(2022.7.28更新)
令和3年後期「教育原理」の解説をしています。
今回は問9です。




問9 教育振興基本計画
次の文は、「教育振興基本計画」(平成 30 年 閣議決定)で示された教育政策の目標を実現するために必要となる施策に関する記述である。( A )~( C )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

・ 地域の多様な関係者(学校、教育委員会、大学、企業、NPO、社会教育施設など)の協働による ( A )の実践を促進するとともに、学際的な取組などを通じて SDGs(持続可能な開発目標)の達成に資するような( A )の深化を図る。
・ 幼児期の教育から高等教育まで各学校段階を通じた体系的・系統的な( B )を推進する。初等中等教育段階においては、地域を担う人材育成に資するためにも、地元企業等と連携した起業体験、職場体験、インターンシップの普及促進を図るとともに、特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及に取り組む。
・ 女性が、結婚や出産等の様々な人生の節目も踏まえつつ、個性と能力を十分に発揮できるよう、 大学等における( C )や各種の認定教育プログラム等を活用した能力開発など、学びを通じた主体的なキャリア形成を推進し、復職や再就職、起業等を円滑に成し遂げられる社会を実現する。

【語群】
ア キャリア教育     イ リカレント教育  ウ ICT 教育  
エ ESD     オ アクティブ・ラーニング

(組み合わせ)
 A B C
1 ア ウ イ
2 イ ア オ
3 イ オ ア
4 エ ア イ
5 エ イ ウ

A ESD B キャリア教育 C リカレント教育 により、答えは4です。
この問題は、教育振興基本計画の内容面の出題というよりも教育用語の出題でしたね。

Aについて、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に資するようなというところから、それをヒントにESDが結びつきます。
ESD(持続可能な開発のための教育)とは「持続可能な開発」の理念を実現するための人材を育成する教育であり、つまりSDGsの達成に貢献するものということです。

ESDとSDGsの関係について、文部科学省では「ESDは、ターゲットの1つとして位置付けられているだけでなく、SDGsの17全ての目標の実現に寄与するものであることが第74回国連総会において確認されています。持続可能な社会の創り手を育成するESDは、持続可能な開発目標を達成するために不可欠である質の高い教育の実現に貢献するものとされています。」としています。

Bについて、幼児期の教育から高等教育まで各学校段階を通じた体系的・系統的なというところから、キャリア教育が結びつきます。
問題文に「幼児期の教育から高等教育まで」というわかりやすいキーワードがありましたので、これはキャリア教育とすぐに答えたいです。

平成27年の教育原理では「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」からの出題がありました。
この答申でおさえておきたいキーワードとして「キャリア」と「キャリア教育」があり、
それぞれ以下のように説明されています。
▪️キャリア
人が生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね

▪️キャリア教育
一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育
幼児期の教育から高等教育まで体系的に進める

Cについて、下3行の文章全体から「生涯を通して学び続けること」が読み取れますので、リカレント教育が結びつきます。
リカレント教育とは、学校教育からいったん離れたあともそれぞれのタイミングで学び直すという社会人の学びのことです。
学びによって仕事で求められる能力を磨き続けるという考え方です。


さて、今回出題された「教育振興基本計画」とは、「教育基本法」第17条第1項「政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。」に基づいて、政府が策定する計画をいいます。

第1期の基本計画の対象期間は平成20年度〜平成24年度
第2期の基本計画の対象期間は平成25年度〜平成29年度
第3期の基本計画の対象期間は平成30(2018)年度~2022年度

現在は第3期教育振興基本計画の対象期間ですから、今回の試験では第3期の内容から出題されており、教育振興基本計画(本文)の57、58、63ページから出題されました。

・地域の多様な関係者 (学校、教育委員会、大学、企業、NPO、社会教育施設など)の協働による ESDの実践を促進するとともに、学際的な取組などを通じてSDGs (持続可能な開発目標)の達成に資するような ESD の深化を図る。(57ページ)

・幼児期の教育から高等教育まで各学校段階を通じた体系的・系統的なキャリア教育を推進する。初等中等教育段階においては、地域を担う人材育成に資するためにも、地元企業等と連携した起業体験、職場体験、インターンシップの普及促進を図るとともに、特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及に取り組む。(58ページ)

・女性が、結婚や出産等の様々な人生の節目も踏まえつつ、個性と能力を十分に発揮できるよう、大学等におけるリカレント教育や各種の認定教育プログラム等を活用した能力開発など、学びを通じた主体的なキャリア形成を推進し、復職や再就職、起業等を円滑に成し遂げられる社会を実現する。 (68ページ)

今後は具体的な内容面が出題される可能性がありますので、教育振興基本計画(本文)やポイントをおさえた概要、そして第3期教育振興基本計画について(答申)は学習しておきたいです。

次回は問10を確認します。