令和3年後期「社会福祉」の解説をしています。
今回は問15です。



問15 バイステックの7原則
次の文のうち、バイステックの7原則に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 個別化とは、一人一人の利用者を個人としてとらえることをいう。
B 統制された情緒的関与とは、利用者が表出した感情に対して、支援者自身が自らの感情を自覚し理解することをいう。
C 非審判的態度とは、利用者を一方的に非難しないことをいう。
D 自己決定とは、利用者の自己決定を促し尊重することをいう。

(組み合わせ)
   A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 ○ × ○ ○
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 × × ○ ○

バイステックの7原則は「社会福祉」の出題の定番で、原則のそれぞれの意味が問われたり、7原則に基づいた事例問題だったりします。
この問15は令和3年前期試験の問13とほとんど同じ問題で、「非審判的態度」が「統制された情緒的関与」に代わったものでした。

A~Dはすべて〇で、答えは1です。
(令和3年後期「社会福祉」はすべて〇という答えが4問もありましたね。)

以下のバイステックの7原則をもとに問題を1つずつみていきます。
バイステックの7原則
(対人援助における、援助者に求められる7つの行動規範)
1.個別化(利用者の生活問題の個別性を理解する)
2.意図的な感情表出(利用者の自由な感情表出を促すよう意図的にかかわる)
3.統制された情緒的関与(援助者自身の感情を自覚的にコントロールして利用者に反応する)
4.受容(利用者の「あるがまま」を受け入れる)
5.非審判的態度(援助者の価値観によって利用者を一方的に非難しない)
6.自己決定(利用者の自己決定を尊重する)
7.秘密保持(利用者に関する情報を不必要に漏らさない)



A 個別化とは、一人一人の利用者を個人としてとらえることをいう。

令和3年前期(問13)Bとほぼ同じ文章でした。
クライエントの抱える問題は人それぞれ違うもので、似ているものであっても全く同じ問題はないという考えかたです。
クライエントを個人としてとらえて、クライエントの状況に応じて個別的に対応します。



B 統制された情緒的関与とは、利用者が表出した感情に対して、支援者自身が自らの感情を自覚し理解することをいう。

「統制された情緒的関与」の「情緒的」とは支援者の情緒を指します。
つまり、クライエントに感情移入せず、冷静になって、支援者自身の感情を統制(コントロール)するということです。
支援者はクライエントが表出した感情を共感的に受け止め、クライエントの感情に巻き込まれないように自分の感情をコントロールして、適切な反応をすることが大切です。

Bの文章には、支援者自身に対して「統制」「自制」「制御」「コントロール」「利用者の感情にのみこまれない(まきこまれない)ように」など自分を律するような表現が含まれていませんね。
「自覚」や「理解」には「統制」の意味までは含まないはずですから、これが正しい記述として出題されるというのはどうかと思います。

今回の試験は、問13のBと問15のBの記述において、本来あるべきキーワードを省略しているという印象を受けました。
受験生が勉強した内容をもとに自分の力を発揮できるような公平・公正な問題であってほしいと望みます。



C 非審判的態度とは、利用者を一方的に非難しないことをいう。

令和3年前期(問13)Cとほぼ同じ文章でした。
援助者の価値観のもとで、クライエントを非難してはいけません。


D 自己決定とは、利用者の自己決定を促し尊重することをいう。

クライエント自身が自分の意思で判断し、自己決定できるように、支援者は情報や助言でサポートして問題の解決を促していきます。


最後に関連問題を紹介します。
社会福祉士国家試験(第34回)問題116
バイステックの援助関係の原則に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 意図的な感情表出の原則とは、クライエントのありのままの感情を大切にし、その表出を促すことである。
2 統制された情緒的関与の原則とは、クライエント自身が自らの情緒的混乱をコントロールできるようにすることである。
3 個別化の原則とは、他のクライエントと比較しながら、クライエントの置かれている状況を理解することである。
4 受容の原則とは、ソーシャルワーカーがクライエントに受け入れてもらえるように、誠実に働き掛けることである。
5 非審判的態度の原則とは、判断能力が不十分なクライエントを非難することなく、ソーシャルワーカーがクライエントの代わりに意思決定を行うことである。

バイステックの7原則は支援者の行動規範となりますが、「意図的な感情表出の原則」については支援者の感情表出ではなく、クライエントの感情表出であることに注意します。

1 〇クライエントの感情の表出です。
2 ×クライエントではなく、支援者が自らの感情をコントロールすることです。
3 ×他のクライエントと比較するものではなく、その人個人として捉えて個別的に対応します。
4 ×支援者の価値観と一致しない場合であっても、支援者はクライエントを受け入れることが大切です。
5 ×支援者が自分の考えを一方的に押し付けたり非難したりしないことです。よってクライエントの代わりに意思決定を行うことはありません。


次回は問16の解説です。