神奈川県令和3年「社会福祉」の解説をしています。

今回は問18 です。
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問18 共生社会の実現と障害者施策
次の文は、共生社会の実現と障害者施策に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 「障害者基本法」は、「障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ことを目的の一つとしている。
B 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の第1条(目的)には、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保」が明記されている。
C 「障害者の権利に関する条約」は、障害のある女性が複合的な差別を受けているという認識に立っている。
D 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」は、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的としている。

(組み合わせ)
  ABCD
1〇〇〇×
2〇〇××
3〇×〇〇
4×〇〇〇
5×××〇

法律の第1条では目的や趣旨を定めていることが多く、A、B、Dでは法律の第1条が出題されていました。
社会福祉では法律の第1条からの出題も多いので、社会福祉と関係のある法律の第1条がどのような内容になっているかをおさえておきたいですね。
こちらの記事も参考にされてください。


1つずつ見ていきます。 

A 「障害者基本法」は、「障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ことを目的の一つとしている。

→〇
「障害者基本法」第1条(目的)の内容です。
「この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現すため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」

また、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律障害者差別解消法)」の第1条(目的)でも同じような文言が含まれています。
「この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。」

「障害者差別解消法」は「障害者基本法」の基本的な理念にのっとり、「障害者基本法」第4条の「差別の禁止」の規定を具体化するものとして位置づけられているため、このように第1条の目的の中に共通の文言が含まれているというわけです。



B 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の第1条(目的)には、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保」が明記されている。

→×
これは「障害者差別解消法」ではなく、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」の第1条(目的)の内容です。

「この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。」

保育士試験の学習では見慣れない法律ですね。
この法律は、事業主の障害者雇用義務等を定めています。

1960年に身体障害者を対象として、もともと「身体障害者雇用促進法」という名称で制定されました。
その後の改正で1987年に「障害者の雇用の促進等に関する法律」と名称が変わり、知的障害者も対象となりました。
現在は第2条において、対象の障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。 」としています。


C 「障害者の権利に関する条約」は、障害のある女性が複合的な差別を受けているという認識に立っている。

→〇
障害者の権利に関する条約」には、「障害のある女子(女性)」という文言が含まれています。
第6条1「締約国は、障害のある女子が複合的な差別を受けていることを認識するものとし、この点に関し、障害のある女子が全ての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有することを確保するための措置をとる。」

■複合的な差別とは
複数の差別が蓄積した状態である「重層的差別」とは異なり、差別が互いに絡み合い、複雑に入り組んでいる状態をいいます。
障害があることへの差別、女性という性差による問題が複合的に関係しているということです。



D 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」は、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的としている。

→〇
「障害者総合支援法」第1条(目的)の内容ですね。
「この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」

この「障害者総合支援法」第1条(目的)のあとに、第1条の2として(基本理念)が規定されています。
これは第1条の目的を達成するための土台となる基本的な指針です。
第1条の2は令和2年後期に穴埋めで出題されていますので、第1条とともに覚えておきたいですね。


次回は問19を確認します。