し、現代の社会福祉・社会保障政策では、貧困線を基準とした生活保障を基本理念として位置付けている。

→×
「平均的」ではなく、最低限度(最低水準)です。
ナショナルミニマムとは、国家が国民に最低限の生活を保障すべきであるということです。

関連過去問として平成25年の問題を紹介します。
「生活保護の最低生活基準を意味するばかりでなく、国家が全ての国民の最低限の生活を保障すべきであるという理念を示すのが、ナショナルミニマムである。」
正しい記述ですね。


D ノーマライゼーションとは、デンマークの知的障害者の運動からスタートしたものであるが、その後、身体障害者の運動や精神障害者の運動など、障害者全体の運動の中に広がり、近年では、高齢者福祉や子ども家庭福祉の領域でも用いられ、社会福祉の基本理念に拡大している。

→〇
正しい記述ですね。
ノーマライゼーションについて「デンマークの知的障害者の運動」「障害者全体の運動の中に広がり」「社会福祉の基本理念に拡大」という正しいキーワードが含まれています。

ノーマライゼーションのはじまりはデンマークの知的障害者を収容していた施設で人権侵害が行われていたことを改善しようとしたことであり、その後はスウェーデンのベンクト・ニリエによって他の障害を持つ人へと理念が広がっていきました。
近年では世界各国において、福祉分野に共通する基本理念となっています。


次回は問2を確認します。