令和5年神奈川県試験「社会的養護」を解説しています。
今回は問8です。
試験問題
 



問8 児童養護施設運営指針
次の文は、「児童養護施設運営指針」(平成24年3月 厚生労働省)の「目的」の一部である。( A )~( D )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

この「運営指針」は、児童養護施設における養育・支援の内容と運営に関する指針を定めるものである。社会的養護を担う児童養護施設における運営の理念や方法、手順などを社会に開示し、質の確保と向上に資するとともに、また、( A )責任を果たすことにもつながるものである。
この指針は、そこで暮らし、そこから巣立っていく子どもたちにとって、よりよく生きること(( B ))を保障するものでなければならない。また社会的養護には、社会や国民の理解と支援が不可欠であるため、児童養護施設を社会に開かれたものとし、地域や社会との連携を深めていく努力が必要である。さらに、そこで暮らす子どもたちに一人一人の( C )を保障する取組を創出していくとともに、児童養護施設が持っている支援機能を( D )へ還元していく展開が求められる。

(組み合わせ)
     A   B    C  D
1 説明  welfare   自立 地域
2 説明  welfare   発達 社会
3 説明  well-being 発達 地域
4 社会的 well-being 自立 地域
5 社会的 well-being 自立 社会

「社会的養護」の科目では、運営指針・養育指針は定番の出題となっています。
少し前は「里親及びファミリーホーム養育指針」が続けて出題されていましたが、また「児童養護施設運営指針」の出題に戻ってきているように思います。
7種類の指針があり、出題されやすい部分などをこちらにまとめています。


今回の出題は、1ページ目の「第I部 総論」1 目的 からの出題でした。
社会的養護や児童養護施設に対する理解が求められる問題でした。

この「運営指針」は、児童養護施設における養育・支援の内容と運営に関する指針を定めるものである。社会的養護を担う児童養護施設における運営の理念や方法、手順などを社会に開示し、質の確保と向上に資するとともに、また、(A 説明
責任を果たすことにもつながるものである。
この指針は、そこで暮らし、そこから巣立っていく子どもたちにとって、よりよく生きること((B well-being))を保障するものでなければならない。また社会的養護には、社会や国民の理解と支援が不可欠であるため、児童養護施設を社会に開かれたものとし、地域や社会との連携を深めていく努力が必要である。さらに、そ こで暮らす子どもたちに一人一人の(C 発達)を保障する取組を創出していくとともに、 児童養護施設が持っている支援機能を(D 地域)へ還元していく展開が求められる。

【考え方】

社会的養護を担う児童養護施設における運営の理念や方法、手順などを社会に開示し、質の確保と向上に資するとともに、また、( A )責任を果たすことにもつながるものである。
児童養護施設の養育・支援の内容や養育機能、目指すべき方向が示された運営指針が設けられていることにより、関係者はそこから考え方を学んだり、質を確保したりすることができます。
そしてこれらを社会に開示することで説明責任を果たすことにつながるとも述べられています。
どのような理由で運営指針が設けられ、それを社会に開示しているかを考えると、「社会的責任を果たす」ではなく「説明責任を果たす」ことが適切とわかりますね。
 
よりよく生きること(( B well-bing))
ここはウェルビーイングですね。
ウェルビーイングとは「良好な状態にあること」を意味するもので、個人の権利や自己実現が保障され、その個人が身体的・精神的・社会的により良い状態にあることを意味するものとして理解されています。 
一方、ウェルフェアはウェルビーイングの前に用いられていた言葉で、こちらも福祉や幸福などの意味があります。
両者の違いとして、ウェルフェアは福祉の対象を社会的弱者(保護される者)のみとしていたことです。
たとえば児童福祉においては、要保護児童を対象とする「ウェルフェア」だったのが、現在は全ての児童を対象とする「ウェルビーイング」へと変化しています。

そこで暮らす子どもたちに一人一人の( C 発達)を保障する取組を創出していくとともに、児童養護施設が持っている支援機能を( D 地域 )へ還元していく展開が求められる。
子どもはその年齢に応じた発達の課題を持っています。
社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子どもたちの健全な心身の発達の保障を目指して行われています。
社会的養護とは子どもの発達や養育を保障していく包括的な取り組みであることをおさえます。
そして、児童養護施設は社会に開かれた子育ての専門機関であることを目指し、施設が持っている養育の機能を地域に還元していく展開が求められています。

次回は問9を確認します。