令和5年神奈川県試験「教育原理」を解説しています。
今回は問5です。(問3、問4は問題非公表により飛ばしています)
試験問題
 



問5 人物問題
次の【I群】の記述と【II群】の人物を結び付けた場合の正しい組み合わせを一つ 選びなさい。
【I群】
A 犬にメトロノームの音を聞かせてすぐに餌を与えることを繰り返すと、メトロノームが鳴っただけで、犬は唾液を出すことから、古典的条件づけを見いだした。
B 「子どもの家」での実践を通して、人間のあらゆる能力の発達の基礎として、幼児期の感覚運動能力の育成が特に重要であるとの観点から教具を考案した。
C 知能の構造の変化は、感覚運動的段階、前操作的段階、具体的操作の段階、形式的操作の段階という4つの段階にわたって複雑化していくことを見いだした。

【II群】
ア パヴロフ(Pavlov, I.P.)
イ ピアジェ(Piaget, J.)
ウ モンテッソーリ(Montessori, M.)
エ ルソー(Rousseau, J.-J.)

(組み合わせ)
   ABC
1アイウ
2アウイ
3イウエ
4ウアエ
5エイア
人物名と記述を結びつける問題は「教育原理」で1問程度出題されますね。
人物対策として注意すべき点としては「教育原理」以外の人物も出題されることです。
たとえば、ピアジェ、エリクソン、ヴィゴツキーなども選択肢によく並びますが、これらは主に「保育の心理学」に出題される人物ですよね。
他にも、令和5年前期の「教育原理」では、主に「保育原理」の範囲であるオーエンが出題されています。
保育士試験では科目ごとに学習していく方法が一般的だと思いますが、人物問題はその科目の範囲外からも出題があります。この人物はこの科目に出る、という明確な区切りがないことを頭に入れておきたいですね。

では1つずつみていきます。

A 犬にメトロノームの音を聞かせてすぐに餌を与えることを繰り返すと、メトロノームが鳴っただけで、犬は唾液を出すことから、古典的条件づけを見いだした。

ア パヴロフと結びつきます。
パヴロフは「保育の心理学」の範囲の人物であり、「教育原理」での登場は初めてではないでしょうか。
パヴロフは、犬に餌を与える前にベルを鳴らすようにしていると、次第に餌がなくてもベルの音だけで犬は唾液を出すという条件反射の学習理論を発表した人物です。
つまり無関係な刺激(ここではベルの音)と行動(餌を与える)を関連づけると、刺激によって行動が現れるというものです。
これを古典的条件づけといいますが、レスポンデント条件づけという呼び方もあります。
試験ではどちらの名称で出てきても理解できるように、両方を覚えておきたいですね。
問題文にメトロノームとあり、「ベルじゃなかったかな?」と不思議に思って調べたところ、ベル説とメトロノーム説があるとわかりました。

パヴロフの古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)と関連して、スキナーオペラント条件づけがあります。
古典的条件づけもオペラント条件づけも学習理論ではありますが、原理が異なります。
こちらは結果としての報酬や罰を得ることで、自発的に行動をとるようになるものです。
スキナーはネズミを使った実験によって、ネズミが結果から再び反応し、自発的に行動を起こすことを発見しました。
オペラント条件づけは道具的条件づけという呼び方もありますので、こちらも覚えておきたいです。

オペラント条件づけ、古典的条件づけに関した過去の出題を紹介します。
■平成30年前期 保育の心理学(問2)
・レモンを思い浮かべただけで、唾液が出てきた。- レスポンデント条件づけ(パブロフ)
・ラジオ体操に参加するとスタンプがもらえるので、休まずに参加した。-オペラント条件づけ(スキナー)

■令和5年前期 保育の心理学(問7)
・生得的な反射を基礎にする刺激と反応の新たな連合の習得である。- 古典的条件づけ(パブロフ)


B 「子どもの家」での実践を通して、人間のあらゆる能力の発達の基礎として、幼児期の感覚運動能力の育成が特に重要であるとの観点から教具を考案した。

ウ モンテッソーリと結びつきます。
「子どもの家」というキーワードは「教育原理」で出されたことはないと思いますが、令和4年前期や平成29年前期の「保育原理」に出題されています。
子どもの家では、知的障害分野での実践を健常児に適用する実践を行い、子どもは興味のある対象に自発的に没頭するという特性に注目しました。
子どもの自由な自己活動を尊重し援助することを重視した教育法を実践した人物です。

これまでの「教育原理」に出題されたモンテッソーリの主な記述です。
・イタリア初の女性医学博士
・子どもは自ら発達する力を持っている
・幼児期は精神的発達の基礎として「感覚の訓練」が特に重要であるとして教具を開発
・「障害児教育」を行うために考案した教具(着衣枠、重量板、触覚板、円柱さし、ピンクタワー、算数棒、音感ベルなど)

また、著書「モンテッソーリ・メソッド」の一部も出題されています。
ポイントは「敏感期」が含まれていることです。
「敏感期」とは、幼児期において感受性が敏感になる時期を意味します。

『モンテッソーリ・メソッド」からの出題
敏感期というのは、発育のうちにすなわち生き物の幼児期にあらわれる特別敏感な状態のことであります。それは一時的のもので、その生物に一定の能力を獲得させるのに役だつだけです。それが済めば、その敏感な状態は消えます。それでどの特性も、一つの衝動に基づく限られた短期間に発達します。成長とは受け継いだ生まれついた無計画な発育のことではなく、周期的にあらわれる本能によって細心に指導される内面的な努力の結果であります。そういう本能が、発育のある段階に、その生き物に精力の消費を強制します。その精力の使い方は、おとなになった人のものとははっきり区別されます。

また、これまでの過去問を分析すると、モンテッソーリが選択肢にある場合は問題の答えとなりやすいこともわかりました。
モンテッソーリが登場した時は、記述に「子どもの家」「医師」「イタリア」「障害児」「感覚」「教具」などのキーワードがないか確認します。


C 知能の構造の変化は、感覚運動的段階、前操作的段階、具体的操作の段階、形式的操作の段階という4つの段階にわたって複雑化していくことを見いだした。

イ ピアジェ
に結びつきます。
ピアジェは認知の発達を、感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期の4つの段階に分け、子どもたちは段階的に知識を構築していくと考えた人物です。
「教育原理」というよりも「保育の心理学」の問題ですから詳しい説明は省略します。
10問しかない「教育原理」にピアジェを出してしまうのはもったいないなと思ってしまいました。。。


次回は問6の解説です。