令和4年前期「社会福祉」の解説を行います。
今回は問8です。

問題はこちら




問8 婦人相談所
次のうち、婦人相談所に関する記述として、不適切な記述を一つ選びなさい。

1 「売春防止法」に基づいて設置されている。
2 都道府県と市町村に設置が義務付けられている。
3 配偶者暴力相談支援センターとしても機能する場合がある。
4 婦人相談員が配置される。
5 婦人相談所は、母子の保護および生活支援にあたり、母子生活支援施設と連携することがある。

問7の社会福祉事業の問題で婦人保護施設が出てきましたね。
一方、問8は婦人相談所の問題です。
この「婦人相談所」と「婦人保護施設」は混乱しやすいので違いをおさえて覚えます。

■婦人相談所
根拠法「売春防止法
第34条第1項「
都道府県は、婦人相談所を設置しなければならない。」→各都道府県に必ず設置されます。
心身を傷つけられる、人権を侵害されるなどの女性の問題に対して、相談、保護、自立支援などの専門的支援を行う機関です。
また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」にもとづく、配偶者暴力相談支援センターの機能を持つ施設としても位置づけられています。


■婦人保護施設
根拠法「売春防止法
第36条「都道府県は、要保護女子を収容保護するための施設(以下「婦人保護施設」という。)を設置することができる。」→都道府県に設置の義務はありません。
また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」にもとづく、被害女性の保護を行う施設としても位置づけられています。
「社会福祉法」においては、婦人保護施設を経営する事業を第一種社会福祉事業と定めています。

このように婦人相談所は、都道府県に設置が義務付けられていますが、市町村に設置は義務付けられていません。
よって答えは2です。
2以外の選択肢にわからない内容があっても、設置義務の規定を学んでいれば正しい答えを選ぶことができますね。

一つずつ見ていきます。


1 「売春防止法」に基づいて設置されている。


→〇
正しい記述です。
「売春防止法」第34条ですね。


2 都道府県と市町村に設置が義務付けられている。

→×
「売春防止法」第34条第1項により都道府県は設置が義務付けられており、また第34条第2項により指定都市は設置することができるとしています。


3 配偶者暴力相談支援センターとしても機能する場合がある。

→〇
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」第3条第1項により「都道府県は、当該都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするものとする。」と定めています。


4 婦人相談員が配置される。 

→〇
婦人相談員 相談・支援指針「はじめに」では、「婦人相談員は、婦人相談所・福祉事務所等において多種多様で複合的な相談に応じ、地域の最前線で女性等への支援を担う相談員である。」としています。
婦人相談員は「売春防止法」第35条に定められており「要保護女子につき、その発見に努め、相談に応じ、必要な指導を行い、及びこれらに付随する業務を行う」としています。 
婦人相談所に婦人相談員を置くという直接的な規定は法律にはありませんが、第35条により、婦人相談員は都道府県に義務配置(委託)、市に任意配置(委託)としています。


5 婦人相談所は、母子の保護および生活支援にあたり、母子生活支援施設と連携することがある。

→〇
5についても「売春防止法」にはこのような規定はありませんが、婦人相談所と母子生活支援施設は連携することがありますから正しい記述です。
婦人相談員 相談・支援指針150ページによると、「婦人相談所の一時保護の委託先として103 か所(平成25 年度)の母子生活支援施設が活用されており、DV被害者のシェルターとしても大きな役割を担っている。」と述べており、婦人相談所と母子生活支援施設が連携して、母子を保護できるように調整を図っています。

また、この問題は平成27年「社会福祉」問6とほぼ同じ内容です。
次の文は、婦人相談所に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A  「母子及び父子並びに寡婦福祉法」に基づいて設置されている。
B  都道府県と市に設置が義務付けられている。
C  配偶者暴力相談センターとしても機能する。
D  婦人相談員が配置される。
E  婦人相談所は、母子の保護及び生活支援にあたり、母子生活支援施設と連携することがある。

(組み合わせ略)

誤りはAとBですね。

次回は問9を解説します。